【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
25 / 104
第四章 ~空手家という名の闘神、大草原に舞い降りる~

道場訓 二十五   今さら気づいても、もう遅い!

しおりを挟む
「――〈神遠拳しんとうけん〉!」

 俺は襲いかかってきた魔物どもに対して、遠距離用の技であるその場での気力アニマを乗せた正拳突せいけんづき――〈神遠拳しんとうけん〉を放った。

 ゴオオオオオオオオオオ――――ッ!

 数秒後、巨大な黄金色の気力アニマの光弾が魔物の群れに直撃する。

 顕現化けんげんかさせた気力アニマを高出力で放った〈神遠拳しんとうけん〉。

 それは圧倒的な火力をほこる、極大魔法きょくだいまほうと比べても何ら遜色そんしょくはない。

 現に俺の〈神遠拳しんとうけん〉をモロに食らった一部の魔物どもは、耳をつんざく悲鳴とともに肉体を爆裂四散ばくれつしさんさせて地獄へと落ちていく。

 これが人間ならば一発で戦意を喪失そうしつしただろう。

 しかし、残っているのはAランクの上級魔物たちばかりだ。

 同じ種族だろうと他種族だろうと、狂気と殺意を高めていた状況で弱腰になることなどない。

 そうだよな……お互い、冷静にもういるもんな。

 俺はニヤリと笑って残りの魔物どもを睥睨へいげいした。

 3分の1の魔物を一瞬で倒した俺の〈神遠拳しんとうけん〉を見ても、残りの魔物どもはまったくひるむことなく向かってくる。

 けれどもAランクの上級魔物は馬鹿ではない。

 二発目の〈神遠拳しんとうけん〉を最大限に警戒けいかいしたのだろう。

 一塊ひとかたまりにならないよう、各種族ともバラバラになりながら距離を縮めてきた。

 直後、様々な種族の殺意の牙が容赦ようしゃなく襲いかかってくる。

 それでも俺の心は乱れない。

 俺は地面を力強く蹴ると、3メートル以上はある前方のオーク・エンペラーに飛びかかった。

 そしてオーク・エンペラーの筋肉と脂肪が詰まった太鼓腹たいこばらに必殺の前蹴り――〈足先蹴そくせんげり〉を叩き込む。

 内臓を中から破壊されたオーク・エンペラーが血反吐ちへどを吐いて絶命したのを確認するまでもなく、俺は瞬時に隣にいたオーガ・カイザーに向かって駆け出した。

 巨大な棍棒を振り回してくるオーガ・カイザー。

 だが、今の俺はオーガ・カイザーの攻撃など目をつむってもけられる。

 俺はオーガ・カイザーの棍棒を身をかがめることでかわすと、すぐさま6つに分かれた腹筋に体重と気力アニマを乗せた正拳突せいけんづきをお見舞いする。

 それだけでは終わらない。

 俺は間髪を入れず、飛びねながらオーガ・カイザーのあごに真下から揚げ突き(アッパーカット)を放った。

 ゴキンッ!

 俺の揚げ突き(アッパーカット)でオーガ・カイザーの首の骨はへし折れ、そのまま3メートル以上はあったオーガ・カイザーは背中から倒れて絶命する。

 まだまだ!

 気が乗ってきた俺は本能のままに肉体を動かした。

 俺の制空圏せいくうけんの中にいたジャイアント・トロール、ダーク・フェンリル、メタル・ゴーレムどもに闘神流空手とうしんりゅうからて上位技じょういわざを次々と繰り出していく。

 まずはもっとも倒しやすいジャイアント・トロールだ。

 俺は全身毛むくじゃらの巨人であるジャイアント・トロールのパンチを避けると、ジャイアント・トロールの左膝に渾身の蹴りを叩き込む。

 あまりの蹴りの衝撃に膝をつくジャイアント・トロール。

 俺は助走なしに数メートルの高さをジャンプすると、無防備だったジャイアント・トロールの頭頂部に――〈神雷しんらい肘落ひじおとしち〉を繰り出して脳天をくだく。

 次はお前だ!

 俺は地面に颯爽さっそうと降り立ち、右方から襲いかかってくる敵に顔を向けた。

 身体と凶暴さが巨大化した魔狼ワーグ上位種じょういしゅ――ダーク・フェンリルだ。

 ダーク・フェンリルは上顎うわあご下顎したあごを大きく開けて猛進もうしんしてくる。

 その口で俺をとらえて一気にくだこうとしたのだろう。

 しかし、俺からしてみれば悪手あくしゅ悪手あくしゅだった。

 俺は神速の踏み込みから軸足じくあしを返し、力と勢いと気力アニマを最大限に乗せた〈旋風せんぷうまわり〉をダーク・フェンリルの顔面に放った。

 バアンッ!

 俺の〈旋風せんぷうまわり〉の直撃を浴びたダーク・フェンリルの顔面は、爆発系の火魔法を食らったように破裂はれつした。

 そしてダーク・フェンリルは大量の血と脳漿のうしょうを飛び散らせて絶命する。

 続いての敵はそれなりに厄介やっかいなメタル・ゴーレムだった。

 一般種いっぱんしゅのゴーレムは単一的な動きしかしない土人形だが、上位種じょういしゅであるメタル・ゴーレムは複雑な動きをこなす金属人形だ。

 通常の打撃や斬撃はもちろんのこと、攻撃魔法でも火力が低ければダメージは与えられない。

 金属の肉体が生半可な攻撃などすべて弾き返すからだ。

 けれどもメタル・ゴーレムの恐ろしさはそれだけではない。

 メタル・ゴーレムは丸まった口から魔法とは異なる、光線こうせんと呼ばれている異様な力のかたまりを連続で発射してくる。

 頑強がんきょうな金属鎧でも一発でも食らえばける威力の光線こうせん

 俺はそんな光線こうせんの軌道を完全に読みながら間合いを詰める。

 そしてメタル・ゴーレムの胴体に、衝撃波が内部へ深く浸透しんとうする〈波状はじょう掌底しょうていち〉を叩き込んだ。

波状はじょう掌底しょうていち〉を食らったメタル・ゴーレムは、全身をビクビクと痙攣けいれんさせた末に頭部から大量の煙を出して地面に倒れる。

 といった具合に俺はそれぞれの種族に合わせた、もっともダメージを与えられる攻撃で魔物どもを戦闘不能にさせていく。

 もちろん一打一蹴いちだいっしゅうごとに練り上げた気力アニマも加えているため、俺の攻撃の衝撃波は内部に伝わって体内を破壊している。

 俺はジャイアント・トロール、ダーク・フェンリル、メタルゴーレムを倒すと、せん(カウンター)を捨てて、とにかく先手を取るために動いた。

 できれば1体たりともエミリアに近づかせたくない。

 俺のそんな思いを感じ取ったのではないだろうが、幸いなことに魔物どもは俺のはるか後方にいる冒険者の一団よりも、俺一人のほうが脅威きょういの存在だとさっしてくれたのだろう。

 1体たりとも冒険者の一団へは向かわず、今のところ俺だけをターゲットにしてくれている。

 その点だけは本当にありがたかった。

 俺一人だけをターゲットにしてくれるのなら、心置きなくお前たち全員を1体残らず始末できる。

 次の瞬間、残っていた魔物どもが目を血走らせつつ突進してきた。

 憎悪と狂気が入り乱れた、何十もの眼光が俺の全身に槍衾やりぶすまのように突き刺さってくる。

 魔物どもはようやく気づいたのだろう。

 目の前の捕食ほしょくされる側だと思っていた人間が、実は自分たちを捕食ほしょくする側の圧倒的な強者だということに。

 だからこそ、誰が先に殺されようが一斉に襲いかかって俺を仕留める決意を強めたのかもしれない。

「今さら気づいても、もう遅いけどな」

 それに魔物どもは根本的に勘違いをしている。

 俺としてはむしろたばになって襲ってきてくれたほうが非常に助かる。

 まだこいつらの大将が残っているのだ。

 そいつを倒すまでは少しでも体力と気力アニマを温存しておきたい。

 などと俺が再び戦意の炎を燃え上がらせたときだ。

 何だ、この異様な気配は?

 俺はアリアナ大森林から得体の知れないを感じると、闘いの渦中かちゅうにいながらも大森林へと視線を向ける。

 そして俺はあまりの予想外の出来事に驚愕きょうがくした。

 なぜなら――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...