【完結】宮本武蔵、異世界を斬る! 〜日ノ本の剣聖は異世界に転移しても剣を振るい、女子高生の弟子とともに異世界最強の大剣聖となる~

ともボン

文字の大きさ
59 / 64

第五十九話   底知れぬ伝説の強さ

しおりを挟む
 武蔵は八相はっそうの構えを崩さず、トーガがどう動くのか食い入るように見つめた。

 名乗りを上げた以上、全身全霊ぜんしんぜんれいをもって闘うのが兵法者である。

 だが、自分からは迂闊うかつに動くべきではないと武蔵は思った。

 あまりにも相手の戦力が未知数みちすうすぎるのだ。

 加えてトーガが手にしている、二振りの刀も異様な存在感を放っていた。

 左手に持っていた刀は〈無銘むめい金重かねしげ〉とほぼ同じ長さの大刀だったが、右手に持っていた刀があまりにも目を引く長さの刀だったのだ。

 まるで佐々木小次郎の愛刀――〈備前びぜん長船おさふね長光ながみつ〉を彷彿ほうふつさせる三尺(約90センチ)はあろう長刀ながだちである。

 そしてトーガの長刀ながだちは天理の〈練気化れんきか〉による刀だった。

 自分も天理の〈練気化れんきか〉で刀を顕現けんげんさせたことがあるので分かる。

 重さも実感も本物の刀と変わらない。

 しかしそれは右手で顕現けんげんさせることの出来た、天理の〈練気化れんきか〉による刀だった場合だ。

 武蔵はトーガが持つ右手の長刀ながだちから左手の大刀へと視線を移す。

(なぜ、あやつは右手だけではなく左手で刀を出せる?)

 トーガの左手には間違いなく、が握られている。

 それゆえに武蔵は小首をかしげた。

 左手の掌上しょうじょう顕現けんげんできるのは、水の塊や火の玉などの魔法だけのはずだ。

 武蔵は脳内にルリやアリーゼの姿を思い浮かべた。

 水の塊や火の玉などを左手の掌上しょうじょう顕現けんげんさせた魔法使いたちの姿をである。

 もしかすると、ルリやアリーゼたちも魔法だけではなく武器も顕現けんげんさせることが出来るのだろうか。

 それか天理と魔法を生み出した、トーガ自身が特別なだけかもしれない。

 まあいい、と武蔵はすぐに頭を切り替えた。

 異能の力のことなど、どれだけ考えても無駄だとさとったのだ。

 それよりも武蔵は、目の前で起こっている現実だけに考えを集中させた。

 すなわち――。

(あのような二刀でまともに闘えるのか?)

 そうである。

 本来、二刀の場合は大刀と小刀で扱うものであった。

 軽くて扱いやすい小刀で相手の攻撃を受け流し、相手が体勢を崩したところを大刀で斬る。

 二刀は一刀よりも使いこなすのは難しいものの、使いこなせれば一対一でも一対多でも優れた威力いりょく発揮はっきする剣法なのだ。

 けれども、それは大刀と小刀の二刀流ならばの話である。

 正直なところ、武蔵にはトーガの二刀流は実戦で通用しない見せかけだけの二刀流に見えた。

 左手で大刀を使うのはまだ分かる。

 右手が負傷ふしょうした場合などに、仕方なく左手で大刀を使うこともあるからだ。

 だが、片手で三尺(約90センチ)はある長刀ながだちを使うなど無理があった。

 両手でさえ扱うのが困難な長刀ながだちを、まともに振るうことなどあの天才剣士とうたわれた佐々木小次郎でさえ不可能だろう。

「確かにお前が舟島ふなじま仕果しはたしたときの佐々木小次郎ならば無理だっただろう……しかし、は違うぞ」

 などと意味深いみしんな言葉を言った直後、トーガに明らかな動きがあった。

 トーガは両手にそれぞれ持った長刀ながだちと大刀を下段に構え、散歩するような落ち着いた足取りで歩み寄ってきたのだ。

 武蔵は大刀のつかを握っている両手に力を込めた。

 トーガの歩みには重心の揺れがまったくない。

 しかも長刀ながだちと大刀を手にしていながら、正中線が乱れるということもなかった。

(何が〝もの〟ではない、だ)

 武蔵は奥歯をきしませながら心中で悪態あくたいをついた。

 その一糸乱いっしみだれぬ姿勢と歩みからは十分に感じ取れる。

 トーガは長刀ながだちと大刀を片手で満足に扱えるほどの魔物だということを。

 それゆえに武蔵は決断した。

(後手に回れば確実にやられる。ならば――)

 次の瞬間、武蔵は八相はっそうの構えのまま地面を蹴って猛進もうしんした。

「オオオオオオオオオオオオオ――――ッ!」

 高らかな咆哮ほうこうとともに、一匹の獰猛どうもう剣虎けんこと化した武蔵。

 そんな武蔵とトーガの間合いはまたたく間にちぢまっていく。

 やがて互いの距離が二間にけん(3.6メートル)まで近づいたとき、武蔵は疾風しっぷうの動きを落とさずにトーガの右手側に回り込んでいく。

 たとえトーガが長刀ながだちと大刀の二刀を上手く使えたとしても、片手で三尺(約90センチ)はあろう長刀ながだちを扱う以上は大刀よりも振りは遅いはず。

 などと思ったからこそ、武蔵は長刀ながだちを持っていた右手側に回り込んだ。

 そのまま武蔵はトーガの右斜め後方から間合いを詰め、渾身こんしんの気合とともに袈裟けさに斬り掛かる。

 おそらくトーガは振り向きざまに長刀ながだちぎ払ってくるはずだ。

 武蔵は間合いを詰めながら思った。

 今のトーガの体勢から一番早く反撃できる方法はそれしかない。

 そして、このとき武蔵は自分の勝ちを確信した。

 片手の長刀ながだちと両手の大刀ならば、両手の大刀のほうが必ず斬り勝てるだろうと。

 そう判断した武蔵だったが、すぐにそれはの考えだったと思い知らされることになる。

 トーガは武蔵の必殺の袈裟斬けさぎりに対してあることをした。

 体捌たいさばきを使ってけたのでもない。

 長刀ながだちか大刀のどちらかの刀を使って受けたのでもない。

 トーガは両刀を下段に構えたまま、一歩も動かずに武蔵の袈裟斬けさぎりをそのまま生身の肉体で受けたのだ。

 では、トーガの肉体は骨ごと切り裂かれてしまったのか。

 いなである。

 トーガの肉体は武蔵の斬撃を真っ向からはじき返したのだ。

 そして武蔵の身体ははじかれた刀の勢いによって後方へ吹き飛ばされる。

(何だと!)

 転倒こそしなかったものの、大きく体勢を崩された武蔵は驚愕きょうがくした。

 とても人間の身体を斬ったときの感触ではなかったからだ。

 たとえるなら弾力のある金属の塊である。

「〈硬気功こうきこう〉――〝金剛こんごう〟」

 トーガは顔だけを振り向かせながら言った。

「肉体を一時的にはがねと同じ強度にまで高められる〈硬気功こうきこう〉だが、その技の性質上において欠点も存在している」

 続いてトーガはゆっくりと身体も振り向かせた。

「それは技に集中するあまり動きが激しく制限されてしまうことと、死角から狙われた場合は〈硬気功こうきこう〉自体を上手く使えない場合があること、そして自分の意識を集中させた肉体の一部しか硬体化できないということに他ならない」

 だが、とトーガはわらべ(子供)に説明するように言葉を続けていく。

「それはあくまでも普通の使い手が〈硬気功こうきこう〉を使った場合に限る。それこそ修練を積み重ねた熟達者になると、どんな角度から狙われようと全身を等しく硬体化させることが出来る。それが〈硬気功こうきこう〉からの派生技はせいわざの〝金剛こんごう〟だ」

 と、トーガが真の〈硬気功こうきこう〉について語った直後である。

 突如、トーガの肉体が二人に分裂ぶんれつしたのだ。

 このとき、武蔵は両手にしびれを感じながら思った。

 忍びの者が使う〝分身の術〟か、と――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

処理中です...