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最終章 最高の仲間たちと一国への治療行為
第四十一話 アメリア・フィンドラルの言動 ③
もはや言葉は不要だった。
死体の山の上に立っているのは、間違いなくミーシャだ。
それもオクタの神殿で見たような、異形のモノと化した私の実の妹である。
だが、理由がわからない。
一体、何が原因であんな姿になったのだろう?
「わかりましたよ、お姉さま」
表情から私の心を読み取ったのだろうか。
下腹に響くような声でミーシャは言った。
「あなたと同じ〈防国姫〉になったことで、魔力水晶石がどうやって国を守っているのかわかりました」
私は頭上に疑問符を浮かべる。
「そんなことは〈防国姫〉じゃなくても皆知っているわ。カスケード国を守るように存在している魔力水晶石たちが、魔力を媒介にして国外から入ろうとしてくる〈魔素〉などを防いでくれる結界装置だからよ」
「違いますよ、それは単なる方便に過ぎません」
私はますます疑問符を大きくさせた。
あの異形と化したミーシャの言っている意味が理解できない。
「魔力水晶石は大昔に造られた浄化装置なのですよ。人間を含めた天地万物には量はともかく魔力があり、それを媒介にした魔法も存在している。ですが、どんな清浄な水でも循環させなければ濁ってしまうように、魔力を使い続ければ同時に〈魔素〉が発生する。その〈魔素〉を内側から吸収し、外側へと流すようにする……それが魔力水晶石の本来の機能なのです」
私は瞠目した。
「そ、そんなことは聞いたことないわ」
先代の〈防国姫〉さまからも、今のようなことを教えられたことはない。
「当たり前ですよ。なぜなら、これは主核の魔力水晶石の〈魔素〉を浴びたからこそわかったことなのです。ちなみに〈防国姫〉は、その〈魔素〉の循環をもっともスムーズにさせる役目を担った特別な女だったのです。ただ、下手をすれば主核の魔力水晶石の〈魔素〉を身近で大量に浴びる可能性もあるため、当初は生贄の意味もあって当時の男爵家――フィンドラル家の女から選ばれた」
ミーシャの言葉は続く。
「やがてその心配がなくなるほど長い年月が経ったあと、〈防国姫〉の役目が評価されたこともあって〈防国姫〉に選ばれたフィンドラル家の女は王宮入りするぐらいまで名が通った家柄となった。けれど、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こし、一番身近で大量に〈魔素〉を浴びる可能性の高い〈防国姫〉が豹変してしまう恐れは王族に語り継がれた。だからこそ、いざというときはフィンドラル家ごと消してしまおうという王族の考えが残っており、それがフィンドラル家が未だに爵位の低い男爵家のままである理由だと」
「そ、それをあなたはどうやって知ったの?」
まるでミーシャは舞台上の役者のようにスラスラと喋った。
自分で調べたというよりは、記憶を植え付けられたような感じがする。
ミーシャは「はあ」とため息を吐く。
「今も言ったじゃありませんか。主核の魔力水晶石ですよ。わたしは主核の魔力水晶石から流れ出た大量の〈魔素〉を浴びたことにより、すべてを知ったのです。この国の裏の歴史を。それだけじゃありません。わたしは本来ならば〈魔素〉によって心身をやられて異形と化してしまう者と違って、〈魔素〉を浴びても完璧に意思を保ったまま力を操れる存在となった。これは〈防国姫〉なんかよりもはるかに優れたことを意味している」
ミーシャは高らかに笑った。
それは背筋が凍りつくほどの笑いであり、もしもここに常人のメリダがいればあまりのおぞましさに失神していただろう。
「お嬢さま、あんな狂言に騙されていけません。もうあの者はミーシャではありません。ミーシャの姿かたちをした魔物に等しい……いいえ、それ以上の怪物です」
失敬ね、とミーシャは暗く微笑む。
「この神に等しい力を手に入れたわたしに対して、魔物だの怪物だのなんて無礼極まりないわ。リヒト、あなたはお姉さまの前に殺すつもりだったけど気が変わった。あなたの四肢を切り落として東国のダルマみたいな状態にしたあと、あなたの目の前でお姉さまをじっくりゆっくり殺してあげる」
ミーシャはペロリと舌なめずりをした。
「そのとき、あなたはどんな顔をするのかしらね? 泣き叫びながら「止めてくれ」と懇願するのかしら? それとも「俺を先に殺せ」とかダサイ台詞の1つや2つ吐くのかしら……うふふふ、どちらにせよ楽しみだわ」
現在、ミーシャの全身も血だらけである。
自分の血か他人の血かはわからないが、妖艶な顔で口元の血を舐めとるなど異常を通り越して狂気の行動である。
やはり、リヒトの言うほうが正しい。
あれはもうミーシャじゃない。
ミーシャの姿かたちをしている魔物以上の存在の何かだ。
もしかすると、本物のミーシャの人格はとっくに消えてしまっているのではないか。
あれは本物のミーシャではなく、大量の〈魔素〉を浴びたことで生まれた別人格という可能性もある。
あの意味のない死体の山を築いたように、ただ殺戮だけを求める狂神の別人格に。
真相はわからない。
しかし、そう考えるとこの状況が生み出された辻褄が合う。
そして、あの狂神のミーシャは私たちが主核の魔力水晶石の元へ向かことを許さないだろう。
当然ながら全力で止めにくるはずだ。
すなわち、私たちを全身全霊で殺しにくる。
そう思った直後、私は全身に魔力をまとわせた。
細かな部分まで神経を研ぎ澄ませ、ほんのわずかな魔力も垂れ流さないように完璧に全身にまとわせていく。
そうすると心身が凄まじく安定してくる。
下腹がじんと熱くなり、重心が地面のはるか下にまで落ちるような感覚も込み上げてくる。
不意に隣から燃え盛る炎のような力強い魔力を感じた。
私が顔を向けると、隣にいたリヒトも私と同じく全身に魔力をまとわせていた。
リヒトも私の同じく、いやそれ以上の臨戦態勢に入ったのだ。
互いに言葉を交わさずとも理解した。
主格魔力水晶石の元へ向かうためには、あの狂神のミーシャを無力化しなければならないと。
「あらあらあら、リヒトだけではなくお姉さまもやる気なんですか。だったら仕方ありませんね」
狂神のミーシャは、足元の死体を踏み台にして高らかに飛んだ。
そして――。
「2人仲良く地獄に送ってあげますよ!」
凶悪な殺意の塊が暴風のように襲ってきた。
死体の山の上に立っているのは、間違いなくミーシャだ。
それもオクタの神殿で見たような、異形のモノと化した私の実の妹である。
だが、理由がわからない。
一体、何が原因であんな姿になったのだろう?
「わかりましたよ、お姉さま」
表情から私の心を読み取ったのだろうか。
下腹に響くような声でミーシャは言った。
「あなたと同じ〈防国姫〉になったことで、魔力水晶石がどうやって国を守っているのかわかりました」
私は頭上に疑問符を浮かべる。
「そんなことは〈防国姫〉じゃなくても皆知っているわ。カスケード国を守るように存在している魔力水晶石たちが、魔力を媒介にして国外から入ろうとしてくる〈魔素〉などを防いでくれる結界装置だからよ」
「違いますよ、それは単なる方便に過ぎません」
私はますます疑問符を大きくさせた。
あの異形と化したミーシャの言っている意味が理解できない。
「魔力水晶石は大昔に造られた浄化装置なのですよ。人間を含めた天地万物には量はともかく魔力があり、それを媒介にした魔法も存在している。ですが、どんな清浄な水でも循環させなければ濁ってしまうように、魔力を使い続ければ同時に〈魔素〉が発生する。その〈魔素〉を内側から吸収し、外側へと流すようにする……それが魔力水晶石の本来の機能なのです」
私は瞠目した。
「そ、そんなことは聞いたことないわ」
先代の〈防国姫〉さまからも、今のようなことを教えられたことはない。
「当たり前ですよ。なぜなら、これは主核の魔力水晶石の〈魔素〉を浴びたからこそわかったことなのです。ちなみに〈防国姫〉は、その〈魔素〉の循環をもっともスムーズにさせる役目を担った特別な女だったのです。ただ、下手をすれば主核の魔力水晶石の〈魔素〉を身近で大量に浴びる可能性もあるため、当初は生贄の意味もあって当時の男爵家――フィンドラル家の女から選ばれた」
ミーシャの言葉は続く。
「やがてその心配がなくなるほど長い年月が経ったあと、〈防国姫〉の役目が評価されたこともあって〈防国姫〉に選ばれたフィンドラル家の女は王宮入りするぐらいまで名が通った家柄となった。けれど、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こし、一番身近で大量に〈魔素〉を浴びる可能性の高い〈防国姫〉が豹変してしまう恐れは王族に語り継がれた。だからこそ、いざというときはフィンドラル家ごと消してしまおうという王族の考えが残っており、それがフィンドラル家が未だに爵位の低い男爵家のままである理由だと」
「そ、それをあなたはどうやって知ったの?」
まるでミーシャは舞台上の役者のようにスラスラと喋った。
自分で調べたというよりは、記憶を植え付けられたような感じがする。
ミーシャは「はあ」とため息を吐く。
「今も言ったじゃありませんか。主核の魔力水晶石ですよ。わたしは主核の魔力水晶石から流れ出た大量の〈魔素〉を浴びたことにより、すべてを知ったのです。この国の裏の歴史を。それだけじゃありません。わたしは本来ならば〈魔素〉によって心身をやられて異形と化してしまう者と違って、〈魔素〉を浴びても完璧に意思を保ったまま力を操れる存在となった。これは〈防国姫〉なんかよりもはるかに優れたことを意味している」
ミーシャは高らかに笑った。
それは背筋が凍りつくほどの笑いであり、もしもここに常人のメリダがいればあまりのおぞましさに失神していただろう。
「お嬢さま、あんな狂言に騙されていけません。もうあの者はミーシャではありません。ミーシャの姿かたちをした魔物に等しい……いいえ、それ以上の怪物です」
失敬ね、とミーシャは暗く微笑む。
「この神に等しい力を手に入れたわたしに対して、魔物だの怪物だのなんて無礼極まりないわ。リヒト、あなたはお姉さまの前に殺すつもりだったけど気が変わった。あなたの四肢を切り落として東国のダルマみたいな状態にしたあと、あなたの目の前でお姉さまをじっくりゆっくり殺してあげる」
ミーシャはペロリと舌なめずりをした。
「そのとき、あなたはどんな顔をするのかしらね? 泣き叫びながら「止めてくれ」と懇願するのかしら? それとも「俺を先に殺せ」とかダサイ台詞の1つや2つ吐くのかしら……うふふふ、どちらにせよ楽しみだわ」
現在、ミーシャの全身も血だらけである。
自分の血か他人の血かはわからないが、妖艶な顔で口元の血を舐めとるなど異常を通り越して狂気の行動である。
やはり、リヒトの言うほうが正しい。
あれはもうミーシャじゃない。
ミーシャの姿かたちをしている魔物以上の存在の何かだ。
もしかすると、本物のミーシャの人格はとっくに消えてしまっているのではないか。
あれは本物のミーシャではなく、大量の〈魔素〉を浴びたことで生まれた別人格という可能性もある。
あの意味のない死体の山を築いたように、ただ殺戮だけを求める狂神の別人格に。
真相はわからない。
しかし、そう考えるとこの状況が生み出された辻褄が合う。
そして、あの狂神のミーシャは私たちが主核の魔力水晶石の元へ向かことを許さないだろう。
当然ながら全力で止めにくるはずだ。
すなわち、私たちを全身全霊で殺しにくる。
そう思った直後、私は全身に魔力をまとわせた。
細かな部分まで神経を研ぎ澄ませ、ほんのわずかな魔力も垂れ流さないように完璧に全身にまとわせていく。
そうすると心身が凄まじく安定してくる。
下腹がじんと熱くなり、重心が地面のはるか下にまで落ちるような感覚も込み上げてくる。
不意に隣から燃え盛る炎のような力強い魔力を感じた。
私が顔を向けると、隣にいたリヒトも私と同じく全身に魔力をまとわせていた。
リヒトも私の同じく、いやそれ以上の臨戦態勢に入ったのだ。
互いに言葉を交わさずとも理解した。
主格魔力水晶石の元へ向かうためには、あの狂神のミーシャを無力化しなければならないと。
「あらあらあら、リヒトだけではなくお姉さまもやる気なんですか。だったら仕方ありませんね」
狂神のミーシャは、足元の死体を踏み台にして高らかに飛んだ。
そして――。
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