βからΩになったなら

hina

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「僕、運命に会ったんです……。人で混雑した駅の構内で、それでもそのフェロモンが漂ってきて、一瞬で引き込まれて……僕には瑞希さんがいるのにって思って……」
「瑞希には片想いだけどね」
那月がすかさず突っ込んで、僕は苦笑した。

朝の登校前。渚達もそろそろ来る頃かなと思うけど、松平くんの話は止まらなかった。

「向こうも僕に気が付いたようで……彼は青陽の制服を着た高校生でした。歳は僕の一つ上。瑞希さんと同級生です」
「それで、その後は?」
「お互いに緊急用の抑制剤を打って、その日は別れました。だけど、それから連絡を取り合うようになって……」
「じゃあ、瑞希のことはもう諦める?」
「でも僕、瑞希さんの優しく甘く香るフェロモンも好きなんです」
「瑞希のフェロモンがなんだって……?」
那月と松平くんの会話を黙って聞いていたら、怒りに満ちた低い声が聞こえてきた。

「渚……!」
「おはよう、瑞希。朝から不快な話をしている馬鹿がいるけど、瑞希は今日も天使のようだね」
「そう見えてるのは渚だけだからね?」
僕が突っ込むと渚はため息を一つこぼして「分かってないな」と眉を顰めた。

「那月もあんまり松平と親しくするなよ」
「妬いてるの? 幸哉」
「悪いか」
「ううん。嬉しい」
不機嫌そうな幸哉さんの頬に上機嫌な那月が軽く口付けすると、幸哉さんは途端に顔を崩した。


「瑞希さんに気持ちがありながら、運命に惹かれる自分も否定出来ないなんて……僕、どうしたら良いんでしょうか?」
「松平、運命に会ったのか」
「はい」
幸哉さんの言葉に松平くんが頷く。

「お前は瑞希に相手にもされてないんだから、早く諦めろよ」
渚は冷笑を浮かべて、憐れむように松平くんを見やった。

「松平くんは僕に会った時、フェロモンの相性のことを言ってたけど、運命の番なら僕よりもフェロモンの相性が良いんじゃないの?」
「それはそうなんですけど……」
理屈じゃないんです……と呟く松平くんは力無く肩を落としていた。
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