29 / 48
第三章 辺境地域の異変の原因
第二十九話 現れた異形のモノ
私たちは逃げ惑う住人たちの間をすり抜けるように走り、街から少し離れた山の麓にある神殿へと向かった。
その途中、私たちは僧侶服を着た何人かの神官たちと遭遇した。
全員が全員ともまともな状態ではなく、神官たちは両目を真っ赤に血走らせながら猛獣のような唸り声を上げて襲ってきた。
そんな神官たちの相手をしたのはリヒトだ。
リヒトは全身に凄まじい魔力をまとわせながら、かつての野伏せりたちのような異常状態になっていた神官たちを次々と戦闘不能にさせていく。
当然ながら殺しは絶対にダメだと事前に言い聞かせていたため、リヒトは相手のアゴを打ち抜いて脳をピンポイントで揺らす不思議な体術を使って神官たちを昏倒させたのだ。
やはり、神官たちは魔力水晶石の〈魔素〉の影響を受けている。
どれだけの異常状態の神官たちがいるのかはわからないが、オクタの現状を見るに数十人はいるだろう。
だとすると、街中で暴れている神官たちを無力化させている暇はなかった。
一刻も早く魔力水晶石の異常を止めなくては、さらなる未曽有の被害になりかねない。
私はリヒトが昏倒させた神官たちもそうだが、怪我をしている住人たちを視界に捉えながら激しく歯噛みした。
本当ならば怪我をした住人たちを根こそぎ治療したい。
でも、そうしている間に被害は加速度的に増していき、何も根本的な処置をしなければあと1時間もしないうちに街の外へも被害が出てしまうだろう。
それだけは絶対に避けなくては。
私はすべてが終わったら住人たちの怪我を治療をすると決意しながら、リヒトと同じく全身に魔力をまとわせた状態で全力疾走していく。
やがて私たちは緩やかな坂を駆け上り、石造りの神殿へと辿り着いた。
ここまで来ると神官たちの姿はなかった。
おそらく、すべての神官たちは街へと向かったのだろう。
となると、今の神殿はもぬけの殻の可能性が高い。
絶好の機会と言えば機会である。
神殿に誰もいないのならば、魔力水晶石の機能を正常に戻す作業に集中できる。
私も元〈防国姫〉だ。
魔術技師庁の魔術技師ほどの知識と腕前は持っていないが、魔力水晶石の最低限のメンテナンスぐらいはできる。
ただし、その効果は以て数日かそれぐらいだ。
それ以上の日数が経ってしまえば、再び魔力水晶石は異常な状態に戻ってしまうだろう。
けれど、裏を返せば数日は時間を稼げるということだ。
数日の間でも正常な状態に戻っているのなら、オクタの住人の怪我や正常な状態に戻した神官たちに事情を説明して遠くへと避難を促せる。
そして私たちはその間に王都へと戻り、主核の魔力水晶石に魔力を与えて本来の機能を取り戻させる。
その際にアントンさまやミーシャの妨害があるかもしれないが、たとえそうなっても私は1度でも〈防国姫〉となった者として、このカスケード王国を救うために身命を賭す覚悟だ。
などと思いながら、私は神殿の中へと足を踏み入れた。
「こ、これは……」
私は神殿の内部ホールを見て驚愕した。
神殿の内部ホールには王都の兵隊たちが倒れていたのだ。
その数は20人ぐらいだろうか。
全員の脈拍を診なくてもすぐにわかった。
兵隊たちは全員とも死亡している。
「こ、これもさっきの神官さんたちがしたことでしょうか?」
そう誰にでもなく言ったのはメリダだ。
「そうだ……とは言い切れないな。この兵士たちの死に方はオクタの住人たちの死体とは違う。この兵士たちの死体には目立った外傷がない。まるで魂を奪われたような表情のまま死んでいる」
リヒトの見立てに私もうなずいた。
それは私も思ったことだ。
おそらく、この兵隊たちの死因はショック死だろう。
けれどもこれは大量に出血したことによる出血性ショック死ではなく、1度に大量の魔力を消費したことによる出魔性ショック死だ。
滅多に見ない症状である。
王立魔法学院の授業中で生徒が無理に魔力を消費してしまったことでなったり、冒険者に所属したばかりの魔法使いが実戦の恐怖から大量の魔力を消費して魔法を使ったことで起こる場合が多い。
では、この兵隊たちも出魔性ショック死を起こすほどの魔力を使ったのか?
いや、と私は首を左右に振った。
神官の役職を得た者たちがそんなことをするはずがない。
もしも他にあり得るとすれば、今ほどリヒトが言ったように誰かが……。
そんなことを考えた矢先のことだ。
「お嬢さま、メリダ」とリヒトが口調を強張らせて言った。
それだけではない。
リヒトは私たちを庇うように自身の身体を移動させた。
まるで凶悪な魔物の盾になるべく、私たちを守るように。
「グルルルルルルッ!」
一方のアンバーもそうだった。
ゾッとするほどの唸り声を上げ、神殿の奥を睨みつけている。
「ケヒケヒケヒケヒケヒケヒ」
直後、神殿の奥から不気味な笑い声を発する何かが現れた。
同時にムワっとする異臭が漂ってくる。
「お嬢さま、下がっていてください」
全身にまとわせていた魔力をさらに高めたリヒト。
アンバーも今にも飛び掛かりそうなほど唸り声を強める。
「み、み、み……そ、ソコニに……い、イ、いる……ノか」
「か、か、か、神ヨ……わ、ワタシは……あ、アナタの……下僕でス」
私は大きく目を見開いた。
私の視界に、ズルズルと動く異形のモノの姿が飛び込んできたのだ。
人間の肉をグチャグチャにこねて丸めたような、血みどろの肉塊の姿がである。
そして、その肉塊からは2つの生首が生え出ていた。
金髪の青年と、白髪の老人の首が綺麗に並んだ状態で――。
その途中、私たちは僧侶服を着た何人かの神官たちと遭遇した。
全員が全員ともまともな状態ではなく、神官たちは両目を真っ赤に血走らせながら猛獣のような唸り声を上げて襲ってきた。
そんな神官たちの相手をしたのはリヒトだ。
リヒトは全身に凄まじい魔力をまとわせながら、かつての野伏せりたちのような異常状態になっていた神官たちを次々と戦闘不能にさせていく。
当然ながら殺しは絶対にダメだと事前に言い聞かせていたため、リヒトは相手のアゴを打ち抜いて脳をピンポイントで揺らす不思議な体術を使って神官たちを昏倒させたのだ。
やはり、神官たちは魔力水晶石の〈魔素〉の影響を受けている。
どれだけの異常状態の神官たちがいるのかはわからないが、オクタの現状を見るに数十人はいるだろう。
だとすると、街中で暴れている神官たちを無力化させている暇はなかった。
一刻も早く魔力水晶石の異常を止めなくては、さらなる未曽有の被害になりかねない。
私はリヒトが昏倒させた神官たちもそうだが、怪我をしている住人たちを視界に捉えながら激しく歯噛みした。
本当ならば怪我をした住人たちを根こそぎ治療したい。
でも、そうしている間に被害は加速度的に増していき、何も根本的な処置をしなければあと1時間もしないうちに街の外へも被害が出てしまうだろう。
それだけは絶対に避けなくては。
私はすべてが終わったら住人たちの怪我を治療をすると決意しながら、リヒトと同じく全身に魔力をまとわせた状態で全力疾走していく。
やがて私たちは緩やかな坂を駆け上り、石造りの神殿へと辿り着いた。
ここまで来ると神官たちの姿はなかった。
おそらく、すべての神官たちは街へと向かったのだろう。
となると、今の神殿はもぬけの殻の可能性が高い。
絶好の機会と言えば機会である。
神殿に誰もいないのならば、魔力水晶石の機能を正常に戻す作業に集中できる。
私も元〈防国姫〉だ。
魔術技師庁の魔術技師ほどの知識と腕前は持っていないが、魔力水晶石の最低限のメンテナンスぐらいはできる。
ただし、その効果は以て数日かそれぐらいだ。
それ以上の日数が経ってしまえば、再び魔力水晶石は異常な状態に戻ってしまうだろう。
けれど、裏を返せば数日は時間を稼げるということだ。
数日の間でも正常な状態に戻っているのなら、オクタの住人の怪我や正常な状態に戻した神官たちに事情を説明して遠くへと避難を促せる。
そして私たちはその間に王都へと戻り、主核の魔力水晶石に魔力を与えて本来の機能を取り戻させる。
その際にアントンさまやミーシャの妨害があるかもしれないが、たとえそうなっても私は1度でも〈防国姫〉となった者として、このカスケード王国を救うために身命を賭す覚悟だ。
などと思いながら、私は神殿の中へと足を踏み入れた。
「こ、これは……」
私は神殿の内部ホールを見て驚愕した。
神殿の内部ホールには王都の兵隊たちが倒れていたのだ。
その数は20人ぐらいだろうか。
全員の脈拍を診なくてもすぐにわかった。
兵隊たちは全員とも死亡している。
「こ、これもさっきの神官さんたちがしたことでしょうか?」
そう誰にでもなく言ったのはメリダだ。
「そうだ……とは言い切れないな。この兵士たちの死に方はオクタの住人たちの死体とは違う。この兵士たちの死体には目立った外傷がない。まるで魂を奪われたような表情のまま死んでいる」
リヒトの見立てに私もうなずいた。
それは私も思ったことだ。
おそらく、この兵隊たちの死因はショック死だろう。
けれどもこれは大量に出血したことによる出血性ショック死ではなく、1度に大量の魔力を消費したことによる出魔性ショック死だ。
滅多に見ない症状である。
王立魔法学院の授業中で生徒が無理に魔力を消費してしまったことでなったり、冒険者に所属したばかりの魔法使いが実戦の恐怖から大量の魔力を消費して魔法を使ったことで起こる場合が多い。
では、この兵隊たちも出魔性ショック死を起こすほどの魔力を使ったのか?
いや、と私は首を左右に振った。
神官の役職を得た者たちがそんなことをするはずがない。
もしも他にあり得るとすれば、今ほどリヒトが言ったように誰かが……。
そんなことを考えた矢先のことだ。
「お嬢さま、メリダ」とリヒトが口調を強張らせて言った。
それだけではない。
リヒトは私たちを庇うように自身の身体を移動させた。
まるで凶悪な魔物の盾になるべく、私たちを守るように。
「グルルルルルルッ!」
一方のアンバーもそうだった。
ゾッとするほどの唸り声を上げ、神殿の奥を睨みつけている。
「ケヒケヒケヒケヒケヒケヒ」
直後、神殿の奥から不気味な笑い声を発する何かが現れた。
同時にムワっとする異臭が漂ってくる。
「お嬢さま、下がっていてください」
全身にまとわせていた魔力をさらに高めたリヒト。
アンバーも今にも飛び掛かりそうなほど唸り声を強める。
「み、み、み……そ、ソコニに……い、イ、いる……ノか」
「か、か、か、神ヨ……わ、ワタシは……あ、アナタの……下僕でス」
私は大きく目を見開いた。
私の視界に、ズルズルと動く異形のモノの姿が飛び込んできたのだ。
人間の肉をグチャグチャにこねて丸めたような、血みどろの肉塊の姿がである。
そして、その肉塊からは2つの生首が生え出ていた。
金髪の青年と、白髪の老人の首が綺麗に並んだ状態で――。
あなたにおすすめの小説
役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜
腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。
絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。
しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身!
「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」
シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
偽聖女と蔑まれた私、冷酷と噂の氷の公爵様に「見つけ出した、私の運命」と囚われました 〜荒れ果てた領地を力で満たしたら、とろけるほど溺愛されて
放浪人
恋愛
「君は偽物の聖女だ」——その一言で、私、リリアーナの人生は転落した。 持っていたのは「植物を少しだけ元気にする」という地味な力。華やかな治癒魔法を使う本物の聖女イザベラ様の登場で、私は偽物として王都から追放されることになった。
行き場もなく絶望する私の前に現れたのは、「氷の公爵」と人々から恐れられるアレクシス様。 冷たく美しい彼は、なぜか私を自身の領地へ連れて行くと言う。
たどり着いたのは、呪われていると噂されるほど荒れ果てた土地。 でも、私は諦めなかった。私にできる、たった一つの力で、この地を緑で満たしてみせる。
ひたむきに頑張るうち、氷のように冷たかったはずのアレクシス様が、少しずつ私にだけ優しさを見せてくれるように。 「リリアーナ、君は私のものだ」 ——彼の瞳に宿る熱い独占欲に気づいた時、私たちの運命は大きく動き出す。
偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない
こもど
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」
その“正義”が、王国を崩しかけた。
王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、
婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。
だが――
たとえそれが事実であったとしても、
それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。
貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。
それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。
「世界は、残酷で不平等なのです」
その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、
王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。
婚約破棄は恋愛劇では終わらない。
それは、国家が牙を剥く瞬間だ。
本作は、
「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」
「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」
そんな現実を、徹底して描く。
――これは、ざまぁではない。
誰も救われない、残酷な現実の物語である。
※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。
学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、
権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。
---