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「僕、急いでますので、これで失礼します」
「晴人、明日から晴人に会いに行くから。待っててね」
「え、困ります」
蘇芳様は学園内に親衛隊があって怖い。僕から近付くわけじゃないから大丈夫かもしれないけれど、無用な軋轢は避けたいのである。
「俺は毎日晴人と会いたい」
「さ、さよなら」
強引に話を終わらせて、蘇芳様から離れる。
心臓はうるさいくらいになっていて、顔もあつい。
冷たい風が心地良いくらいで、切なそうな瞳をしていた蘇芳様がまだ目に焼き付いていたけど、せかせかと足を動かしていたら、少しずつ冷静になってきた。
本当に毎日会いに来たらどうしよう。
蘇芳様は良い香りがした。
もし放課後付き合ってもらえたら、妖魔退治が楽になる。
それはちょっと良いかもしれない。
けど、さっきみたいに口説かれたら……?
あんまり大丈夫じゃないかもしれない。
逃げ場を探すべきだろうかと考えながら、僕は街へ向かった。
◇
「晴人は可愛いね」
「晴人と東條様は目の保養になります」
「あ、それ同意」
茅野くんと蘇芳様、蘇芳様のクラスメイトで蘇芳様の友人の相田樹さんとで昼食を囲んでいる。
いつも席を探すのが大変だった学食は、蘇芳様効果か四人で昼食をとるようになってから、いつも決まった席が空いていて探さなくても座れるようになった。
あの日から休みの日以外は本当に毎日会いに来る蘇芳様のおかげで、僕の周りにも人が増えた。
のは、いいけれど、落ち着かない日々を過ごしている。
僕に取りいっても良い事ないと思うんだけどな。
蘇芳様には取り次がないし。
「でも晴人はご機嫌ナナメだね」
蘇芳様に苦笑され、僕は無言でカツ丼を頬張った。
「蘇芳様と繋がりたい人が押し寄せてきて、何の試練なんだろうって思うわけですよ。僕の平穏はどこに行ってしまったのか。それに時間を作るならせめて放課後にして欲しかった」
「ごめんね、放課後は忙しいから」
「そういう時は放課後もって言うべきですよ?」
とは言え、放課後付き合ってもらって夜の街を一緒に巡回しても、あらぬ噂を立てられそうではある。
だから妖魔が自ら逃げ出すサマを見るのはたまにのご褒美で丁度良いのかもしれない。
たまにのご褒美があるのかも怪しいけれど。
東條家の次期当主様は当主になる前からやることが山積みであるらしい。
ので、唯一それなりに時間が取れるのがこの時間で、僕達の付き合いは今や校内では知らない人がいないほどになってしまったのである。
蘇芳様の楽しいランチを邪魔しようとする人はいないので、人に囲まれる宿命を背負った蘇芳様の数少ない憩いの時間でもあるらしい。
人の上に立つ将来がある人は大変だ。
昼食を食べ終えたら、茅野くんと樹さんが気を利かせて(?)蘇芳様と僕を2人きりにするので、僕は人のいない校舎裏で蘇芳様からハグをされるという謎の時間を過ごす事になっているのが最近の流れだ。
「はあ……良い匂い」
「蘇芳様からも良い匂いがするよ」
「俺達、運命じゃないかな。初めてすれ違ったあの日、晴人に近付いたら急に匂いが強くなったし」
「鼓動は早くなったけど、どうだろう。僕はまだヒート未経験だし……」
「ヒートが来たら、番いになりたい。家の許可は取ったから、噛ませて?」
「え」
急な爆弾発言に、固まってしまう。急ぎすぎじゃないでしょうか。
高校卒業するくらいでもまだ早いくらいじゃないかな……。
「ごめんなさい、そんなに簡単に決められない。Ωにとって一生のことだから」
「俺にとっても番いはただ一人だよ。それくらい晴人が大切で好きだって事は覚えておいて」
「まだ実感がわかない……」
「せめてヒートが来る前に首輪は贈らせて?」
「わかった……」
ヒートの最中に頸を噛む事で番い関係が成立するから、僕はまだ首輪を着けていない。
国から配られたものはあるけど、性能は良くない。
街中で急なヒート、見知らぬαにはずみで頸を噛まれるなんて事が起きないように、頑丈な首輪は必要かもしれない。
それで蘇芳様が安心するなら、お言葉に甘えよう。
「晴人、明日から晴人に会いに行くから。待っててね」
「え、困ります」
蘇芳様は学園内に親衛隊があって怖い。僕から近付くわけじゃないから大丈夫かもしれないけれど、無用な軋轢は避けたいのである。
「俺は毎日晴人と会いたい」
「さ、さよなら」
強引に話を終わらせて、蘇芳様から離れる。
心臓はうるさいくらいになっていて、顔もあつい。
冷たい風が心地良いくらいで、切なそうな瞳をしていた蘇芳様がまだ目に焼き付いていたけど、せかせかと足を動かしていたら、少しずつ冷静になってきた。
本当に毎日会いに来たらどうしよう。
蘇芳様は良い香りがした。
もし放課後付き合ってもらえたら、妖魔退治が楽になる。
それはちょっと良いかもしれない。
けど、さっきみたいに口説かれたら……?
あんまり大丈夫じゃないかもしれない。
逃げ場を探すべきだろうかと考えながら、僕は街へ向かった。
◇
「晴人は可愛いね」
「晴人と東條様は目の保養になります」
「あ、それ同意」
茅野くんと蘇芳様、蘇芳様のクラスメイトで蘇芳様の友人の相田樹さんとで昼食を囲んでいる。
いつも席を探すのが大変だった学食は、蘇芳様効果か四人で昼食をとるようになってから、いつも決まった席が空いていて探さなくても座れるようになった。
あの日から休みの日以外は本当に毎日会いに来る蘇芳様のおかげで、僕の周りにも人が増えた。
のは、いいけれど、落ち着かない日々を過ごしている。
僕に取りいっても良い事ないと思うんだけどな。
蘇芳様には取り次がないし。
「でも晴人はご機嫌ナナメだね」
蘇芳様に苦笑され、僕は無言でカツ丼を頬張った。
「蘇芳様と繋がりたい人が押し寄せてきて、何の試練なんだろうって思うわけですよ。僕の平穏はどこに行ってしまったのか。それに時間を作るならせめて放課後にして欲しかった」
「ごめんね、放課後は忙しいから」
「そういう時は放課後もって言うべきですよ?」
とは言え、放課後付き合ってもらって夜の街を一緒に巡回しても、あらぬ噂を立てられそうではある。
だから妖魔が自ら逃げ出すサマを見るのはたまにのご褒美で丁度良いのかもしれない。
たまにのご褒美があるのかも怪しいけれど。
東條家の次期当主様は当主になる前からやることが山積みであるらしい。
ので、唯一それなりに時間が取れるのがこの時間で、僕達の付き合いは今や校内では知らない人がいないほどになってしまったのである。
蘇芳様の楽しいランチを邪魔しようとする人はいないので、人に囲まれる宿命を背負った蘇芳様の数少ない憩いの時間でもあるらしい。
人の上に立つ将来がある人は大変だ。
昼食を食べ終えたら、茅野くんと樹さんが気を利かせて(?)蘇芳様と僕を2人きりにするので、僕は人のいない校舎裏で蘇芳様からハグをされるという謎の時間を過ごす事になっているのが最近の流れだ。
「はあ……良い匂い」
「蘇芳様からも良い匂いがするよ」
「俺達、運命じゃないかな。初めてすれ違ったあの日、晴人に近付いたら急に匂いが強くなったし」
「鼓動は早くなったけど、どうだろう。僕はまだヒート未経験だし……」
「ヒートが来たら、番いになりたい。家の許可は取ったから、噛ませて?」
「え」
急な爆弾発言に、固まってしまう。急ぎすぎじゃないでしょうか。
高校卒業するくらいでもまだ早いくらいじゃないかな……。
「ごめんなさい、そんなに簡単に決められない。Ωにとって一生のことだから」
「俺にとっても番いはただ一人だよ。それくらい晴人が大切で好きだって事は覚えておいて」
「まだ実感がわかない……」
「せめてヒートが来る前に首輪は贈らせて?」
「わかった……」
ヒートの最中に頸を噛む事で番い関係が成立するから、僕はまだ首輪を着けていない。
国から配られたものはあるけど、性能は良くない。
街中で急なヒート、見知らぬαにはずみで頸を噛まれるなんて事が起きないように、頑丈な首輪は必要かもしれない。
それで蘇芳様が安心するなら、お言葉に甘えよう。
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