運命に逃げられたαは、それでも運命を諦められない

hina

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国境の門で入国審査を受けるために長蛇の列に並ぶ。
フードを目深にかぶり、あまり顔を見られないようにしていたのだが、いざ自分の番になった時、それは無駄なのだと思い知らされた。

「次の方! フードを取って顔を良く見せて下さい」
「あ、はい……」
「テューネ・ハールド……。テューネさん、少しよろしいですか?」
「え、あ、あの……何か不備がありました?」
「いえ、確認したいことが少々」

そして僕は門の中の小部屋に連れられた。

「こちらでお待ち下さい」
「はい……」

確認の際に見せた身分証はギルドで作ったものだ。
世界のどこでも使える。

本当の誕生日などは記載してないけど、魔法である程度わかってしまうので、引っかからないように近いものにはしている。


それでは不十分だったか……ひやひやしながら何を確認されるんだろうと、椅子に座って待っていたら、部屋の外から嗅いだことのある良い匂いがしてきた。

どこで嗅いだんだっけ……と思い返していると、扉が開いて、僕は驚きながらその人を見上げた。

王太子、殿下……。


「あ……」
「レテュネ!!」
「レテュネ……? って誰ですか? 僕はテューネという名の一般市民で……」
「レテュネ、フェロモンを誤魔化せると思っているのかい?」
「う……」

強い抑制剤を飲んでるにも関わらず、発情し出す身体を持て余しながら、抱き締めてくる腕を必死に剥がそうとしたけど、徒労に終わる。

「レテュネ、私の運命。探したんだよ。みんな待っている。帰ろう」
「僕、僕は……」

涙が次から次に出てきて、それ以上は言えなかった。

「大丈夫だよ。みんな心配しているだけだから」

僕は首を振って意思を示した。それで伝わったかは定かじゃないけれど……。

泣いてしまったのは、張り詰めていた緊張がゆるんでしまいながらも、これからの不安も押し寄せて、軽く混乱してまったせいだと思うけど、力強い殿下の腕は容赦なく僕を抱き上げてしまう。

「行くよ、レテュネ。発情してるし、これ以上ここには居られない」


それから殿下は門番に声をかけ、門の中の一室にそなえられた転移陣で王都の城まで僕を連れ帰ってしまった。
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