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92 ハツヒノデの怪
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あれ以来進むのが怖い。
踏み出す度に何かが足に絡まりそうで。
少し黒が薄くなってきた空の下、それでも私達は休むこと無く歩いていた。
あれから少し歩くとアラーム音は止み、2人とも胸を撫で下ろした。
突然、川の方からガシャーンと何かが割るような音がした。2人はビクッと震え、立ち止まる。岩が落ちた音かそれとも。
「大丈夫、進もう」
「はい…」
佐々木さんもまだ私の手にしがみついている。初日の出を見るだけなのにどうしてこうお化け屋敷みたいになるかな?
「線香の臭い?」
土手の下独特な臭いが漂う。
下の方を見ると微かな火が見えた。お墓?なんで今線香が燃えて…。
「不気味です…」
そう言って佐々木さんは私の手を引っ張る。ここにいたくないということだろう。
真新しい線香が木の板の前で煙を昇らせ、空中に白い影を作る。変な事だらけだ。
これ本当の怪奇現象なの?
遠くから鐘の音も聞こえる。これは聞こえていても不思議ではないが、少し近すぎやしないか?
本当にここ大丈夫なのか?
帰ってもいい?
「委員長さん、行きましょう」
また袖を引っ張るので、私も付いていく。
「ぴいぃっ!」
急に佐々木さんが声を上げる。
「どしたの?」
前を歩いていた私は後方に引っ張られ、少しバランスを崩しかけた。
「あれ…線香」
そう言って指さす先には、束になった線香が道の真ん中に置かれていた。火は付いたばかりの様だった。
「委員長さん、私もう…」
「なんか変じゃないですか?変すぎなんですよここ」
「ええ分かってる」
私もビビってる。今までは気のせいや不思議で済んでいたものばかりだが、こればかりは確実に不可解。
懐中電灯無くても見える程明るくなった東の空が私をまだパニックにさせないが、それでも目の前の現象から目を背けられない。
「でも…」
そしてまたゴーン、と鐘の音が鳴り、2人で「ひっ」と声を出して近寄る。かなり近い距離から聞こえるこの音は、一体何が出しているもの?
もう少しで夜が開ける、そしたら全力で走って帰ろう…。
「もう少し待とう」
少し歩いてから位置を決め、2人で肩を寄せて時を待つ。
途中、銅板が坂を転げ落ちる様な音と水面に何か落ちる音が聞こえたが、その時は既に空は薄青く、東はオレンジ色であまり怖くはなかった。
「…サーモンみたいな色ね」
雲から上が一色に染まり、境目は燃えているように赤い。その赤は火が燃え移る様に雲の輪郭に沿って広がっていき、雲の内側には影を落とす。
「綺麗ですね、この瞬間も」
まだ陽は昇らないが、夕暮れとは違う静けさが神秘性を出す。明るくなれば私の脳も冷静になってきた。
「ええ」
燃える輪郭から一直線に眩しい光が放たれ目を細める。丸い輪郭が見えると周りの空気は急に暖かくなり、今までの暗闇も照らし出される。瞬きもせず見たこの光景を忘れることは無いだろう。
横を見ると佐々木さんと目が合う。
「帰ろっか」
そう言って立ち上がる。
「はい」
佐々木さんも微笑んで立ち上がり、私と向き合った。
「そうだ、お願いしないと」
そう言って佐々木さんは陽に手を合わせ、目を閉じた。
私も手を合わせる。
少し悩んで、口の中で願いを言った。
…この現象を仕組んだ犯人に天罰が下りますように。
踏み出す度に何かが足に絡まりそうで。
少し黒が薄くなってきた空の下、それでも私達は休むこと無く歩いていた。
あれから少し歩くとアラーム音は止み、2人とも胸を撫で下ろした。
突然、川の方からガシャーンと何かが割るような音がした。2人はビクッと震え、立ち止まる。岩が落ちた音かそれとも。
「大丈夫、進もう」
「はい…」
佐々木さんもまだ私の手にしがみついている。初日の出を見るだけなのにどうしてこうお化け屋敷みたいになるかな?
「線香の臭い?」
土手の下独特な臭いが漂う。
下の方を見ると微かな火が見えた。お墓?なんで今線香が燃えて…。
「不気味です…」
そう言って佐々木さんは私の手を引っ張る。ここにいたくないということだろう。
真新しい線香が木の板の前で煙を昇らせ、空中に白い影を作る。変な事だらけだ。
これ本当の怪奇現象なの?
遠くから鐘の音も聞こえる。これは聞こえていても不思議ではないが、少し近すぎやしないか?
本当にここ大丈夫なのか?
帰ってもいい?
「委員長さん、行きましょう」
また袖を引っ張るので、私も付いていく。
「ぴいぃっ!」
急に佐々木さんが声を上げる。
「どしたの?」
前を歩いていた私は後方に引っ張られ、少しバランスを崩しかけた。
「あれ…線香」
そう言って指さす先には、束になった線香が道の真ん中に置かれていた。火は付いたばかりの様だった。
「委員長さん、私もう…」
「なんか変じゃないですか?変すぎなんですよここ」
「ええ分かってる」
私もビビってる。今までは気のせいや不思議で済んでいたものばかりだが、こればかりは確実に不可解。
懐中電灯無くても見える程明るくなった東の空が私をまだパニックにさせないが、それでも目の前の現象から目を背けられない。
「でも…」
そしてまたゴーン、と鐘の音が鳴り、2人で「ひっ」と声を出して近寄る。かなり近い距離から聞こえるこの音は、一体何が出しているもの?
もう少しで夜が開ける、そしたら全力で走って帰ろう…。
「もう少し待とう」
少し歩いてから位置を決め、2人で肩を寄せて時を待つ。
途中、銅板が坂を転げ落ちる様な音と水面に何か落ちる音が聞こえたが、その時は既に空は薄青く、東はオレンジ色であまり怖くはなかった。
「…サーモンみたいな色ね」
雲から上が一色に染まり、境目は燃えているように赤い。その赤は火が燃え移る様に雲の輪郭に沿って広がっていき、雲の内側には影を落とす。
「綺麗ですね、この瞬間も」
まだ陽は昇らないが、夕暮れとは違う静けさが神秘性を出す。明るくなれば私の脳も冷静になってきた。
「ええ」
燃える輪郭から一直線に眩しい光が放たれ目を細める。丸い輪郭が見えると周りの空気は急に暖かくなり、今までの暗闇も照らし出される。瞬きもせず見たこの光景を忘れることは無いだろう。
横を見ると佐々木さんと目が合う。
「帰ろっか」
そう言って立ち上がる。
「はい」
佐々木さんも微笑んで立ち上がり、私と向き合った。
「そうだ、お願いしないと」
そう言って佐々木さんは陽に手を合わせ、目を閉じた。
私も手を合わせる。
少し悩んで、口の中で願いを言った。
…この現象を仕組んだ犯人に天罰が下りますように。
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