βからΩになったなら

hina

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「瑞希、もう大丈夫だからな。俺がそばにいて離さないから」
「渚……」
渚の部屋のソファに座り、渚に抱きしめられて頭を撫でられる。
僕はぎゅうぎゅうときつく力を込める渚の両肩に手を置いて、渚の首筋に顔を埋めた。
フェロモンのいい匂いがして、心身共にリラックスしていく。

やっぱり、渚じゃないとダメだ。
もうとっくに僕の唯一無二になっていた。

「渚、好き。好き、渚……」
「! 瑞希、俺もだよ。俺なんか好きだけじゃなくて、愛してるからな」

僕の両頬を両手で包んで額を合わせた渚は、なぜか泣きそうな顔で僕に口付けた。

「瑞希、俺は怖かったよ。目の前で瑞希がさらわれて。すぐにGPSを確かめたけど、離れてる間に瑞希がどんな酷い目に遭うのかと思うと居ても立っても居られなかった」
「僕は必死だった。男に襲われて、那月も隣で抵抗してて。渚が早く来てくれることを祈ってた……」
「瑞希、ごめんな。つらい目に遭わせてしまって……」

つらそうなのは、僕よりも渚だ。
顔をゆがめて、僕を見ている。

「あんなの、渚にもどうにも出来なかったよ……」
「だとしても、守りきれなかった自分が不甲斐なくて仕方ない」
「渚は僕を守ってくれてたよ。それは今も。渚がいないと、僕、きっとダメになっちゃうよ」
「俺も瑞希がいないとダメになっちゃうな。俺がそばにいるから、瑞希もそばにいて」
「うん……約束」
「ああ。約束」

僕達は指切りをするかわりに、ゆっくりそっと、お互いを慈しむように唇を重ねた。





「初めまして、長女で末っ子の礼奈《れいな》です! 渚兄の運命の番の瑞希さんですよね! いい匂い、可愛い! よろしくお願いしますっ」
「え、あ、よろしくお願いします。礼奈さん。成瀬瑞希です。」
「礼奈でいいですよ!」
「礼奈、瑞希から離れろ。匂いを嗅ぐな!」

夕食前。
抱きついてきそうな勢いの美少女な妹さんの握手に戸惑ったけど、渚が僕と礼奈さんの間に入って僕達を離した。

「何でー!? 私も仲良くしたい! 渚兄だけズルい!」
「運命との仲を邪魔するな」
「邪魔してるわけじゃないもん」
「礼奈、運命ともなれば、渚は瑞希くんには誰も近付かせたくないくらいなのよ。適度な距離は取らないといけないわ」
「はーい……」
渚のお母さんに窘められて、礼奈さんは大人しく食卓の自分の席に座った。

僕は渚の隣に。元々は渚のお兄さんの席で、お兄さんは今大学生で一人暮らしをしているらしい。
そして僕とは反対側の渚の隣に礼奈さん。僕達の向かいに渚のご両親の席があり、渚のお父さんはまだ帰宅してなかった。

「瑞希くんはお肉が好きとのことだけど、今日はお魚なの。明日は渚のリクエストでしゃぶしゃぶだから楽しみにしててね」
「はい! ただ僕、お肉だけじゃなくて、お魚も好きです! 練りがらしと変わったもの以外は食べられます」
「あら、わかったわ。覚えておくわね」
柔らかく微笑む渚のお母さんに、僕も笑顔を返した。


明日は渚の誕生日だ……!
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