【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
39 / 104
第五章 ~邂逅、いずれ世界に知れ渡る将来の三拳姫~

道場訓 三十九   将来の三拳姫の入門式

しおりを挟む
【神の武道場】。

 それは俺が師匠であった祖父から継承されたスキルであり、一般的なスキルとは違って生物せいぶつ収納系しゅうのうけいと呼ばれる希少レアなスキルだ。

 何が希少レアかと言うと、まずスキルの中に入れることだろうか。

 気力アニマを一定まで練り上げた状態で、かつ特定の所作しょさをすることでスキルの中へと入れる次元の扉が開かれ、発動した本人と本人が許可きょかした者たちと一緒にスキルの中へと入ることができる。

 そして【神の武道場】と呼ばれていることもあって、次元の扉を抜けた先に現れる最初の場所は武道を稽古けいこする武道場だ。

 成人した大人が100人以上は入れるほど広い畳敷たたみじきの床。

 正面の壁の前にはヤマト国の神棚かみだなが置かれ、その神棚かみだなの右隣の壁には「闘神流空手とうしんりゅうからて指南所しなんじょ 拳心館けんしんかん」とヤマト語で書かれた看板が掛かっている。

「こ、ここがスキルの中なのか……」

 そんな道場の中を見渡しながら、驚いた声を上げたのはキキョウだった。

「あのときは動揺どうようしていてよく見ていませんでしたが、こうして見ると本当にスキルの中とは思えないほどですね」

 二度目の来訪らいほうだったエミリアも初めて見たように目を輝かせる。

「ホンマでんな。お祖父じいさまから話は聞いてましたが、こうして中に入らせてもらうとその凄さがあらためて分かります。けれどケンシンさま、この【神の武道場】というスキル……れるのはだけやないですやろ?」

「分かるのか?」

 こくり、とリゼッタはうなずく。

「何かしらの条件を満たせば、こことはも行けるんとちゃいますか?」

 さすがは大教皇だいきょうこうの孫娘であるリゼッタだった。

 スキルの中にいるというのに、他の2人と違ってまったく動揺どうようしていない。

 それはなぜか?

 俺の祖父から聞いた話によると、リゼッタの祖父である大教皇だいきょうこう――エディス・ハミルトンも生物せいぶつ収納系しゅうのうけいの継承スキルを持っているという。

 俺はまだ一度も入ったことはないが、孫娘であるリゼッタならば一度や二度くらい自分の祖父の継承スキルの中に入ったことがあるはずだ。

 それゆえの余裕なのだろう。

 しかもリゼッタは道場以外の場所へ行くための条件も的確てきかくに言い当てた。

 これはおそらく、エディス・ハミルトンの継承スキルの中にも同じような条件があったからに違いない。
 
 などと俺が思っていると、3人の中で心身の異常をうったえた者が現れた。

 キキョウだ。

 がっくりと片膝をつくと、右手で頭を押さえて苦悶くもんの表情を浮かべる。

「おい、大丈夫か?」

 俺はキキョウへけ寄って声をかけた。

「へ、平気です……ちょっと目眩めまいがしただけですから」

 キキョウは笑いながらそう答えたが、どう見ても我慢がまん誤魔化ごまかすための笑みにしか見えなかった。

 これはキキョウの魔力マナに【神の武道場】が反応しているからであり、このまま悪戯いたずらに時間が過ぎればキキョウの身体にもっと悪影響が出てくるはずだ。

 それに何もせずに時間を浪費ろうひすればキキョウだけではなく、他の2人も【神の武道場】からの強制排除の対象になってしまう。

 さっさと済ませたほうがよさそうだな。

 俺はとりあえずキキョウの身体を優しく起こすと、他の2人にも神棚かみだなの前に移動するように言った。

 そして神棚かみだなの前に移動したあと、上座かみざである神棚かみだなを背にするように俺が立ち、その俺の数メートル前に3人を横一列に並ぶように立たせる。

「よし、まずは3人とも俺と同じように正座してくれ」

 俺の言うことに素直にしたがう3人。

 そんな3人に俺はこれから行う入門式の手順をざっくりと説明した。

 神棚かみだなへの一礼、道場長である俺への一礼、弟子になる者同士の一礼、そして道場訓どうじょうくん唱和しょうわなどだ。

 ちなみに道場訓どうじょうくん筆記ひっきされた木版は、神棚かみだなの左隣の壁に掛けられている。

 その後、神棚かみだなへの一礼から弟子同士の一礼までを済ませると、一番重要な道場訓どうじょうくん唱和しょうわに移った。

「いいか? 道場訓どうじょうくん唱和しょうわのさいには滑舌かつぜつよく、心の底から闘神流空手とうしんりゅうからてを学びたいという気概きがいを胸に唱和しょうわしてくれ。分かったか?」

「はい、分かりました」とエミリア。

 うん、いい返事だ。

「はっ、委細いさい承知しょうちしました」とキキョウ。

 おお、良い目をしているぞ。

「もちろんですわ。何ならケンシンさまへの愛も言いましょうか?」とリゼッタ。

 それはいらん。

 俺は居住いずまいを正すと、一つだけ大きな咳払せきばらいをしてのどの調子を整える。

 そして――。

「一つ、我々は――」

 俺が道場訓どうじょうくん唱和しょうわを始めると、他の3人も同じように続く。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 一つ、我々は空手からてによって心身を錬磨れんまし 、信実しんじつの精神をやしなうこと。
 (空手からてを真剣に修行することによって心と身体を鍛え抜き、打算ださんがなく誠実せいじつな人間になる)

 一つ、我々は空手からて真髄しんずいを極め 、人格形成につとめること。
 (空手からての道を深く追求することで、人間性の向上発展に努力する)

 一つ、我々は質実剛健しつじつごうけんもって 、空手からての道を突き進むこと。
 (かざることなく真面目にたくましく空手からての修行をする)

 一つ、我々は空手からての修行によって礼節れいせつみがき 、血気けっきゆういましめること。
 (空手からての修行によって礼儀れいぎを身につけ、些細ささいなことでいからず空手家からてかの名にじぬようにする)

 一つ、我々は生涯しょうがいの修行を空手からての道にささげ 、人としての道もまっとうすること。
 (生涯しょうがいにおいて空手からての修行を続けていくことで、人間としても完成するような生き方をする)

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これらの道場訓どうじょうくんをすべて唱和しょうわした直後、神棚かみだなまつられていた円形の鏡からまばゆい光球が現れた。

 やがてその光球は3つに分かれてエミリア、キキョウ、リゼッタの目の前の床に飛んでいく。

 3人はあまりの驚きに息をむ。

 なぜなら、自分たちの目の前に飛んできた光球が〝純白の空手着からてぎと真っ白な一本のおび〟になったからだ。

「ケンシン師匠……こ、これは?」

 エミリアの質問に俺はありのまま答えた。

空手着からてぎおびだ。それ以外に何に見える?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...