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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~

道場訓 九十二   灼熱の激突

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「少し本気になっただけやと?」

 カムイの表情から少しだけ笑みが消えた。

 同時にカムイの全身をおおっていた〈魔力マナ〉の濃度が上がっていく。

「じゃあ、さっさと本気になれや!」

 次の瞬間、カムイは再び凄まじい速度で間合いをめてくる。

 だが、今度の俺は受けに回らなかった。

 次は俺の番だ!

 俺は下丹田げたんでんに〈気力アニマ〉を集中させると、地面を強く蹴ってカムイに疾駆しっくする。

「オオオオオオオオオオオ――――ッ!」

 雄叫おたけびに似た気合一閃。

 俺はカムイのふところに飛び込むや否や、、急所である鳩尾みぞおちに打ち下ろし気味の右正拳突みぎせいけんづきを放つ。

 ドンッ!

 客席にまで届くほどの衝撃音が響き渡った。

 だが、カムイの肉体にダメージはほとんど与えられていない。

 何て肉体だ。

 俺はたった1発の攻撃で、カムイの肉体の潜在能力ポテンシャルさっしがついた。

 樹齢じゅれい数千年の大木に、2重3重に革でも巻き付けたような強度をしている。

 それは手応てごたえから十二分に分かった。

 ゆえに俺は瞬時に次の手を打った。

 カムイの身体に触れていた拳を、正拳せいけんをすぐさまてのひらの形に変化させる。

 これならどうだ!

 俺はカッと目を見開くと、衝撃波が内部へ深く浸透しんとうする〈波状はじょう掌底しょうていち〉を叩き込んだ。

 俺のてのひらから波状はじょうに広がった衝撃波が、カムイの筋繊維きんせんいを通り越して全身の隅々すみずみにまで行き届いていく。

 これにはさすがのカムイも表情が崩れた。

 当たり前だ。

 肉体の内部に衝撃が深く浸透しんとうするのが〈波状はじょう掌底しょうていち〉の特徴であり、それこそ完全に決まれば内臓に凄まじいダメージを受ける。

 いや、下手をすれば即死することも十分にあり得た。

 しかし、カムイは「これはけっこう効くわ」とニヤリと笑ったのみ。

 それだけではない。

 カムイは「魔神流まじんりゅうでお返しや」と、左手のてのひらを俺の肉体にぴたりとつけた。

 直後、俺はコンマ数秒という一瞬の中で確かに見た。

 カムイの左手に〈魔力マナ〉が異常なまでに集中し、その〈魔力マナ〉自体が細かな水滴すいてきに変化したことを。

 そして――。

「――〈水破すいは浸透掌しんとうしょう〉!」

 1つ1つが鉄の強度ほどもあった無数の水滴すいてきとともに、カムイの左手のてのひらから放たれた〈魔力マナ〉の衝撃波が俺の上半身に打ち込まれた。
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