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第一章 龍国と地上世界
第25話 至福の時
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ラソンに与えられた時は200年。
その間にフィドキア交配せよとの厳命だ。
神に認めてもらった嬉しさと、愛しい者との交配する喜びに、期限に焦る思いが複雑に絡み合うラソンの心境だ。
だがいざ行動に出ようとすると気持ちが高ぶり緊張してしまうのだ。
それゆえ、なかなかフィドキアに近づけない我が子を見て苛立つオルキスが後押しする。
「早く行ってきなさい!」
「で、でもぅ・・・」
「フィドキアには伝わっているはずよ」
「だ、だってぇ・・・」
ここまでお膳立てしたのに、いざとなって動かないラソンにオルキスが裏から手を回したのだった。
龍達の生活空間にも僕は出入りしている。
当初は眷族だけだったのだが、それぞれの役回りがあるので専任の僕を置く事になったのだ。僕にとって神々の身の回りのお手伝いを行なう”お世話係り”に選ばれる事が、どんな仕事よりも誇らしく一番人気の職種だ。
翌日。
ラソンのもとに訪問する者が居た。
「ラソン様。フィドキア様が御見えになりました」
「ええぇっ!!」
「御通ししても宜しいでしょうか?」
突然の来訪に仰天するラソン。
気持ちの整理を行う余裕も無く焦って頷き返事をするのだった。
「い、いらっしゃい。私の部屋に来るなんて珍しいわねぇ」
「ふむ。話しは聞いている。交配するぞ」
思いっきりの良い飾り気の無い言葉だが、白い肌が真っ赤になって恥ずかしがるラソンだ。
「なっ、何をいきなり言い出すのぉ!!」
「お前が我が神から許された時は200年だ。父上から聞く限りでは交配の期間としては短いはずだ。おしゃべりをしている間に時が経ってしまうぞ」
フィドキアの父は創造主たるロサだ。
そのロサが交配して同族と成した時間は500年ほどだと聞いているので、200年はかなり短い期間なのだ。
「で、でもぉ・・・わたし、初めてだしぃぃ」
「ふむ。我も初めての交配だ」
誕生してから長い年月の間、フィドキアは交配していない。
ロサの交配さえ神々の指示があったと認識しているので、神の意向を忖度していたフィドキアだ。
だがその事を聞いたラソンは違った。
(えっ、始めて? 私とぉ? ウソォ本当にぃ・・・)
赤かった顔が更に赤くなり、動悸の激しさが増す感じがしたラソンだ。
「では始めるぞ。ここで良いのだな?」
「ちょっ、ちょっと待ってよぉぉぉ」
全力で抵抗するラソン。
「準備するから待ってて。お願い!」
「ふむ。では準備しろ」
僕と一緒に寝床の整理と身支度をしていた所に、フィドキアが部屋に入って来た。
「支度している間に父上から聞いた事を教えよう」
ラソンが”準備出来るまで待ってて”と言う前に制された。
「我はこの200年の間、お前と夜を共にするだろう。交配が成功するか失敗するかは解らないが、その時が来るまでの間不便だろうが頼む」
「はいっ」
無表情で淡々と話すフィドキアら対して、嬉しそうに返事をするラソンだった。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
翌日。
いつもと変わらない朝。
朝日を浴びる街ちなみの静粛さに身を曝け出していると、斜め後ろから寄り添う者が居た。
その者の肩に頭を傾けて手を取り合う。
ラソンにとって至福の時だった。
これから200年も毎日この朝を迎える事が出来る喜び。
このあと200年後には別々の朝を迎える事になるまでは、2人だけの朝を共有する喜び。
限られた時の全てを至福の時間とすべく、不快な記憶を残さない様に僕に厳命するラソンだ。
ラソンの変化は誰が見ても解かるほどの表情だった。
心が満たされているのか、その口元には常に微笑みが見て取れる。
誰に対しても優しく接する姿は僕達の人気を博した。
勿論、インスティントに対しても同様だ。
恋の競争相手を置き去りにして、心身ともに満たされているのだから。
更に、その事はインスティントには知らされていない。
成龍となって間もないインスティントにとっては交配する事も許可されないからだ。
「あらインス。今日もフィドキアと稽古?」
「ええ。昨日も今日も明日もずうっとよ」
ニコヤカに微笑むラソン。
以前ならば眉間にシワを寄せる場面だが、そのような悪態は必要無いのだ。
「そう、頑張ってね。貴女も早く立派な龍人になれると良いわね」
「えっ!? ええ・・・」
嫌味に対しての返事が思っても居なかった事に驚くが、前向きなインスティントは鵜呑みしてしまう。
(早くみんなに認めてもらってフィドキアと・・・フフフッ)
インスティントの自己中心的な考えの元、稽古場へと向かい走り去る後姿を見て口先が更に歪むラソンだった。
Epílogo
まずは先手を打つ事に成功したラソン。
果たして思惑通りとなるのか。
その間にフィドキア交配せよとの厳命だ。
神に認めてもらった嬉しさと、愛しい者との交配する喜びに、期限に焦る思いが複雑に絡み合うラソンの心境だ。
だがいざ行動に出ようとすると気持ちが高ぶり緊張してしまうのだ。
それゆえ、なかなかフィドキアに近づけない我が子を見て苛立つオルキスが後押しする。
「早く行ってきなさい!」
「で、でもぅ・・・」
「フィドキアには伝わっているはずよ」
「だ、だってぇ・・・」
ここまでお膳立てしたのに、いざとなって動かないラソンにオルキスが裏から手を回したのだった。
龍達の生活空間にも僕は出入りしている。
当初は眷族だけだったのだが、それぞれの役回りがあるので専任の僕を置く事になったのだ。僕にとって神々の身の回りのお手伝いを行なう”お世話係り”に選ばれる事が、どんな仕事よりも誇らしく一番人気の職種だ。
翌日。
ラソンのもとに訪問する者が居た。
「ラソン様。フィドキア様が御見えになりました」
「ええぇっ!!」
「御通ししても宜しいでしょうか?」
突然の来訪に仰天するラソン。
気持ちの整理を行う余裕も無く焦って頷き返事をするのだった。
「い、いらっしゃい。私の部屋に来るなんて珍しいわねぇ」
「ふむ。話しは聞いている。交配するぞ」
思いっきりの良い飾り気の無い言葉だが、白い肌が真っ赤になって恥ずかしがるラソンだ。
「なっ、何をいきなり言い出すのぉ!!」
「お前が我が神から許された時は200年だ。父上から聞く限りでは交配の期間としては短いはずだ。おしゃべりをしている間に時が経ってしまうぞ」
フィドキアの父は創造主たるロサだ。
そのロサが交配して同族と成した時間は500年ほどだと聞いているので、200年はかなり短い期間なのだ。
「で、でもぉ・・・わたし、初めてだしぃぃ」
「ふむ。我も初めての交配だ」
誕生してから長い年月の間、フィドキアは交配していない。
ロサの交配さえ神々の指示があったと認識しているので、神の意向を忖度していたフィドキアだ。
だがその事を聞いたラソンは違った。
(えっ、始めて? 私とぉ? ウソォ本当にぃ・・・)
赤かった顔が更に赤くなり、動悸の激しさが増す感じがしたラソンだ。
「では始めるぞ。ここで良いのだな?」
「ちょっ、ちょっと待ってよぉぉぉ」
全力で抵抗するラソン。
「準備するから待ってて。お願い!」
「ふむ。では準備しろ」
僕と一緒に寝床の整理と身支度をしていた所に、フィドキアが部屋に入って来た。
「支度している間に父上から聞いた事を教えよう」
ラソンが”準備出来るまで待ってて”と言う前に制された。
「我はこの200年の間、お前と夜を共にするだろう。交配が成功するか失敗するかは解らないが、その時が来るまでの間不便だろうが頼む」
「はいっ」
無表情で淡々と話すフィドキアら対して、嬉しそうに返事をするラソンだった。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
翌日。
いつもと変わらない朝。
朝日を浴びる街ちなみの静粛さに身を曝け出していると、斜め後ろから寄り添う者が居た。
その者の肩に頭を傾けて手を取り合う。
ラソンにとって至福の時だった。
これから200年も毎日この朝を迎える事が出来る喜び。
このあと200年後には別々の朝を迎える事になるまでは、2人だけの朝を共有する喜び。
限られた時の全てを至福の時間とすべく、不快な記憶を残さない様に僕に厳命するラソンだ。
ラソンの変化は誰が見ても解かるほどの表情だった。
心が満たされているのか、その口元には常に微笑みが見て取れる。
誰に対しても優しく接する姿は僕達の人気を博した。
勿論、インスティントに対しても同様だ。
恋の競争相手を置き去りにして、心身ともに満たされているのだから。
更に、その事はインスティントには知らされていない。
成龍となって間もないインスティントにとっては交配する事も許可されないからだ。
「あらインス。今日もフィドキアと稽古?」
「ええ。昨日も今日も明日もずうっとよ」
ニコヤカに微笑むラソン。
以前ならば眉間にシワを寄せる場面だが、そのような悪態は必要無いのだ。
「そう、頑張ってね。貴女も早く立派な龍人になれると良いわね」
「えっ!? ええ・・・」
嫌味に対しての返事が思っても居なかった事に驚くが、前向きなインスティントは鵜呑みしてしまう。
(早くみんなに認めてもらってフィドキアと・・・フフフッ)
インスティントの自己中心的な考えの元、稽古場へと向かい走り去る後姿を見て口先が更に歪むラソンだった。
Epílogo
まずは先手を打つ事に成功したラソン。
果たして思惑通りとなるのか。
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