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週末、ミルクパンを焼いた。
捏ねる工程でストレス発散したけど、腕が痛くなった。
全身マッサージ受けたいな。……結構切実だったりする。
「美味しいけど、パン屋さんに劣る……」
そんなことを言うと、向かいに座ってるディアンが吹き出した。
「なに」
「いや、何でも……」
ない、と小さく呟く男をジト目で見て、庭で収穫したハーブを使ったチキンソテーにフォークを刺して、ガブッと齧り付いた。
「俺は好きだよ……」
もそもそとパンを食べるディアンを見ていたら、申し訳ない気持ちが湧いてきた。
「修行が足りないんだよね……でも毎日焼くわけにはいかないんだもん」
丁寧な暮らしがしたいけど、魔法陣だけで手一杯なのが現状だ。
「じゃあ、そういうわけで、午後から食材を買いに行こうね」
「どういうわけなんだ」
週末の恒例行事である。
◇
「ドラゴン肉かあ……買っちゃったけど美味しいのかな」
「極上だ」
「高かったもんね。ご馳走様です」
「ああ。今日の夕飯で俺が焼く」
「お願いします。味付けは何でするの?」
「専用のソースがある」
そう言って、ディアンは食料品店に入っていく。他にも野菜や魚もそれぞれの店に見に行く予定だ。
ドラゴン肉だけで重量がありそうだけど、ディアンが持ってくれている。
魔法が普及している世界だけど、亜空間収納はないようで、話したら不思議な顔をされ、研究してみると言われた。
新たな扉を開いてしまったらしい。
そんなこんなで荷物は持たなければならない。
「ああ、あった。これだ」
「ドラゴン用……瓶かあ。使い切りパックがあればいいのにね。ドラゴン肉は初めて見たし、そんなに頻繁にはありつけなさそうだし」
「このソースは他の肉を調理する時にも使える。ドラゴン肉が一番合うが、これ自体が美味い」
「そっか。それなら良いんだけど」
冷蔵室のこやしは増やしたくないのである。
言葉は魔法で通じるようになったし、文字は頑張って覚えたので、買い物にも不便はない。
この世界に迷い込んだ当初、王都の裏路地で途方に暮れていた私からしてみれば、現状は凄く恵まれていて、ディアンには感謝しかない。
捏ねる工程でストレス発散したけど、腕が痛くなった。
全身マッサージ受けたいな。……結構切実だったりする。
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「修行が足りないんだよね……でも毎日焼くわけにはいかないんだもん」
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「じゃあ、そういうわけで、午後から食材を買いに行こうね」
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「高かったもんね。ご馳走様です」
「ああ。今日の夕飯で俺が焼く」
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