βからΩになったなら

hina

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「手袋は持ってきた?」
「うん。ちゃんとしてるよ、ほら」
繋いでない方の手を見せて、ベージュの革手袋を見せた。
この手袋も渚のプレゼントだ。
服も小物もほとんどが渚のプレゼントで、今や私服は自分で買ったものの方が少ない。
渚が僕にいくら使っているのかは、あんまり知りたくなかった。

「なら、俺もつけようかな」
そう言ってネイビーのコートのポケットから取り出したのは、明るいグレーの僕と同じデザインの手袋だった。
渚は立ち止まり一旦手を解いて、手袋を片手だけつけた。

「片手だけっていうのも変な感じだよね」
「でも繋ぐ手は素手がいいしな。手が冷えて瑞希が体調を崩すのは避けたいから、あったかくして」
「僕も渚に体調崩して欲しくない」
「俺はαだし、瑞希よりも丈夫だから。でもありがとう。手袋で防寒するよ」

そう言いつつ、渚は首に巻いていた手袋と同じ色味のグレーのマフラーを外して僕に巻いてくれた。

「あったかくな、瑞希」
「ありがとう、渚」

渚が僕の頭に手を乗せて、髪を撫でた。
もう一度手を繋いで、今度こそ歩き出す。
マフラーからは渚の匂いがして、僕はふわふわした心地になってしまう。

「渚の匂い……いい匂い……」
「瑞希? 大丈夫か?」
「ちょっとふわふわする」
「マフラー外すか?」
「や、巻いてる」

僕はマフラーを押さえて、ぎゅっと握った。

「ふふ、とらないよ。巻いてて」
「これは僕の。好きな匂い……」
「俺も瑞希が巻いたマフラーが欲しいな。今度マフラー持ってくるから、しばらく巻いててくれないか、瑞希」
「うん、いいよ……」

僕はしばらく渚のフェロモンに酔いながらぽやっとしつつ、渚に手を引かれて歩いていた。



寮から歩いて二十分くらいのところに小さな公園、三十分くらいのところにカフェスペースのあるパン屋さんを見つけた僕達は、そのカフェスペースで小休憩を取っていた。

「このパン美味しいー。渚も食べてみて?」
行儀は悪いけど、アスパラとベーコンのパンを渚に差し出すと、渚は「ん、いただきます」と頷いて一口パンを齧る。

「本当だな。美味しい。瑞希も俺のクロワッサン食べてみるか?」
「うん!」

渚がクロワッサンを渡してくれたので、少し迷って渚が食べた反対側を少し齧った。

「パリパリサクサクっ!」

美味しいと唸ったあと「いいとこ見つけたね」と渚に笑いかけると渚も口元を緩めて「そうだな」と同意してくれた。
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