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◇
「テューネ……、あのさ」
「なんですか、メトヴェールさん」
「お前、最近絵姿が出回ってる尋ね人じゃない……よな?」
「絵姿? 尋ね人……??」
この店の常連で冒険者のメトヴェールさんからもたらされた情報に、僕はついにきたか……と逃げ出すための算段を考え始めた。
「違うと思いますが……」
「だよな! 王室からの捜索依頼で顔と名前は似てるが、髪と目の色も違うし、こんなところで貴族令息が薬師をやってるわけないよな!?」
「はは……。ですね。その絵姿はどこで見られますか?」
「ああ。役所や自警団の掲示板に貼られてるぞ」
「そうですか。その人が見つかると良いですね」
「だな」
だとすれば、他の街も似たような状況だろう。メトヴェールさんは誤魔化せたとしても、他の人はどうだかわからない。
国外に逃れるしかないかな。
せっかくこの街にも慣れてきたのにな。
「じゃあ、また来るな」
「ありがとうございました」
僕は明日にでも手続きをして街を出ることにした。
◇
αの王太子。
それが私の肩書きだ。
幼い頃からαの片鱗をのぞかせ、何をしても優秀で、銀髪に淡い紫の瞳の見目も良い私の周りには沢山の人が集った。
私に取り入りたい者や、目をかけられたい者。
時には私の命を狙う者まで。
それらの人達に対処しながら、私は大きくなった。
他人に期待することはなくなったと思っていたのに、運命の番に対しては、多くを望んでしまうんだと分かったのに、その運命の番はほんの僅か話しただけで、私の前から消えてしまった。
あの日、レテュネに会ったあの日。
私は恋仲と噂されているだけの何とも思っていない令嬢を夜会の会場にエスコートして、ダンスを一曲だけ踊り会場を出た。
そこでレテュネと出会ったのだ。
廊下に良い匂いが充満していて、私は出所を探った。
香りを辿って、目についたのが赤い顔をしたレテュネだった。
私は声をかけて、私の部屋で休むように促した。
私もレテュネのフェロモンに触発されて身体が熱かったし、早く二人きりになりたかった。
「私達は運命の番だと思うのですが……」
「そう、でしょうか?」
「はい。レテュネは感じませんか?」
「それはその……なんというか……。そういえば、馬車に忘れ物をしてしまいました。取りに行ってもよろしいでしょうか?」
「体調は大丈夫ですか? 何を忘れたか教えてもらえれば、侍従に取りに行かせますが」
「いえ。体調は平気なので、自分で取りに行きたいのですが……」
そう言いながらも荒い呼吸をしてるレテュネは辛そうなのに、その後も頑なに馬車に行きたがった。
私は折れて、レテュネについて行くことにした。
「殿下、ごめんなさい……」
馬車に着いたレテュネは私の手をすり抜けて、扉を閉め、そのまま走り去ってしまった。
私は呆然としたまま追いかける事も出来ず、次の日になってからレテュネの家に遣いを送ったのだが、レテュネはもう行方不明でいなくなっていた。
「テューネ……、あのさ」
「なんですか、メトヴェールさん」
「お前、最近絵姿が出回ってる尋ね人じゃない……よな?」
「絵姿? 尋ね人……??」
この店の常連で冒険者のメトヴェールさんからもたらされた情報に、僕はついにきたか……と逃げ出すための算段を考え始めた。
「違うと思いますが……」
「だよな! 王室からの捜索依頼で顔と名前は似てるが、髪と目の色も違うし、こんなところで貴族令息が薬師をやってるわけないよな!?」
「はは……。ですね。その絵姿はどこで見られますか?」
「ああ。役所や自警団の掲示板に貼られてるぞ」
「そうですか。その人が見つかると良いですね」
「だな」
だとすれば、他の街も似たような状況だろう。メトヴェールさんは誤魔化せたとしても、他の人はどうだかわからない。
国外に逃れるしかないかな。
せっかくこの街にも慣れてきたのにな。
「じゃあ、また来るな」
「ありがとうございました」
僕は明日にでも手続きをして街を出ることにした。
◇
αの王太子。
それが私の肩書きだ。
幼い頃からαの片鱗をのぞかせ、何をしても優秀で、銀髪に淡い紫の瞳の見目も良い私の周りには沢山の人が集った。
私に取り入りたい者や、目をかけられたい者。
時には私の命を狙う者まで。
それらの人達に対処しながら、私は大きくなった。
他人に期待することはなくなったと思っていたのに、運命の番に対しては、多くを望んでしまうんだと分かったのに、その運命の番はほんの僅か話しただけで、私の前から消えてしまった。
あの日、レテュネに会ったあの日。
私は恋仲と噂されているだけの何とも思っていない令嬢を夜会の会場にエスコートして、ダンスを一曲だけ踊り会場を出た。
そこでレテュネと出会ったのだ。
廊下に良い匂いが充満していて、私は出所を探った。
香りを辿って、目についたのが赤い顔をしたレテュネだった。
私は声をかけて、私の部屋で休むように促した。
私もレテュネのフェロモンに触発されて身体が熱かったし、早く二人きりになりたかった。
「私達は運命の番だと思うのですが……」
「そう、でしょうか?」
「はい。レテュネは感じませんか?」
「それはその……なんというか……。そういえば、馬車に忘れ物をしてしまいました。取りに行ってもよろしいでしょうか?」
「体調は大丈夫ですか? 何を忘れたか教えてもらえれば、侍従に取りに行かせますが」
「いえ。体調は平気なので、自分で取りに行きたいのですが……」
そう言いながらも荒い呼吸をしてるレテュネは辛そうなのに、その後も頑なに馬車に行きたがった。
私は折れて、レテュネについて行くことにした。
「殿下、ごめんなさい……」
馬車に着いたレテュネは私の手をすり抜けて、扉を閉め、そのまま走り去ってしまった。
私は呆然としたまま追いかける事も出来ず、次の日になってからレテュネの家に遣いを送ったのだが、レテュネはもう行方不明でいなくなっていた。
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