暴発令嬢と完全無欠な王太子殿下

hina

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「炎弾!」

どっごーーーん!

「やば」

「リリーさん! 鍛錬場を壊さないでと何度言ったらわかりますか!?」
「す、すみません! わざとじゃないんです……どうしてもコントロールが出来なくて……」

リリー・シュクレス伯爵令嬢。
それが私の名前と肩書き。
この王立学園では、暴発令嬢と呼ばれている。
理由は単純明快。魔法を暴発させてしまうから。
卒業予定まであと一年だけど、コントロールが出来なければ、留年させられるかもしれなくて、私は焦っていた。

「にゃお~ん」
「なあに、レヴィ。何か言いたいことでも?」

足元にいる白い猫が何か言いたげに尻尾を振った。


まだ鍛錬したいけど、怖い監督の先生はそう思ってはいないようだ。
「失礼します……」

修繕費を請求されたら困ると、足早にその場を後にする。


「はぁ……うまくいかないな」

一つにまとめていた紫紺の長い髪をほどいて、ラズベリーピンクの瞳を縁取るまつ毛を指で撫でた。

「疲れたら甘いもの食べたくなっちゃった」
『太るぞ』
「余計なお世話!」
『魔法は理論だけじゃ使えない。いつも言ってるだろう』
「猫から人間に戻れなくなって、長期の旅に出ていることになっている大魔法使い様に言われても」
『私のこれは阻害魔法が……』
「困りましたねえ」

私の使い魔のフリをしている猫は、実は人間で大魔法使いのレヴィウス様だ。
誰かに魔法が解けなくなる阻害魔法をかけられてしまったらしい。
今は王立学園がある王都で犯人探しの真っ最中らしい。

「私の使い魔のフリをするのは、まあいいんですけど、厄介ごとには巻き込まないで下さいね」
『分かっている』


「リリー? 誰と話しているんだい?」
「にゃー」

突如話しかけられて、振り向いた先には、肩までのある銀色の髪にアイスブルーの瞳の美丈夫。

同い年の王太子殿下、ユセル・ベラルディーク様だった。
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