【完結】ナチュラルキラー46 ~異世界転移から始まる、最強の強化少年と最硬の機人による復讐冒険譚~

ともボン

文字の大きさ
35 / 37

第三十五話   共闘

しおりを挟む
 右手にショットガン、左手に〈忠吉〉を持った四狼は、まず機先を制するためにカルマ目掛けてショットガンを撃った。

 しかし、カルマは弾が当たる寸前のところで上空に飛翔してかわした。

 玉座の一角がスラグショットにより粉砕される。

 上空に飛翔したカルマだったが、ただ弾を避けるだけに飛翔したわけではなかった。

 玉座の後方の壁にはバルセロナ公国の紋章が描かれた盾が飾られており、その下には二メートルほどの長槍二本が×字に飾られていた。

 カルマはその長槍二本を壁から剥ぎ取ると、一本をオリエンタの目の前に落とし、もう一本は自分の武器として手に持った。

「金剛丸! お前はオリビアのサポートに回れ!」

『了解。命令ヲ実行シマス』

 脳内に直接響く金剛丸の返事を聞いた四狼は、その瞬間には床を蹴って移動していた。

 生体チップにより脳内に神経伝達物質が分泌され、常人を遥かに超える身体能力を発揮した四狼は、膝のバネを最大限に利用して空中に跳躍した。

 垂直跳びで五メートルほど跳躍した四狼は、空中にいるカルマ目掛けてショットガンを撃った。

 だが、空中はカルマの絶対領域であったのか、風に舞う木の葉のようにひらりとスラグショットはかわされた。

 四狼はすかさず第二射を撃とうとした。

 けれどもそれよりも速く、羽を撒き散らしながらカルマが間合いを詰めてきた。

 空中で満足に身動きが取れない四狼とは違い、カルマは手にしていた長槍の穂先を寸分の狂いもなく突き出してくる。

 四狼は顔面に向かって飛んできた穂先を〈忠吉〉で弾き返した。

 この場面をあらかじめ想定して〈忠吉〉を抜いていたのだが、それでもわずかに四狼の表情が曇った。
(こいつ、強い)

 四狼は床に片膝をついて着地すると、まだ空中を飛翔しているカルマを睨む。

 たった一合だけ剣を交えた四狼は、カルマの力量を瞬時に看破した。

 第二形態に変貌した〈亜生物〉は例外なく身体能力が跳ね上がるのだが、カルマの利点は身体能力の向上以上に空中を自在に飛行できることであった。

 下手にショットガンを撃っても確実に無駄撃ちになる。

 そう思った四狼だったが、だからといって迂闊に近づくわけにはいかない。

 四狼の〈忠吉〉とカルマの長槍では間合いが全然違う。

 空中から長槍で襲われれば防戦一方になるのは目に見えている。

 そのとき、四狼が思考していた通りにカルマが空中から襲い掛かってきた。

 ほとんど真上から烈風のような連続突きを繰り出してくる。

「くっ!」

 床を転がりながら連続突きをかわし続けた四狼は、ショットガンを撃つ機会を虎視眈々と狙っていた。

 しかし、さすがにカルマも〈亜生物〉であった。

 ショットガンの銃口が向けられるや否や、照準を狂わすべく様々な方向に飛翔して逃げる。

「くそ、ちょこまかと飛びやがって」

 自在に空中を飛行していたカルマに注意を向けつつ、四狼は気がかりだったオリビアと金剛丸のほうに意識を向けた。

 四狼の視界にはオリエンタの長槍を金剛丸が摑み取り、その隙を狙ってオリビアがオリエンタの心臓に長剣を突き刺した光景が飛び込んできた。

 まさに一瞬であったが、四狼は見逃さなかった。

 長剣を突き刺したときにオリビアが沈痛な面持ちであったことに。

「オリビア……」

 四狼はオリビアの気持ちが痛いほどよくわかった。

 いくら二人とも〈変異体〉だったとはいえ、姉のセシリアだけでなく妹のオリエンタも手にかけてしまったことは、オリビアの心に深い傷が残すに違いない。

 だが、〈変異体〉と化した人間は誰かが殺してやらなければならないのも事実である。

 四狼は誰よりも今のオリビアに共感できる。

 それは自分もオリビアと同じく、心に深い傷を負っている人間なのだから。

 オリビアはオリエンタの胸元から長剣を引き抜くと、すぐに四狼に顔を向けて駆け寄ってきた。

 その身体には多量の返り血を浴びていたが、着ていた朱色のドレスのお陰であまり目立っていない。

「四狼、私も加勢するぞ!」

 オリビアは今まさに肉親を斬ったというのに、必死に気丈な振る舞いを見せた。

 さすがだな、と四狼は心底感心した。

 オリビアは現在の状況をよく理解していた。人外の化け物に限らず、相手に気弱な態度を見せては戦闘に勝利することはできない。

 それこそ自分の魂と肉体を奮い立たせ、絶対に相手に屈しないという気概を持った人間こそ最終的には勝利する。

 これはどんな勝負事にも通じる真理であった。

 四狼は大きく頷いて見せた。

「ああ、頼む!」

 と、二人が意気投合したときだった。

「いたぞ! あいつだ!」

 入り口のほうから耳朶を叩く怒声が響くと、玉座の間にはロングボウを携えた数十人の近衛騎士団たちが雪崩れ込んできた。

 横一列に綺麗に並び、空中に飛翔しているカルマを標的に矢を番え始める。

「おお、その手があったか」

 声を上げたのはマルコシアスであった。

 たわわな顎を揺らして弓を持った近衛騎士団の到着に喜びの表情を浮かべた。

「小賢しい!」

 カルマは背中から生えている二枚の翼で身体を包むような格好になると、空中で竜巻のように高速回転していく。

 その光景を見た四狼はすぐに理解した。

 カルマが次にどのような攻撃に打って出るかを。

「金剛丸! オリビアの盾になれ!」

 四狼は金剛丸に指示を出した瞬間、その場に残像を残すほどの速度で移動した。

 刹那、準備が整ったカルマが攻撃を仕掛けた。

「くたばれ!」

 空中で高速回転していたカルマは、丸めていた翼を一気に広げた。

 するとその翼からは幾百幾千の羽が発射され、玉座の間全体に飛び散った。

 玉座の間に広がる近衛騎士団たちの嗚咽や悲鳴。

 カルマの翼から放たれた羽はさながら弾丸のような威力があり、石壁や硝子窓はもちろん、甲冑を着込んできた近衛騎士団の身体を貫いていく。

 惨劇は一瞬であった。

 入り口方面には数十人の騎士団たちの死体が無残に転がり、むせ返るような血臭が漂い始める。

 それでもわずかに生き残った騎士たちもいたが、死ななかったというだけで重傷を負っていることは嫌でもわかった。

 甲冑に食い込んでいる羽が痛ましく、鈍色だった甲冑が今では赤一色に染まっている。

 その中でオリビアは掠り傷一つ負わなかった。

 運がよかったわけではない。

 オリビアの目の前には両手を広げた金剛丸が佇んでおり、カルマの攻撃が一枚たりとも当たらないように盾になっていたのだ。

 一方、四狼は四狼で近くにいた人間を助けていた。

 マルコシアスである。

 オリビアは絶対的な防御力を誇る金剛丸に任せ、四狼はマルコシアスの身体を抱いて壁際まで飛んでいた。

 まさに間一髪であった。

 カルマの攻撃が近衛騎士団に集中していたせいか、壁際まで飛んだ四狼とマルコシアスには羽が当たらなかった。

 多少、マルコシアスを床に伏せたときに身体の一部を強く打ちつけたかもしれないが、弾丸並みの威力があった羽を食らうよりは遥かにマシであろう。

「大丈夫か?」

 四狼はマルコシアスの身体を揺らしながら声をかけた。

「は、はい……」

 やはり身体の一部を打ったのか、マルコシアスは苦痛の表情を浮かべながら右肩を押さえていた。

 そんなマルコシアスに四狼は円柱の後ろに隠れていろと言付けると、視線を空中にいるカルマに向けた。

(どうする。何か策はないか)

 四狼は脳を高速回転させて現状を打破する秘策を模索した。

 しかし空中に浮いている敵を仕留めるとなると、やはり遠距離の武器を使っての狙撃しかない。

 だがショットガンを使っても弾に限度があるし、確実に当たるとは限らない。

 何かないか。

 カルマを見上げながら四狼が唇を噛み締めた。とそのとき、四狼はあることを思いついた。

 この室内において、空中にいるカルマを倒せるかもしれない秘策が。

 そう思った瞬間、四狼は素早くその場を離れてオリビアの元へ駆け戻っていく。

「オリビア、怪我はないか?」

「平気だ。ただ、かなり驚いたがな」

 金剛丸に守られていたオリビアは、本当に傷一つ負ってはいなかった。

 しかし何故か顔面は青ざめ、額には薄っすらと油汗が浮き出ている。

「まさか……肩の傷が痛み出したか?」

 オリビアは何も答えなかったが、左手を右肩の付け根に当てていたことが何よりの証拠であった。

 半日以上前、オリビアは遺跡に行く途中で負傷した。

〈変異体〉が放った矢が右肩の付け根に突き刺さり、流れが急になっていた川に落ちたのである。

 四狼はすぐにオリビアを救出して傷の治療を行ったが、たった一日やそこらでは完治するはずがない。

 それでも解熱剤と鎮痛剤を飲ませ、苦痛を緩和させていた。

 今日も城に来る前に二つの薬を飲ませたが、ここに来て鎮痛剤の効果が切れたのであろう。

 四狼は歯噛みした。

 折角、カルマを倒せる作戦を思いついたというのに、オリビアがこの調子では成功するかどうか分からない。

 そのとき、顔をうつむかせていた四狼の顎をオリビアは摑んだ。

 ぐいっと強制的に顔を上げさせ、真っ直ぐ瞳を見つめてくる。

「私は平気だと言っただろう。それよりも何か策はないのか? このままでは全員殺されるぞ」

 オリビアは強靭な精神力で込み上げてくる痛みを抑えつけ、何とかこの状況を打破できないか尋ねてきた。

 額に浮き出てきた汗の量からして、もしかすると解熱剤の効果も切れかかっているのかもしれない。

 それでもオリビアは微塵も戦う気概を失っていない。

「策は……ある。だが、それにはオリビアの協力が絶対不可欠だ」

 四狼は真剣な表情で話を続けた。

「しかし、かなり身体に負担をかけるぞ。それでもいいのか?」

 そう、四狼の脳裏には確かに現状を打破する秘策が浮かんでいた。

 剣や槍では届かない空中にいるカルマを倒すためには、おそらくこれしかないという秘策が。

 だからこそ四狼はオリビアに同意を求めた。

 成功の鍵を握っているのが他でもないオリビアだからである。

 オリビアは四狼に向かって不適な笑みを見せた。

「私の身体を気遣ってくれるのは嬉しいが、今はそんなことを言っている場合ではないだろう? 構わん、何でも言ってくれ。どんなことでもやり遂げてみせる」

 その力強い言葉を聞いた四狼は、オリビアの覚悟を無駄にしないよう自分も覚悟を決めた。

 そして手に持っていたショットガンをオリビアに手渡す。

「わかった。じゃあ、これから言うことをよく聞いてくれ――」

 四狼はオリビアに策を話した。

 それは――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...