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綺麗な女の子を見ながら〇〇〇ーしました(その2)

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 見渡す限り草原の中、俺の正面にはショートへアの女性が立っている。
髪の毛は赤みがかっている。
大人っぽい顔つきで……綺麗なお姉さん顔だな。
健康的な体つきだぞ……。
大きな緋色の瞳で目力が強い。
 あ、服装が珍しい……。
はるか東方にある国の衣類……着物を着ているぞ。
赤色……真紅の着物で花柄だ。
そして……お、おっぱいが大きいみたいだぞ!?
着物なので非常にわかりづらいが、鎖魔法の使い手・サリーヌぐらいあるんじゃないか?
おっぱいが大きいとアツい視線を送ってしまいそうで申し訳ないぜ。
あ……風でなびく度に彼女の尻尾を包む真紅の毛が揺れているぞ。
やはり魔族は尻尾の色と服のカラーを合わせる傾向にあるな。
 腰には東地方特有の武器……刀だな。
刀はこちらの地域にも少しは出回っているが、扱える者は少ない。
彼女が持っている刀は、そこら辺に出回っているものではないぞ。
とても禍々まがまがしい圧力を感じる。

「勇者……あなたを一思いに殺してあげます……」

 やはり魔族。
会って早々、俺への殺意がエグいな。
少し高めの心地良い声で殺害宣告か。
まぁ、俺も同じようなものか。
地上を救うため、魔族とモンスターを倒す使命があるからな。
 ……それにしても、なんでこんなところに魔族が。
俺たちは苦労して魔界まで行った。
人間が簡単に魔界には行けないように、魔族も簡単には地上に出て来られないはずだ。

「さあ、構えてください。正々堂々と……勝負しましょう。真剣勝負です」

 彼女が右手で刀の柄を握りしめた。
腰を落として……今にも飛び込んで来そうだぞ。
模擬戦闘でも実戦でも刀を持つ者は相手にしたことがない……これは厄介だな。
……ん?
よく見てみたら、この魔族……どこかで見たことがあるぞ。

「その表情……私のことを思い出したようですね? そう、私は魔法四天王の1人、スカーレンです」

 ……そうだ!
魔王城で遭遇した四天王の1人だ!
色々と混乱していてド忘れしていたぜ。
すぐに仲間が戦闘を引き受けたから、彼女と対峙していた時間はわずかだったし。
まぁ、それでも敵の情報はちゃんとインプットしておかなきゃな……。
俺のダメなところだ。
名前は【スカーレン】ね。

「思い出したよ。な、なんで地上のこんなところに……?」

「あなたを……殺すためです!」

 あ、そりゃそうか。
魔王城から俺を追って来たんだな。
って、この子は記憶を保持しているんだな?
旅立ちの日に記憶が戻ってしまっている国王や大臣、王女様たちとは違う状況だ。

「キミは俺と会ったことを覚えているわけだから、記憶が残っているんだよね? 今、俺が置かれている状況は……過去に戻ってるみたいなんだよ。俺が魔王に負けた後から、一体なにが起こっているのか説明して欲しいんだけど……」

 俺の言葉を聞いて、彼女が少し考える。
やがて口を開いた。

「……そうですね。魔王様から説明がなかったんですね。あなたは……その……なんと言いますか……」

 ……ん?
なんかモジモジしているぞ。
ど、どうした?

「……エッチなことをする……つ、つまり……ぜ、ぜっちょうを迎えると……過去に戻ってしまうんです。あなたの旅はやり直しになってしまいます。魔王様があなたにそういう呪いをかけたんです」

 なんか顔を赤らめながらイカれたことを喋っているぞ。
『ぜっちょう』……? ぜっちょうって……絶頂か!
絶頂を迎えると……過去に戻る?
もしかして絶頂って……しゃ、射精のことか?
俺は魔王に射精させられたから、過去に戻ったってこと?

「しゃ、射精すると過去に戻るってこと!?」

「ヒッ! そ、そんな直接的な表現をしなくても……。そ、そういうことなんですけどね!」

 なんか恥ずかしそうだぞ。
この子はエッチな話が苦手なんだろう。
俺も恥ずかしいけど、大事なことなのでちゃんと話しておこう。

「ま、まさかそんな呪いの魔法があるなんて……」

「え、ええ。あるんですよ。魔王様が習得しました。その……あなたの局部に……呪いの印が刻まれているはずです。それが証拠ですね」

「え!? お、俺のアソコに!?」

 確かに!
そんなことを魔王が言っていた気がするよ!
って、俺の大切なイチモツに何してくれてんだ……!

「と、とにかく……分かりましたか? あなたは絶頂を迎えることなく、魔王様のところまで辿り着かなくてはならないんです」

「……へっ!?」

 射精することなく魔王のところまで行く!?
……ま、待て待て!!
それはつまり……射精する度に俺はスタート地点に戻っちゃうの!?
そもそも魔王城まで1年はかかる旅だよ!?
その間ずっと禁欲!?
まぁ……もう魔王城までのルートは確立しているから少しは短くできると思うけど!
あ、今はもう仲間がいないから1年以上かかる可能性もあるか……。

「魔王様はこの呪いを勇者に課した罰だと言っていますが、私は認めません。魔王様はあなたを使ってただ遊んでいるだけです。呪いによって地上の時間がさかのぼっても、魔界にいれば時間に影響はありません。私の記憶が残っているのはそのためです。もちろん、魔界の時間はそのままです。魔王様は今も水晶玉でこの状況を見て楽しんでいます。私は魔王様のそんな様子をこの目で見ました」

「……なっ!?」

 魔王が……俺の状況を見て楽しんでいる!?

「そんな悪趣味な遊びを魔王様がしていることに、私は耐えられません。だから私があなたを殺します。一思いに。それが情けというものです。殺るか殺られるか、それが魔族と勇者との、そもそもの関係ですよ。あなたも私たちのリーダーである魔王様の命を狙っているわけですからね」

「ちょっ!? あ、あれ……!?」

 き、消えた!?
すぐに後ろから、おぞましい魔力を感じた。
俺はすぐに後ろを振り向いて聖剣で対処する。
姿を現したスカーレンの刀と、俺の聖剣がぶつかり合う。

「その反応速度……やりますね。勇者を名乗るだけのことはあります」

「な、なんだその力……!? いま、確かに消えたぞ?」

 俺の目では追えなかった。
年齢による動体視力の衰えは確かにあると思うけど、そういうレベルの話じゃなかったぞ……!

「【瞬間移動】の魔法です。私はこの力を使いこなしています。魔界と地上の間さえも行き来自由なんです」

 ……瞬間移動!?
そうか、その力で魔界からここまで来たのか!
戦闘でも使えるし……羨ましい魔法だ!
 魔法について簡単に教えてくれるのはありがたい。
そういえば魔王もベラベラと自分の魔法のことを喋っていたな。
よほど自信があるのか、戦いを楽しんでいるのか……?
魔王は『私はがんばって習得したのよ!』ってアピールしたい感じだったような。
この子は……なんか正々堂々って感じの子なんだよな。
もしかして、すでに魔王軍には俺の能力について情報が知れ渡っているだろうから、彼女の瞬間移動についても教えてくれたのかな?
フェアな精神を持っているのかもしれない……!

「今まで引き連れていた仲間はもういませんからね。1対1なら私は負けませんよ。あなたが聖なる技を発動させる前にその首をねてあげます」

 ……こ、こわっ!!
綺麗な声からは想像もつかない恐怖発言だな!
そして俺の仲間……どうなったのかも教えて欲しいぞ!

「いきますよ!」

 あ! また消えた……!!
次はどこから来る?
……魔力感知で対応するしかないな。
魔力を感知しながら聖剣に魔力を込めることは難しい。
ホーリーバスターの準備ができないぞ……!
 俺は魔力を感知することに集中した。
彼女の魔力はどこだ……?

「……また後ろかっ!?」

 再びスカーレンの刀と俺の聖剣がぶつかり合う。
くっ……!
こんな不意打ち攻撃に対応できているので剣術自体は俺の方が上かも。
しかしながら、相手が現れてから反応しているので後手に回ってしまって攻めきれない!
あと、刀は慣れていないから戦いにくいぞ!

「やりますね……」

 また消えた!
彼女の攻撃に対応できてはいるが、このままだと持久戦になる。
情けないことに長期戦は自信がないんだよな……。
これまでの実戦ではホーリーバスター1発で仕留めてきたからね。
長期戦の実戦経験がないんだ……。
長時間のトレーニングはしていたけどさ、練習と実戦は緊張感とか疲れとかが違うよね!
あと、なんだかんだで彼女はすごい強いし!
俺の仲間の戦士より剣術は上だな……。
っと、早く彼女の魔力を感知しないと……

「また後ろかっ!」

 ……また後ろだった。
な、なんか……強いんだけどバカ正直な子だな……。
最初に登場したときも背後に現れたし。
ただ……今のは腕に一太刀受けてしまった。
俺の腕から血が流れ始める……。
相手は無傷だ!
俺の方が動きが遅くなっているのか……!?
いや、スカーレンの身体が暖まって来てスピードが少し上がって来たのかもな。
……まずい。
後ろにばかり現れるので動きを読みやすいが、それでも瞬間移動は厄介だ。
瞬間移動すると一時的に魔力を感知できなくなってしまう。
再び現れたときに感知できるんだけど、結局は俺が後ろを振り向きつつ攻撃に転じる、その速度が鍵になる。
相手が背後に現れた瞬間、魔力感知からホーリーバスターの準備に切り替えつつ後ろを振り向き、攻撃に転じる……この速度をもっと上げないとダメだ。
今のところ、ホーリーバスターを放つことすらできていないんだ。
呪い系の魔王にしろ鎖魔法のサリーヌにしろ、独特の魔法を使う集団だな……。
うっ……! 腕の傷が痛むな……。
購入しておいた癒しの聖水を使おう。

「そんな回復アイテムでしのげると思いますか? 全回復できてないですよ? ダメージは蓄積されていきます」

 ……その通り。
四天王の攻撃が城下町の市販アイテム程度で全回復するはずがない。
 おっと……また消えたぞ。
……仕方がない。
あらかじめ魔力を込めておいてホーリーバスターで倒そう。
当たりさえすれば勝てるんだ。
魔力を込めるので魔力感知は使えなくなるけど、気配を感じて対応しよう。
背後に現れることを前提に対応するぞ!
 お……!? やっぱり後ろに来たっ!
俺は後ろを振り向きつつ大技を繰り出す。

「ホーリー……」
「遅いっ!!」

 うおっ!?
ダメだ……!!
先に腕を切られた!
また腕かよ……!
敵のスピード……さらに上がったのか?
背後に来ると分かっていても、やはり振り向く分の時間が掛かってしまう。 

「言ったでしょう? 私の瞬間移動は、地上と魔界も行き来できるぐらい鍛え上げています。そんな大技の発動を許すような、な能力ではありません」

 俺は相手との距離を取りつつ、慌てて2コ目の癒しの聖水を使った。
こ、これはマズい……。
ダメージによって、俺のスピードはどんどん遅くなる。
このままじゃ本当に殺されるぞ。
瞬間移動……恐ろしいな。
1人じゃ勝てない……!
あまり良い思い出はないけど、仲間がいるのといないのとじゃ大違いだ。
あ、そうだ……仲間のことを聞き出しておこう。
俺の仲間は一体どこに行ってしまったのだろうか?
殺されている……という可能性もあるから怖いんだよね……。
けど、チャンスなので聞いておかないとな!
彼女が色々と喋ってくれれば、時間稼ぎにもなる。
回復アイテムをさらに使う余裕も出てくるし、色々と戦法を考える時間も取れる。
とにかく勝機をつかまなくては、魔王討伐の旅は終わってしまう……!

「……お、俺の仲間はどうなっている!?」

「……それを教える必要はありません。何も考えずに、首をねて苦しまず殺してあげますから、大人しくしてください」

 教えてくれないか……。
それにしても、ずいぶんと余裕のある表情をしているな。
この子は……勝利を確信しているのか。
丁寧な喋りで正々堂々と戦う気持ちがあるみたいなので好感が持てる……けど、確実に俺を殺すつもりだ。
それだけの実力もある。
お、俺は……死ぬのか?
このまま……死ぬ?
このまま生きていても、仲間がいない状態で1回も射精することなく魔王を倒さなきゃいけないんだよなぁ……。
なんという禁欲生活だ……。
ま、待てよ……『1回も射精することなく』?
男には自分では制御し難い射精もあるんだぞ!?

「ちょっと待って! 俺がかけられた呪いだけど……夢精はどうなるんだ!? 過去に戻されるのか?」

「は、はいっ……!? し、知りませんよ! 細かいことは魔王様に聞かないと……。というか、どうせ今から死ぬんだから、そんな細かいことを聞いても仕方ないじゃないですか!」

 再び彼女が頬を赤くする。
それは知らないのか……。
……ん? 待てよ……

「……どうせ死ぬんだから……か」
 
 そう……このままだと俺は殺されてしまうのだ。
どうせ死ぬのなら……射精しちゃえばいいんじゃないか!?
射精しちゃえば、過去に戻るんだろ!?
今、この場で!! 射精だ!
できるのか? 殺されそうなこの場で!?
や、やるしかないだろ!
絶対に……出す!
この戦闘中に……俺は絶対に射精する!


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登場人物の詳細プロフィールです↓

スカーレン……魔王ジュエリに従う幹部、魔法四天王の1人。主人公に対するジュエリの方針に納得していない
種族: 魔族
地位: 魔法四天王
年齢: 不明(見た目年齢20代中盤)
身長: 162cm
声: 少し高めの心地良い声
体的特徴・見た目: 健康的な体つき、赤みがかったショートへア、Fカップ、目力が強い緋色の大きな瞳、主人公いわく綺麗なお姉さん顔、真紅の毛に包まれた尻尾
服装: 真紅の着物(花柄)
武器: 禍々しいオーラを放っている刀
得意な魔法: 瞬間移動
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