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4、望むのは、花嫁ではなく同志

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思い出すのは、14歳の頃。
視察の忙しさで疲労困憊の弟の代わり出席した、アストリア前王妃の生誕祭。
そのお茶会で出されたのが、このローズヒップティーだった。

憧れのお茶に興奮を覚えつつ、飲もうとしたその時。
当時のカイゼンの婚約者が、システィーナの頭の上からローズヒップティーをぶっかけるという暴挙に出た。
システィーナがカイゼンを誘惑した、という見当違いな言いがかりで。

まだ成人前の14歳の姫が、どうやって23歳の王太子を誘惑できるのだ。
だが、システィーナは泣きもせず、相手の令嬢とともにすぐに離席し、その1時間後にはふたり仲良く戻ってきた。
会場中が驚きに包まれたのは言うまでもない。



「あの生誕祭の後、あっさりと婚約破棄を承諾してもらえた時は本当に驚いた。」

「陛下、あれは本当に骨が折れる説得でしたのよ。なのに、約束したローズヒップティーがいただけないとわかって、どれだけイラ…悲しかったことか。」

「待て、いまイラついていたと聞こえた気がしたが?」

「...気のせいでしょう。」

「はぁ...結婚の申込書に、「約束を果たすため婚姻したい」と記して送っただろう。」

「まさか結婚を盾にされるとは思いませんでした。」

そう、じつは令嬢は見当違いではなかった。
すべては、この2人によって仕組まれたことであった。

「その、ところで、あの時のご令嬢は、今どうしていらっしゃいますか?」

「我が同志殿の説得のおかげで、幸せに結婚生活を送っている。」

システィーナは、少し胸を撫で下ろす。
そして、芳醇な薔薇の香りを胸いっぱいに吸い込み、今日一番の美しい微笑みをつくった。

「さすが、アストリアの王族のために作られる、至宝のローズヒップティーだわ。」
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