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2.計画実行と兄妹登場
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しおりを挟むティファニアさんに追い立てられて、アネスが自室に戻ったので、代わりにシアが来てくれた。
本来なら今日は非番の日だから、ゆっくり休んでもらいたかったんだけど、世話係の女性が僕の近くに控えていない状態はダメらしく、急遽シアが出てくることになった。
これは所謂、休日出勤と同じこと ーそもそも今日は休暇日であるー なので、例え本人が「通常、一週間の休暇日は2日ですが、フィルシールド殿下の世話係の任に就いてからは、週3日の休暇を頂いていますので、休暇が一日分少ないということではなく、一般的な日数になっただけのことです。・・・」なんて言って、この休日出勤を正当化しようと頑張ってくれていても、当たり前のことのように認識しては、いけないのだ。
この世界では、一週間は6日で、それを二人で分けるのだから、一人当たりに振り分けられた仕事日数は3日だ。しかし、勤務時間は朝早くから夜遅くまでで、拘束時間は驚異の18時間超えだし、二人の間で平等性を保つために、週に一日は休暇日に出てきてもらっている。
本来なら、もっと人員を増やして対応すべきことなんだけど、僕がまだ生まれたてなこともあり、信頼できる人物以外を近くに置きたくないらしい。主に、サーシャさんやリーナさん、ジークさんにセルシェーダさんの意見らしく、お父さんが、二人の給与を大幅に上げて雇っているらしい。 “給与表” という紙をもらったシアの顔が真っ青になったくらいだから、おそらく、かなりの額は支払われているのだろう。
だが、それとこれとは別である。
いくら休みが多くとも、いくら支給される給金が多くとも、それが元々の雇用条件なのだから、休日出勤を正当化していい理由にはならない。
つまり、休日出勤手当を出してあげたいと思っているということだ。
しかし、理想はあれど現実は残酷で、僕がシアに出せるお金は無い。というか、この世界のお金を見たことすら、まだ無いのが現状だ。
だが、今の僕の手元には、ティファニアさんにお願いして用意してもらった、御守りの材料が沢山ある。
これで、サーシャさんに渡す分とは別に、シアにあげる分も作ろうと思う。
シアにあげる分には、どの神様のご加護があるといいかなぁ?ちょっと聞いてみよう。
「えっと、私が特に信仰している神ですか?そうですね、・・・・・・・・・キルニアシュ様とジュステ様、それから、アラト様ですね。」
成程。
シアは、学問に秀でているし、司法官志望だったらしいから、叡智神キルニアシュ・ウィズディムと正義神ジュステ・アランドは納得だね。けど、芸術神アラト・ディアラはちょっと意外だなぁ。
もしかして、シアは芸術が好きなのかなぁ?
「私の父は王家に仕える宮廷音楽家ですし、母は代々宮廷画家を多く輩出するディアンフィト男爵家の出ですので、学問の才が無ければ芸術の道を志していたと思います。」
な、なんと!?
もしかして、シアは絵が描ける人?
「どちらかと言うと、音楽よりは絵の方が得意ですね。」
こんなところに、こんな丁度良いタイミングで、一番欲しかった能力を持つ逸材がいたなんて・・・・・・・・・シアが良いって言ってくれたら、御守りに使う下絵を描いてもらおう。
「下絵ですか?こちらの紙に、・・・・・・・・・分かりました。では、何をお描きすればよろしいでしょうか?」
そうだねぇ、最初は、今回描いてもらいたい物の中で、一番見た目が分かっていて、しかもイメージもしやすい、ルビーアイを描いてもらおうかな。
「ルビーアイですか?分かりました。」
迷いとかが無いからなのか、シアの描く手は、僕が思っていたよりもかなり速く動いている。
絵が描けない僕から見れば、魔法としか思えない程の速さで、シアが描きあげたルビーアイは、鉛筆と色鉛筆だけで描かれているとは思えないほどの写真のような質感があった。
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