君が好き。

hina

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それからはとくにトラブルもなく、カイルは用を終えたのか帰ろうかと聞いてきた。

「そうですね。帰ってゆっくりしたいです」
「独りのアパートに帰して大丈夫か……しばらく私の家に来ないか?」
「え、なんでですか? 戸締まりはちゃんとしてますし、アパートに問題はないはずですが……」
「独りにしたくないんだ。レイリアの腕を掴んだあの男がもしレイリアに執着していたらと考えたら……」
「ま、まさか。考えすぎですって。捨て台詞を残して去って行ったじゃないですか」
「だがな……」

僕は心配するカイルを説得しきれず、しばらくカイルの私邸にお世話になることになってしまった。




「ふぁ~……よく寝た……」

大きなふかふかのベッドで目覚め、僕は上半身を起こしのびをした。
窓の外は晴れ。気持ちいい朝だ。

「おはよう、レイリア」
「うわあ!? いつからそこに!?」

ベッドサイドの椅子に腰掛けたカイルが、にこやかに僕に声をかけてきた。

「三十分くらい前かな」
「僕の寝顔を見つめるのはやめて下さい。帰りますよ!?」
「ごめん。帰らないでくれ」
「僕、いつまでここにいれば……?」
「あの男の動向を探っているから、危険がないとわかるまではうちにいて欲しい」
「はぁ……」
「送り迎えは馬でするから、迎えは私が行くまで店の中で待てるようにしていてくれ」
「……わかりました」

正直、そこまでしなくても平気なんじゃないかと思うけど、カイルの心遣いを無碍にも出来ない。
僕に危機感が足りないのは、実体験を通してよく分かったし。

「それから、結婚したらベッドは一つにしよう」
「は!?」

なんで朝から爆弾を放り投げてくるのか、理解に苦しむのは仕方ないだろう。

僕、この家にいて大丈夫だろうか。
やっぱりあの男よりもカイルが一番危ないような気がする。
物凄く不安だけど、カイルを信じるしかなさそうだ。
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