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第4章 獣王国編2
第109話 もうすぐ3回目の結婚式5
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パウリナとの式典までのエルヴィーノは別荘と実家の移動がほとんどで、国の政務やゲレミオでよっぽどの事が無ければ現地に行かないし通常はエマスコで連絡していた。
しかも”あの2人”から執拗な性求も成りをひそめていたのだ。
その実態は、棘城の事を話したからだ。
”嫁3人”で、各々の部屋や屋敷にエルヴィーノを”蹂躙”する為の部屋などを楽しそうに考えているのだ。
しかも、ロザリーの指導の元、各自どのような”モノ”にするか秘密にするらしい。
それは完成時にそれぞれが”お披露目”をして楽しむからだ。
ついこの前出来たばかりの、緑に囲まれた山の中腹にある別荘で寛ぎながら、遥か南方の城と城下町を描いて好き勝手に思いを巡らせていた3人。
そんな光景の隣にはエアハルトとアロンソがクララと遊んでいるのが視界に入る。
(あぁ、俺の幸せが全てココに有る)と実感していた。
するとまた、どこからかエルヴィーノを呼ぶ声がしだした。
(・・・リアン。モンドリアン)
「あっ、まただ!」
フィドキアが念話で話し掛けている事に気づき龍人の腕輪に魔素を送った。
「モンドリアン聞こえるか?」
「あぁ聞こえているよ。どうした?」
「実は棘城の事で会って話がしたいから来てくれるか?」
あれ、戻ってきたのかと思いながら「分かった」とだけ返事をした。
エルヴィーノはロリに(フィドキアが呼んでいるからチョット行って来る。皆には教会の用事だと伝えてほしい)とエマスコした。
すると(行ってらっしゃい、あ・な・た ♡ お土産はどうするの? たまにはお菓子なんてどうかしら?) そうだな、いつも串ばかりだと飽きるだろう。
(分かった王都で買っていくよ)
そう返信しティールーム・カラコルへ行ってクッキーを有るだけ買い占めて転移した。
「フィドキア~来たぞ~」
と監視室でいつもの様に声を掛けて居間に向うと「やぁ、待っていたよ」と声を掛けて来たのはカマラダだった。
その横で難しい顔をしたフィドキアが腕組みしている。
ラソンは至って普通だ。
「どうしたの? 3人も居て」
誰に聞いたつもりでは無かったが答えたのはカマラダだ。
「私が君に部屋をもらえる事が気に入らないみたいなのさ、フィドキアが」
「ん? どうして」
仕方なく話すフィドキア。
「我ら龍人にはそれぞれの管轄があって、カマラダの管轄はここでは無いからだ」
「だから? フィドキア様は気に入らないと仰るわけですね?」
エルヴィーノが急に丁寧な言葉で話すから驚いたフィドキア。
(小さい事でウジウジと・・・)と思いながら
「どのような事情か知りませんがフィドキア様の代わりにいらっしゃったのであれば、私からもお礼をしなくてはと思いお約束をしました。私の勝手で申し訳ありません。フィドキア様はカマラダ様に貸し1つだと思われれば良いのではないでしょうか?」
「あ、あぁ。分かった」
目を丸くして答えたフィドキアだった。
フィドキアがエルヴィーノの意表を突いた接し方に戸惑って返事をしたので先を進めたエルヴィーノ。
「じゃお土産食べよう。今日はお菓子の日です」
クスクスと笑いをこらえながら喜んだのはラソンとカマラダだ。
フィドキアは無表情で口一杯に詰め込んでいる。
龍人は甘い物もかなり好きらしい。
ラソンの入れた紅茶を飲みながら「それで、棘城のどんな話だ?」と、いつもの話し方に戻した。
「お前の要望を我ら龍人が受けようと思ってな」
エルヴィーノは驚いた。
冗談のつもりで言った事を真に受けたのか? 本来ならば何十年とかかる築城と城下町にどんな協力をしてくれるのか内心はドキドキしていたエルヴィーノにフィドキアから説明があった。
「まず、お前達が考えて提出する物が必要だ」
それは大よその見取り図だ。
城の大きさ。
階数、部屋、通路、様々な施設と大きさを図面にして欲しいとの事だった。
「なんでそこまで細かくするのさ、作るのは獣人達だぜ?」
「我らが協力すると言っただろう。龍人の力を使えば城などあっと言う間に出来る!」
自慢げに話すフィドキアに、エルヴィーノは立ちあがり褒め称えた。
「すげぇー、すげぇーよ! 流石は龍人だ! やっぱり龍人の力は偉大だよなぁ」
エルヴィーノはフィドキアに向かって普段絶対にしないベタボメをすると、少し照れた様子で「とっ、当然だ」と一言だけ答えた。
他の”2人”は微笑ましく見守る中「城下街はどうするの?」と聞いてみた。
「城の次に作る」
「龍人最高ぉ!!」
エルヴィーノがハシャグと自慢げなフィドキアに「貴男が作る訳では無いでしょ」とラソンに抑制される。
「じゃ城の地下の迷宮はどうする? 監視室をココと同じ迷宮の最下層か、城下街にコッソリと作ろうと思っていたけど」
エルヴィーノの問いに一言だけフィドキアは「両方だ」と答えた。
(贅沢な)と思いながら
「ええっと、じゃ迷宮は任せていいよね?」
「ええ、私達に任せて」
ラソンの返事に安心したエルヴィーノだった。
「あと通常の城も大体地下が有るからね」
確認の意味で聞いたが
「分かっている。地下2階分を考えてくれ」
最後に気になったのが
「城下町の何処に隠し部屋を作るかも考えろよな。余り目立つ建物や大きさにするなよ」
一応念を押して帰ろうとすると
「待て、まだ話は終わって無いぞ」
まだ何か有るのかと思ったら
「お前、棘の腕輪を持っているな?」
「あぁ、コラソンにもらったけど外せなくてさ」
「ウム。では魔素を送って見ろ」
「ええ!?」
コラソンは棘王に吸収されたと聞かされていたので存在しない者だと思っていたからだ。
「まっ、まさか棘王が出る訳じゃ無いよな?」
「安心しろ、成長したコラソンがお前に会いたがっているからだ」
「マジでか! 生きてやがったのかアイツ」
エルヴィーノは目をつむり腕に有る棘の腕輪に魔素を送って呼びかけた。
(コラソン! コラソン! 聞こえるか?)
(モンドリアンさんですね!)
(本当にコラソンか!)
(そうですよ、2人の”やりとり”をたまたま聞いてしまったコラソンです)
確かにコラソンだと確信したエルヴィーノ。
(無事で良かった。パウリナもお前の事をいつも話しているからな、生きていたなら、いつか会えるな)
(ハイ。お二人の結婚式に参上しようと思っています)
(本当か! それはパウリナも喜ぶぞ)
(それでモンドリアンさん。私の部屋も欲しいのですが良いですか?)
(当たり前だろ。元々お前の居た場所だからな、フィドキアに言っとくから好きなようにしてくれ。あっ、獣人達に怪しまれないようにな)
(ハイ、解かりました。では、結婚式の日にお会いしましょう)
短いやり取りだが、パウリナを連れ去った犯人とはいえエルヴィーノ達にとっては”悪者”では無かったコラソンに親しみを持っていた。
するとフィドキアが又難しい顔をしていた。
「どうした?」
「コラソンの居場所はどうするのだ?」
「子供の一人や二人お前の部屋の隣に作ればいいだろう」
溜息をついて説明するフィドキア。
「コラソンはお前たちが出会った時の姿では無い」
「ええっ! どうなっているんだ?」
「普通の青年だ」
エルヴィーノはてっきり”あの時”と同じ位の子供だと思っていた。
「そうか大人になったか。じゃ、任せる」
「ロリに私の部屋の事で相談したいから、連れて来てくれるかしら」
フィドキアに丸投げして話を切り上げようとしたらラソンから申し出が有ったので「了解」と返事してエルヴィーノは別荘に戻った。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
居間でおしゃべりしている”3人の嫁”に告げた。
「ロリ、教会の事で話が有るから俺の部屋に来てくれ」
ロリとエルヴィーノだけの秘密となる符丁。
それは龍人の話しだと理解して後を付いて来るロリだった。
「何?どうしたの?」
せかすロリに応える。
「ラソンから伝言があって、棘城に自分の部屋を作りたいそうで相談したいらしい。ただし、その事はロリと俺だけの秘密にして欲しい事だ。まぁ龍人それぞれに部屋を作ってやるつもりだけどな」
「それで、いつ行くの」
「まぁ待てロリ」
龍人の協力を得た事を話し至急見取り図が必要になった事で、居間でくつろいでいる2人に適当な嘘を言って図面を作る事を手伝わせるのと、マルソにも聞いてクラベルの都市計画も参考にして大至急始めたいと説明したら、目を輝かせて居間に飛んで行った。
(あいつ大丈夫かな? 一応、龍人の事は固く口止めしているが・・・)
コラソンの事はしばらく内緒にしておこう。
パウリナを喜ばせるためだ。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
同じ頃、旅の宿エスピナでは常闇の帝王から指令を受けフォーレ、ガンソ、ラゴスタがガルガンダの交渉に来ていた。
当初はファイサンの予定だったが、ラゴスタの方が適任だと思い変更したのだ。
4人はフォーレ専用の部屋で話し合っていた。
まずは自己紹介から始まりガンソが常闇の帝王の存在を明らかにした。
初めは胡散臭い話だと思っていたが元ギルドマスターだったラゴスタも知らない者の下には付きたく無かった事を話し同意を得て組した事を聞いて、どれだけ凄いか会って見る事となった。
ガルガンダは当然フォーレの事を知っているので「モンドリアンは知っているのか?」と尋ねると「勿論だ、会ってその畏怖に触れれば嫌でも理解する」とフォーレからの返事だった。
その夜、”例の特別室”にフォーレ、ガンソとガルガンダを呼び寄せて、エルヴィーノとリカルドは夜の衣装を着て出番を待っていた。
「ガルガンダ、よいか? 決して粗相の無いようにな」
ガンソの警告に「あぁ、解ってる」返事をする親父さん。
何十年も冒険者を経験し、宿の主として沢山の猛者を見て来たと自負している。
三人の前には分厚いカーテンが遮り奥が全く見えなくなっていて、右からフォーレ、ガルガンダ、ガンソが片膝をつき到着を待っていた。
そしてエルヴィーノは”演出通り”に魔素を撒き散らしながら転移で現れる。
「もう来られるぞ」と俯いた2人にフォーレが伝えると、カッカッと歩く音が2人分聞こえたと同時にカーテンの向こうから異様な気配が荒波の様に押し寄せて来た。
それは気配では無く威圧感、圧迫感で異質な空気が息苦しくなるほどだ。
これに驚いたのはガルガンダだ、なぜなら未だかつて気配だけで手足が震えた事は無いからだ。
リカルドがカーテンを全開に開けると内側に籠もっていた魔素が三人を包みこんだ。
ラゴスタの時と同じくリカルドが話す。
「ノチェ・デル・インペリオ(夜の帝国)の支配者、常闇の帝王エル・モンド閣下の謁見である。そのお姿を拝見出来る事を光栄に思うが良い」
フォーレとリカルドは自らの魔素を発散して平然とし、ガンソは魔石を使いある程度受け流していた。
ガルガンダはその魔素の質と量で一瞬に過去に体験した事の無い化け物と対自するかのような緊張で汗がドッと出てきた。
リカルドが「ガルガンダよ、面を上げよ」と告げて親父さんはゆっくりと顔を上げる。
純銀で作られた”常闇の帝王”に相応しい風格と威厳のある大きな装飾で飾られた椅子に座るエルヴィーノは魅力の力を”弱”で使っていた。
姿を見たガルガンダは驚いた。
「あああっ! モモモモンドリアンにリカルドも!」
左右から「「静かに」」注意されて大人しくなる。
「驚いたかい? 親父さん。いやガルガンダよ」
「ど、どうなってんだ」
問いかけながら理解したガルガンダ。
こんなに恐ろしい魔素を撒き散らすのであれば棘の森や棘王も倒せるはずだと理解したからだ。
だが目の前に居る男が本当に”あの優しい男”なのか不安になって来た。
「本当にモンドリアンか?」
「ああ、隠していて済まない」
「オメェ獣王国の王、獣王になるんじゃ無ぇのかよ」
「そうだな」
「じゃ何故こんな事をするんだ?」
「表の昼は国の管理だが、裏の夜は世界の管理なのさ。表と裏は一枚の貨幣と同じなのだ。二つで1つだ。そして裏には国境が無い。裏こそが真の世界と知れ、ガルガンダよ」
エルヴィーノの言葉を聞いて考え込むガルガンダ。
「・・・分かった。俺はどうすればいいんだ?」
地味に魅力が効いているのかも知れないと思い計画を話した。
「我らはこの国に新しい城と城下町を作る。そこにこの大陸の拠点となるゲレミオを設置する予定だ。お前にはその責任者になって欲しい」
硬直して返事が無いガルガンダが左右からゆすられて正気に戻る。
「そっ、そんな事が! イヤ、俺はもう歳だ。城が出来るまで死んじまうぜ」
「お前の心配など必要無い。俺に付いて来るか、否か答えろ」
「ふんっ、分かってんだろ、そんな事は。付いて行くに決まってらぁ」
吠えるガルガンダが微笑んで答えた。
「お前にもらったこの義手に掛けて誓おう!」
その義手を見てガンソが聞いて来た。
「それは陛下から下肢された物ですか?」
「ああ、これは魔素の少ない俺にも魔法を使えるようにしてくれた魔導具だ」
自慢げに見せびらかすガルガンダを羨ましそうに見るガンソ。
「そっ、それは本当ですか!」
同じく魔素が少なく魔法が使えないガンソが”陛下”の方を向いて何か言いたそうにしていた。
「あー、ガルガンダは以前重傷だった仲間を助けてくれた事が有ったからな。その時の礼で渡した物だ。何が言いたいか分かるな、ガンソ」
「ハハッ。私も陛下のお役に立てるように励みたいと思います」
目を輝かせてやる気満々のガンソは放置する。
「では今後、夜はガルガンダと呼び、昼は親父さんと呼ぶ事で良いな」
「ああ、何でもいいぜ」
「ではもう1つ。新しく作る城下町に”超高級旅館エスピナ”を作る事になったから、一度聖魔法王国にある絶景の宿アルディリアを見学すれば良い。お前にはそこの店主にもなってもらうからな」
後日、それ(木賃宿の親父が超高級旅館の主になる件)に関しては生に合わないと”泣き”が入り、陰の店主として表には出なくても良い事にして納得してくれた。
あとがき
進む棘城の計画と、ガルガンダがゲレミオに参加しました。
後日手に持つL字型の魔力増幅装置をガンソに作ってやる予定だ。
しかも”あの2人”から執拗な性求も成りをひそめていたのだ。
その実態は、棘城の事を話したからだ。
”嫁3人”で、各々の部屋や屋敷にエルヴィーノを”蹂躙”する為の部屋などを楽しそうに考えているのだ。
しかも、ロザリーの指導の元、各自どのような”モノ”にするか秘密にするらしい。
それは完成時にそれぞれが”お披露目”をして楽しむからだ。
ついこの前出来たばかりの、緑に囲まれた山の中腹にある別荘で寛ぎながら、遥か南方の城と城下町を描いて好き勝手に思いを巡らせていた3人。
そんな光景の隣にはエアハルトとアロンソがクララと遊んでいるのが視界に入る。
(あぁ、俺の幸せが全てココに有る)と実感していた。
するとまた、どこからかエルヴィーノを呼ぶ声がしだした。
(・・・リアン。モンドリアン)
「あっ、まただ!」
フィドキアが念話で話し掛けている事に気づき龍人の腕輪に魔素を送った。
「モンドリアン聞こえるか?」
「あぁ聞こえているよ。どうした?」
「実は棘城の事で会って話がしたいから来てくれるか?」
あれ、戻ってきたのかと思いながら「分かった」とだけ返事をした。
エルヴィーノはロリに(フィドキアが呼んでいるからチョット行って来る。皆には教会の用事だと伝えてほしい)とエマスコした。
すると(行ってらっしゃい、あ・な・た ♡ お土産はどうするの? たまにはお菓子なんてどうかしら?) そうだな、いつも串ばかりだと飽きるだろう。
(分かった王都で買っていくよ)
そう返信しティールーム・カラコルへ行ってクッキーを有るだけ買い占めて転移した。
「フィドキア~来たぞ~」
と監視室でいつもの様に声を掛けて居間に向うと「やぁ、待っていたよ」と声を掛けて来たのはカマラダだった。
その横で難しい顔をしたフィドキアが腕組みしている。
ラソンは至って普通だ。
「どうしたの? 3人も居て」
誰に聞いたつもりでは無かったが答えたのはカマラダだ。
「私が君に部屋をもらえる事が気に入らないみたいなのさ、フィドキアが」
「ん? どうして」
仕方なく話すフィドキア。
「我ら龍人にはそれぞれの管轄があって、カマラダの管轄はここでは無いからだ」
「だから? フィドキア様は気に入らないと仰るわけですね?」
エルヴィーノが急に丁寧な言葉で話すから驚いたフィドキア。
(小さい事でウジウジと・・・)と思いながら
「どのような事情か知りませんがフィドキア様の代わりにいらっしゃったのであれば、私からもお礼をしなくてはと思いお約束をしました。私の勝手で申し訳ありません。フィドキア様はカマラダ様に貸し1つだと思われれば良いのではないでしょうか?」
「あ、あぁ。分かった」
目を丸くして答えたフィドキアだった。
フィドキアがエルヴィーノの意表を突いた接し方に戸惑って返事をしたので先を進めたエルヴィーノ。
「じゃお土産食べよう。今日はお菓子の日です」
クスクスと笑いをこらえながら喜んだのはラソンとカマラダだ。
フィドキアは無表情で口一杯に詰め込んでいる。
龍人は甘い物もかなり好きらしい。
ラソンの入れた紅茶を飲みながら「それで、棘城のどんな話だ?」と、いつもの話し方に戻した。
「お前の要望を我ら龍人が受けようと思ってな」
エルヴィーノは驚いた。
冗談のつもりで言った事を真に受けたのか? 本来ならば何十年とかかる築城と城下町にどんな協力をしてくれるのか内心はドキドキしていたエルヴィーノにフィドキアから説明があった。
「まず、お前達が考えて提出する物が必要だ」
それは大よその見取り図だ。
城の大きさ。
階数、部屋、通路、様々な施設と大きさを図面にして欲しいとの事だった。
「なんでそこまで細かくするのさ、作るのは獣人達だぜ?」
「我らが協力すると言っただろう。龍人の力を使えば城などあっと言う間に出来る!」
自慢げに話すフィドキアに、エルヴィーノは立ちあがり褒め称えた。
「すげぇー、すげぇーよ! 流石は龍人だ! やっぱり龍人の力は偉大だよなぁ」
エルヴィーノはフィドキアに向かって普段絶対にしないベタボメをすると、少し照れた様子で「とっ、当然だ」と一言だけ答えた。
他の”2人”は微笑ましく見守る中「城下街はどうするの?」と聞いてみた。
「城の次に作る」
「龍人最高ぉ!!」
エルヴィーノがハシャグと自慢げなフィドキアに「貴男が作る訳では無いでしょ」とラソンに抑制される。
「じゃ城の地下の迷宮はどうする? 監視室をココと同じ迷宮の最下層か、城下街にコッソリと作ろうと思っていたけど」
エルヴィーノの問いに一言だけフィドキアは「両方だ」と答えた。
(贅沢な)と思いながら
「ええっと、じゃ迷宮は任せていいよね?」
「ええ、私達に任せて」
ラソンの返事に安心したエルヴィーノだった。
「あと通常の城も大体地下が有るからね」
確認の意味で聞いたが
「分かっている。地下2階分を考えてくれ」
最後に気になったのが
「城下町の何処に隠し部屋を作るかも考えろよな。余り目立つ建物や大きさにするなよ」
一応念を押して帰ろうとすると
「待て、まだ話は終わって無いぞ」
まだ何か有るのかと思ったら
「お前、棘の腕輪を持っているな?」
「あぁ、コラソンにもらったけど外せなくてさ」
「ウム。では魔素を送って見ろ」
「ええ!?」
コラソンは棘王に吸収されたと聞かされていたので存在しない者だと思っていたからだ。
「まっ、まさか棘王が出る訳じゃ無いよな?」
「安心しろ、成長したコラソンがお前に会いたがっているからだ」
「マジでか! 生きてやがったのかアイツ」
エルヴィーノは目をつむり腕に有る棘の腕輪に魔素を送って呼びかけた。
(コラソン! コラソン! 聞こえるか?)
(モンドリアンさんですね!)
(本当にコラソンか!)
(そうですよ、2人の”やりとり”をたまたま聞いてしまったコラソンです)
確かにコラソンだと確信したエルヴィーノ。
(無事で良かった。パウリナもお前の事をいつも話しているからな、生きていたなら、いつか会えるな)
(ハイ。お二人の結婚式に参上しようと思っています)
(本当か! それはパウリナも喜ぶぞ)
(それでモンドリアンさん。私の部屋も欲しいのですが良いですか?)
(当たり前だろ。元々お前の居た場所だからな、フィドキアに言っとくから好きなようにしてくれ。あっ、獣人達に怪しまれないようにな)
(ハイ、解かりました。では、結婚式の日にお会いしましょう)
短いやり取りだが、パウリナを連れ去った犯人とはいえエルヴィーノ達にとっては”悪者”では無かったコラソンに親しみを持っていた。
するとフィドキアが又難しい顔をしていた。
「どうした?」
「コラソンの居場所はどうするのだ?」
「子供の一人や二人お前の部屋の隣に作ればいいだろう」
溜息をついて説明するフィドキア。
「コラソンはお前たちが出会った時の姿では無い」
「ええっ! どうなっているんだ?」
「普通の青年だ」
エルヴィーノはてっきり”あの時”と同じ位の子供だと思っていた。
「そうか大人になったか。じゃ、任せる」
「ロリに私の部屋の事で相談したいから、連れて来てくれるかしら」
フィドキアに丸投げして話を切り上げようとしたらラソンから申し出が有ったので「了解」と返事してエルヴィーノは別荘に戻った。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
居間でおしゃべりしている”3人の嫁”に告げた。
「ロリ、教会の事で話が有るから俺の部屋に来てくれ」
ロリとエルヴィーノだけの秘密となる符丁。
それは龍人の話しだと理解して後を付いて来るロリだった。
「何?どうしたの?」
せかすロリに応える。
「ラソンから伝言があって、棘城に自分の部屋を作りたいそうで相談したいらしい。ただし、その事はロリと俺だけの秘密にして欲しい事だ。まぁ龍人それぞれに部屋を作ってやるつもりだけどな」
「それで、いつ行くの」
「まぁ待てロリ」
龍人の協力を得た事を話し至急見取り図が必要になった事で、居間でくつろいでいる2人に適当な嘘を言って図面を作る事を手伝わせるのと、マルソにも聞いてクラベルの都市計画も参考にして大至急始めたいと説明したら、目を輝かせて居間に飛んで行った。
(あいつ大丈夫かな? 一応、龍人の事は固く口止めしているが・・・)
コラソンの事はしばらく内緒にしておこう。
パウリナを喜ばせるためだ。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
同じ頃、旅の宿エスピナでは常闇の帝王から指令を受けフォーレ、ガンソ、ラゴスタがガルガンダの交渉に来ていた。
当初はファイサンの予定だったが、ラゴスタの方が適任だと思い変更したのだ。
4人はフォーレ専用の部屋で話し合っていた。
まずは自己紹介から始まりガンソが常闇の帝王の存在を明らかにした。
初めは胡散臭い話だと思っていたが元ギルドマスターだったラゴスタも知らない者の下には付きたく無かった事を話し同意を得て組した事を聞いて、どれだけ凄いか会って見る事となった。
ガルガンダは当然フォーレの事を知っているので「モンドリアンは知っているのか?」と尋ねると「勿論だ、会ってその畏怖に触れれば嫌でも理解する」とフォーレからの返事だった。
その夜、”例の特別室”にフォーレ、ガンソとガルガンダを呼び寄せて、エルヴィーノとリカルドは夜の衣装を着て出番を待っていた。
「ガルガンダ、よいか? 決して粗相の無いようにな」
ガンソの警告に「あぁ、解ってる」返事をする親父さん。
何十年も冒険者を経験し、宿の主として沢山の猛者を見て来たと自負している。
三人の前には分厚いカーテンが遮り奥が全く見えなくなっていて、右からフォーレ、ガルガンダ、ガンソが片膝をつき到着を待っていた。
そしてエルヴィーノは”演出通り”に魔素を撒き散らしながら転移で現れる。
「もう来られるぞ」と俯いた2人にフォーレが伝えると、カッカッと歩く音が2人分聞こえたと同時にカーテンの向こうから異様な気配が荒波の様に押し寄せて来た。
それは気配では無く威圧感、圧迫感で異質な空気が息苦しくなるほどだ。
これに驚いたのはガルガンダだ、なぜなら未だかつて気配だけで手足が震えた事は無いからだ。
リカルドがカーテンを全開に開けると内側に籠もっていた魔素が三人を包みこんだ。
ラゴスタの時と同じくリカルドが話す。
「ノチェ・デル・インペリオ(夜の帝国)の支配者、常闇の帝王エル・モンド閣下の謁見である。そのお姿を拝見出来る事を光栄に思うが良い」
フォーレとリカルドは自らの魔素を発散して平然とし、ガンソは魔石を使いある程度受け流していた。
ガルガンダはその魔素の質と量で一瞬に過去に体験した事の無い化け物と対自するかのような緊張で汗がドッと出てきた。
リカルドが「ガルガンダよ、面を上げよ」と告げて親父さんはゆっくりと顔を上げる。
純銀で作られた”常闇の帝王”に相応しい風格と威厳のある大きな装飾で飾られた椅子に座るエルヴィーノは魅力の力を”弱”で使っていた。
姿を見たガルガンダは驚いた。
「あああっ! モモモモンドリアンにリカルドも!」
左右から「「静かに」」注意されて大人しくなる。
「驚いたかい? 親父さん。いやガルガンダよ」
「ど、どうなってんだ」
問いかけながら理解したガルガンダ。
こんなに恐ろしい魔素を撒き散らすのであれば棘の森や棘王も倒せるはずだと理解したからだ。
だが目の前に居る男が本当に”あの優しい男”なのか不安になって来た。
「本当にモンドリアンか?」
「ああ、隠していて済まない」
「オメェ獣王国の王、獣王になるんじゃ無ぇのかよ」
「そうだな」
「じゃ何故こんな事をするんだ?」
「表の昼は国の管理だが、裏の夜は世界の管理なのさ。表と裏は一枚の貨幣と同じなのだ。二つで1つだ。そして裏には国境が無い。裏こそが真の世界と知れ、ガルガンダよ」
エルヴィーノの言葉を聞いて考え込むガルガンダ。
「・・・分かった。俺はどうすればいいんだ?」
地味に魅力が効いているのかも知れないと思い計画を話した。
「我らはこの国に新しい城と城下町を作る。そこにこの大陸の拠点となるゲレミオを設置する予定だ。お前にはその責任者になって欲しい」
硬直して返事が無いガルガンダが左右からゆすられて正気に戻る。
「そっ、そんな事が! イヤ、俺はもう歳だ。城が出来るまで死んじまうぜ」
「お前の心配など必要無い。俺に付いて来るか、否か答えろ」
「ふんっ、分かってんだろ、そんな事は。付いて行くに決まってらぁ」
吠えるガルガンダが微笑んで答えた。
「お前にもらったこの義手に掛けて誓おう!」
その義手を見てガンソが聞いて来た。
「それは陛下から下肢された物ですか?」
「ああ、これは魔素の少ない俺にも魔法を使えるようにしてくれた魔導具だ」
自慢げに見せびらかすガルガンダを羨ましそうに見るガンソ。
「そっ、それは本当ですか!」
同じく魔素が少なく魔法が使えないガンソが”陛下”の方を向いて何か言いたそうにしていた。
「あー、ガルガンダは以前重傷だった仲間を助けてくれた事が有ったからな。その時の礼で渡した物だ。何が言いたいか分かるな、ガンソ」
「ハハッ。私も陛下のお役に立てるように励みたいと思います」
目を輝かせてやる気満々のガンソは放置する。
「では今後、夜はガルガンダと呼び、昼は親父さんと呼ぶ事で良いな」
「ああ、何でもいいぜ」
「ではもう1つ。新しく作る城下町に”超高級旅館エスピナ”を作る事になったから、一度聖魔法王国にある絶景の宿アルディリアを見学すれば良い。お前にはそこの店主にもなってもらうからな」
後日、それ(木賃宿の親父が超高級旅館の主になる件)に関しては生に合わないと”泣き”が入り、陰の店主として表には出なくても良い事にして納得してくれた。
あとがき
進む棘城の計画と、ガルガンダがゲレミオに参加しました。
後日手に持つL字型の魔力増幅装置をガンソに作ってやる予定だ。
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昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
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