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第二章 元〈防国姫〉のヒーラーライフ
第十三話 襲い来る危険の予兆
「本当に申し訳ございません。重ね重ね、お詫び申し上げます。アメリアさまの現状を知らなかったとはいえ、あのような勝手なお願いをしてしまって」
突然、私の隣に座っていた村長さんが頭を下げてきた。
私は村長さんの顔色を確認する。
普段からお酒を飲まない私でもわかる。
今の村長さんは、かなりお酒が回って酔っていた。
顔が先ほどよりも赤くなっていることと、1度はメリダの家で終わった話をまたぶり返してきたのがその証拠だ。
「いえいえ、どうぞお気になさらずに」
などと乾いた笑顔とともに答えた私は、村内の広場の一角に村長さんと横並びに座っている。
座っているといっても、この村には椅子という上等なものはないという。
なので村長さんは地面の上に敷かれた茣蓙の上に胡坐になり、一方の私は上等な布を何枚も重ねてくれた上に正座をしていた。
当然だけど私の従者であるリヒトも傍にいる。
だけど座ってはいない。
リヒトは目つきを鋭くさせ、私の斜め後ろに両手を組んで佇んでいた。
まるで悪漢を取り締まろうとする騎士の態度だ。
そんなリヒトに私は宴会が始まったときから「一緒に座りましょう」と提案していたのだけど、リヒトは何度も私の誘いを丁重に断っている。
理由は主人と同じ上座には座れないことと、もしも私に何かあった場合に立っていたほうがすぐに対処できるからだという。
リヒトが言う何かとは、村長さんが私に頼んだことにも絡んでいるらしい。
ふむ、と私は広場の様子を見回した。
すでに村の周辺は暗闇に包まれているが、広場の中心には巨大な篝火が焚かれ、その篝火の周りを村人たちが楽しそうに踊り回っている。
踊っている男の人たちは木彫りの面を被り、踊っていない女や子供たちはリズミカルに笛や太鼓を鳴らして宴会を盛り上げていた。
これほどの規模の宴会は新年のときにしかやらないらしいが、私からの村全体に対する臨時収入があまりにも嬉しかったので開いたという。
そんな宴会も始まってからどれぐらい経っただろうか。
私は隣にいる村長さんに顔を戻す。
村長さんが先ほどから私に謝罪していた理由は、今の私は〈防国姫〉の任を解かれて〈放浪医師〉となったことを知らず、しかも〈防国姫〉の具体的な詳細も知らずに勝手なお願いをしたのを知ったからだった。
――〈防国姫〉さま、どうかこの村を魔物のような凶悪な野伏せりどもからお助けください!
メリダの家でこの言葉を聞いたときは、さすがの私も驚きを隠せなかった。
カスケード王国の領地内に住んでいる者ならば、たとえ1度も顔を見なくとも〈防国姫〉という名前は必ず耳にする。
特に王都だと〈防国姫〉に関する正確な情報が手に入るのは周知の事実。
王宮の結界部屋にある主核の魔力水晶石に〈防国姫〉が持つ特殊な魔力を流し込むと、それが王都内の各主要の教会内にある別の魔力水晶石に流れ込み、王都内に蔓延る強力な魔素を無害化する。
そして各教会内の魔力水晶石に魔力が満たされると、今度はさらに王都から離れた辺境に配置されている別の魔力水晶石に魔力が流れ、国全体の魔素を無害化する結界が張られる。
この人間の体内で起きている免疫システムのような仕事をするのが、〈防国姫〉と呼ばれるフィンドラル家の一部の女子に与えられた重要な役目だった。
そしてこのような情報は、王都に住んでいる者ならば貧困街の人間たちでも当たり前のように知っていることだ。
しかし、王都から離れると〈防国姫〉の情報に曖昧さが出てくる。
このフタラ村の村民たちもそうだった。
王都から離れた山中にあるような村々だと、王都の経済状況や〈防国姫〉に関する情報を聞く手段はかなり限られてしまう。
ほぼすべての情報経路は巡回行商人や旅人たちで、その巡回行商人や旅人たちがまともな情報を持っていなければ、王都に関する様々な情報が湾曲して伝えられてしまうのだ。
〈防国姫〉に関することなど特にである。
国全体を滅亡に導くほどの魔素による疫病の蔓延を阻止するのが〈防国姫〉なのだが、このフタラ村の人たちは〈防国姫〉を疫病ではなく凶悪な魔物や悪漢どもを退治するお姫さまだと誤解していたのだ。
しかも村長は私が〈防国姫〉の任を解かれた人間だと知らず、ここ最近になって各近辺の村々に出没するようなった野伏せりたちを成敗して欲しいと願い出てきたのである。
あのとき、私はその依頼をやんわりと断った。
私は戦闘に特化している冒険者や傭兵ではない。
医療行為に特化している医師だ。
現に私はカスケード医師会の正式な医師免許も持っている。
〈防国姫〉になる前に専門の医療機関で取得していたのだ。
だからこそ〈防国姫〉の解任、婚約破棄、王宮追放、実家からの勘当と度重なる不幸があってもすぐに〈放浪医師〉として人生の再スタートを踏めたのである。
まあ、それはさておき。
「ですが、村長さん。その魔物のような野伏せりとは一体――」
何者たちなんですか、と私がたずねようとしたときだ。
広場の端から「アメリアさま」とメリダが近づいてきた。
手にはお盆を持ち、そのお盆の上には皿が何枚も乗っている。
「お食事ができましたので、どうぞお召し上がりください」
メリダが持ってきてくれたのは、肉と豆類が入ったスープだ。
「ありがとう。いただくわ」
私はスープの入った皿を受け取った。
メリダは嬉しそうに笑うと、村長さんとリヒトにもスープの入った皿を渡す。
「どう? あれから足は何ともない?」
「はい、とても調子がいいです。他の人たちもアメリアさまには感謝していますよ。アメリアさまはこの村を救ってくれた女神さまだって」
「大げさね。私はただ〈放浪医師〉としてできることをしただけよ」
「いいえ、大げさではありません」
不意に話に割って入ってきたのはリヒトだ。
「お嬢さまはもう少しご自身の力に自信を持つべきです。お嬢さまがその気になれば、たとえ〈防国姫〉でなくともこの国を救えるほどの力をお持ちなのですから」
「そ、それはどういったことで?」
訊き返してきたのは村長さんである。
「何でもです。お嬢さまの持つ力は特別ですから、それこそ病気どころか悪事を働く人間どもも治療できます」
なぜか私ではなくリヒトが自信満々に答える。
私の特別な力とは、あの〈魔力手術〉のことを言っているのだろう。
そしてリヒトが口にした悪事を働く人間を治療するとは、そのまま病気や怪我を治すという意味ではなく、もっと殺伐とした意味として使ったことを私は察した。
だから、私の〈魔力手術〉はそんなことに使わないわよ。
と、リヒトに文句を言おうとしたときである。
村の入り口の物見櫓から甲高い鐘の音が鳴り響いた。
けたたましい鐘の音を聞いた村人たちは一斉に静まり返る。
そして――。
「野伏せりだ! 野伏せりの奴らが来たぞ!」
広場に緊張と激震が走った。
突然、私の隣に座っていた村長さんが頭を下げてきた。
私は村長さんの顔色を確認する。
普段からお酒を飲まない私でもわかる。
今の村長さんは、かなりお酒が回って酔っていた。
顔が先ほどよりも赤くなっていることと、1度はメリダの家で終わった話をまたぶり返してきたのがその証拠だ。
「いえいえ、どうぞお気になさらずに」
などと乾いた笑顔とともに答えた私は、村内の広場の一角に村長さんと横並びに座っている。
座っているといっても、この村には椅子という上等なものはないという。
なので村長さんは地面の上に敷かれた茣蓙の上に胡坐になり、一方の私は上等な布を何枚も重ねてくれた上に正座をしていた。
当然だけど私の従者であるリヒトも傍にいる。
だけど座ってはいない。
リヒトは目つきを鋭くさせ、私の斜め後ろに両手を組んで佇んでいた。
まるで悪漢を取り締まろうとする騎士の態度だ。
そんなリヒトに私は宴会が始まったときから「一緒に座りましょう」と提案していたのだけど、リヒトは何度も私の誘いを丁重に断っている。
理由は主人と同じ上座には座れないことと、もしも私に何かあった場合に立っていたほうがすぐに対処できるからだという。
リヒトが言う何かとは、村長さんが私に頼んだことにも絡んでいるらしい。
ふむ、と私は広場の様子を見回した。
すでに村の周辺は暗闇に包まれているが、広場の中心には巨大な篝火が焚かれ、その篝火の周りを村人たちが楽しそうに踊り回っている。
踊っている男の人たちは木彫りの面を被り、踊っていない女や子供たちはリズミカルに笛や太鼓を鳴らして宴会を盛り上げていた。
これほどの規模の宴会は新年のときにしかやらないらしいが、私からの村全体に対する臨時収入があまりにも嬉しかったので開いたという。
そんな宴会も始まってからどれぐらい経っただろうか。
私は隣にいる村長さんに顔を戻す。
村長さんが先ほどから私に謝罪していた理由は、今の私は〈防国姫〉の任を解かれて〈放浪医師〉となったことを知らず、しかも〈防国姫〉の具体的な詳細も知らずに勝手なお願いをしたのを知ったからだった。
――〈防国姫〉さま、どうかこの村を魔物のような凶悪な野伏せりどもからお助けください!
メリダの家でこの言葉を聞いたときは、さすがの私も驚きを隠せなかった。
カスケード王国の領地内に住んでいる者ならば、たとえ1度も顔を見なくとも〈防国姫〉という名前は必ず耳にする。
特に王都だと〈防国姫〉に関する正確な情報が手に入るのは周知の事実。
王宮の結界部屋にある主核の魔力水晶石に〈防国姫〉が持つ特殊な魔力を流し込むと、それが王都内の各主要の教会内にある別の魔力水晶石に流れ込み、王都内に蔓延る強力な魔素を無害化する。
そして各教会内の魔力水晶石に魔力が満たされると、今度はさらに王都から離れた辺境に配置されている別の魔力水晶石に魔力が流れ、国全体の魔素を無害化する結界が張られる。
この人間の体内で起きている免疫システムのような仕事をするのが、〈防国姫〉と呼ばれるフィンドラル家の一部の女子に与えられた重要な役目だった。
そしてこのような情報は、王都に住んでいる者ならば貧困街の人間たちでも当たり前のように知っていることだ。
しかし、王都から離れると〈防国姫〉の情報に曖昧さが出てくる。
このフタラ村の村民たちもそうだった。
王都から離れた山中にあるような村々だと、王都の経済状況や〈防国姫〉に関する情報を聞く手段はかなり限られてしまう。
ほぼすべての情報経路は巡回行商人や旅人たちで、その巡回行商人や旅人たちがまともな情報を持っていなければ、王都に関する様々な情報が湾曲して伝えられてしまうのだ。
〈防国姫〉に関することなど特にである。
国全体を滅亡に導くほどの魔素による疫病の蔓延を阻止するのが〈防国姫〉なのだが、このフタラ村の人たちは〈防国姫〉を疫病ではなく凶悪な魔物や悪漢どもを退治するお姫さまだと誤解していたのだ。
しかも村長は私が〈防国姫〉の任を解かれた人間だと知らず、ここ最近になって各近辺の村々に出没するようなった野伏せりたちを成敗して欲しいと願い出てきたのである。
あのとき、私はその依頼をやんわりと断った。
私は戦闘に特化している冒険者や傭兵ではない。
医療行為に特化している医師だ。
現に私はカスケード医師会の正式な医師免許も持っている。
〈防国姫〉になる前に専門の医療機関で取得していたのだ。
だからこそ〈防国姫〉の解任、婚約破棄、王宮追放、実家からの勘当と度重なる不幸があってもすぐに〈放浪医師〉として人生の再スタートを踏めたのである。
まあ、それはさておき。
「ですが、村長さん。その魔物のような野伏せりとは一体――」
何者たちなんですか、と私がたずねようとしたときだ。
広場の端から「アメリアさま」とメリダが近づいてきた。
手にはお盆を持ち、そのお盆の上には皿が何枚も乗っている。
「お食事ができましたので、どうぞお召し上がりください」
メリダが持ってきてくれたのは、肉と豆類が入ったスープだ。
「ありがとう。いただくわ」
私はスープの入った皿を受け取った。
メリダは嬉しそうに笑うと、村長さんとリヒトにもスープの入った皿を渡す。
「どう? あれから足は何ともない?」
「はい、とても調子がいいです。他の人たちもアメリアさまには感謝していますよ。アメリアさまはこの村を救ってくれた女神さまだって」
「大げさね。私はただ〈放浪医師〉としてできることをしただけよ」
「いいえ、大げさではありません」
不意に話に割って入ってきたのはリヒトだ。
「お嬢さまはもう少しご自身の力に自信を持つべきです。お嬢さまがその気になれば、たとえ〈防国姫〉でなくともこの国を救えるほどの力をお持ちなのですから」
「そ、それはどういったことで?」
訊き返してきたのは村長さんである。
「何でもです。お嬢さまの持つ力は特別ですから、それこそ病気どころか悪事を働く人間どもも治療できます」
なぜか私ではなくリヒトが自信満々に答える。
私の特別な力とは、あの〈魔力手術〉のことを言っているのだろう。
そしてリヒトが口にした悪事を働く人間を治療するとは、そのまま病気や怪我を治すという意味ではなく、もっと殺伐とした意味として使ったことを私は察した。
だから、私の〈魔力手術〉はそんなことに使わないわよ。
と、リヒトに文句を言おうとしたときである。
村の入り口の物見櫓から甲高い鐘の音が鳴り響いた。
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