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決戦(その2)

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 ん? 夢から覚めたのか……?
こ……ここはどこだ?
この雰囲気は……魔王城だな!
部屋の中はボロボロだ。
あ、魔王が座っていた玉座もあるぞ!
ここは……魔王が死んだ部屋で間違いないな。
 う~ん……俺が見たのは、ただの夢だったのか?
本当に魔王だったのだろうか……?
こうして実際に魔王城に着いたから、単なる夢ではなかったのかも。
よく分からないけど、呪いの効果がまだ残っているのは間違いない。
 で……いつまで呪いの効果は残っているんだろう?
俺は自分のチンコをチラっと見た。
周りには誰もいないから大丈夫。
……あっ! ない!
魔王に付けられた印がないぞ……!
呪いの刻印が消えている!!
やった! やったぞ……!
ついに! 本当に射精ループの呪いから解放された!!
あ……いや、魔王が死んでしまったことを実感してしまうので悲しくはあるけどね……。
 そんな悲しい気持ちを心の中にしまい、俺は部屋から出た。
そして魔王城の中を歩いた。
俺が会うべき相手は……スカーレンだな。
スカーレンの部屋はどこだろう?
よし……魔力を感知しよう。
さすがにスカーレンの魔力は分かるぞ。
何度も感知してきたからね!

 俺は部屋を出た。
そして、相変わらず薄暗い魔王城の中を走り回った。
他の魔族に見つかると厄介なので、隠れながら探した。
慌てて手にした勇者の聖剣があるけど、戦ったりはしない。
俺の目的は魔族と人間の和解だからな。
ちなみに、先ほどまで野宿をしていたので鎧は装備していない。
布の服だけなので心配である。
 スカーレンは……この部屋だろうか?
魔力を感知し、彼女がいると思われる部屋に到着したぞ。

「スカーレン……俺だよ。アキストだ」

 俺の声を聞いて、スカーレンが部屋から出てきた。

「えっ!? ア、アキスト……!? 大丈夫でしたか?」

 俺の顔を見て驚く。

「あ……あんまり大丈夫じゃないかな? 向こうで俺は裏切り者……いや、犯罪者扱いだ。もう勇者の称号も剥奪はくだつされてしまったよ」

「えっ!? そんな大変ことになっているなんて……!! では……どうやって魔界まで来たんですか? あ……まだ魔法陣が機能しているんですか?」

「いや、もう俺は魔法陣を使わせてもらえるような状況じゃないんだ……。じつはね、魔王の呪いの効果がまだ残っていたんだ。アソコの印が残っていたんだよ。だから射精してみた。そしたら、ここに来ることができたよ」

「そ、そうだったんですね! じ、自分で……したんですよね!? 他の誰か……例えばケーミーさん……」

「自分自分! もちろん自分でしたんだよ!」

 スカーレンが疑ってきて可愛いぞ。

「わかりました……。ちょ、ちょっと待ってください! 呪いの効果が残っているって言いましたよね!? では、魔王様は……? 魔王様が生きているってことですか……!?」

「魔王は……死んでしまっているよ。呪いの効果が少しだけ残っていたんだ。今はもうアソコの刻印は完全に消えてしまったし……」

「……そうでしたか」

 スカーレンが残念そうな顔をしている。
うつむいてしまったぞ。

「スカーレン……大丈夫? 魔王があんなことになってしまって……」

「え、ええ……。私は……魔王様を恨む感情がありました……それでも……この気持ちはなんでしょう? 悲しいんです。そして、魔王様を討ったあの人間の女性が……いや、もう今は……人類が憎いんです」

 スカーレンがとても悲しそうだ。
悲しさと同時に、怒りも伝わってくる。
魔王が殺されたときに、スカーレンは怒ってカリバデスに攻撃を仕掛けていた。
いじめっぽいことをしていた魔王とは言え、やはり尊敬していたんだな。
四天王に上り詰めるところまで育ててもらった恩があるのだろう……。

「うん……そうだよね。なんだかんだあったけど……俺も魔王には生きていて欲しかった。守れなかったことを残念に思う。……こんな形で決着がつくなんて思ってもいなかったな。魔王と話し合いたかった……」

 俺の言葉を聞いて、スカーレンはゆっくりと頷く。

「……はい。アキスト……私はどうしたらいいのか分かりません。ただただ人間が憎いんです。あなたを迫害しているところも憎いです。……魔族たちはサリーヌを中心に総攻撃を仕掛けるつもりです。私はまた……仲間外れですけど」

 あ……情報が遮断されているのか。

「仲間外れか……俺もだね」

 居場所がないのは俺も同じ。
勇者じゃなくなってしまったし……。

「そ、そうですよね……」

「……俺は、スカーレンと一緒にいたい。これ以上、魔族にも人間にも被害を出したくない。……和解が1番だと今も思っている。スカーレンと一緒に和解を目指したいんだ。……協力してくれる?」

 俺の言葉を聞いて、スカーレンが再び俯く。

「私は……人間が憎い……」

 うぅっ……つらそうだ……。

「憎いん……です。人間は憎いけれど、アキスト……あなたも人間ですね。ケーミーさんとも仲良くなりましたし」

「スカーレン……」

 俺の呼びかけに反応し、彼女は視線をこちらに向ける。
真剣な表情で、ゆっくりと俺に語りかける。

「わかっています。……和解協定を結ぶのが、一番理想的な形ですよね」

 スカーレンが人間への憎しみを抱きつつも、平和な世界を目指すほうにかじを切ってくれた。
俺とケーミーとの関係があったおかげで、なんとか納得してくれたようだ。

「……ありがとう、スカーレン。魔族と人間の戦いは……止める。結局、魔王の協力は得られなかったし、彼女が殺されてしまったから、戦いは止められないかもしれない。人間の国王様たちも俺の意見に否定的だったしね。……けど、最後まで足掻あがくよ」

「そうですね……もう魔王様はいない。……けど、やるだけやりましょう」

「スカーレン……本当にありがとう。和解に協力してくれて」

「アキスト……こちらこそかもしれません。あなたのおかげで、私は人間に対する怒りを抑えることができます。怒り任せの暴走を抑えられるんです。……あなたがいて良かった」

 スカーレン! う、嬉しいぞ……!
けど当然、人間に対して思うところはあるよね。
魔王が……殺されてしまったんだ。
なんとも言えない気持ちだ……。
言葉でやり取りしていても、スカーレンの不安は拭いきれないかもしれない。
俺はスカーレンに接近した。

「えっ!? ちょっ……アキスト!?」

「本当に……嬉しかったから。……俺にもまだ仲間がいてさ」

「そ、それはお互い様なんですけど……。あの……なんでそんなに接近してくるんですか? ま、まさか……このタイミングで!?」

「大丈夫だよ……」

 そう言いながら、俺はスカーレンの腰に手を回す。

「な、なにが大丈夫なんですか!? あなたはいつも大胆ですね……!」

「これが俺の覚悟だ。スカーレンと一緒に生きていく。魔族と人間の和解も目指す。スカーレンにも、俺のことを受け入れて欲しい」

「ア、アキスト……! ……そうですか。魔族である私とともに生きていく覚悟を証明するために……私を抱くということですね? あの……人間達に追い回されているから仕方なく……というわけではないですよね?」

「そんなわけないよ! 河原で伝えたでしょ? 好きなんだよ。あのときからブレていないよ」

「……確かに。アキストから告白してくれましたね」

「うん。両思いで、さらには魔族と人間の和解に対して理解を示してくれる。俺はとても嬉しいんだ」

「アキスト……。私はですね……アキストが私を認めてくれることが嬉しいんです。きっかけはそれです。デヴィルンヌと戦ったときに、それを感じました。今も……あなたが私を認めてくれていることは感じています」

 スカーレン……嬉しそうだ。
そうだったね。
それは前にも言ってくれた。

「うん……スカーレンがそう言ってくれることも嬉しい」

「アキスト……あなたの覚悟、受け取りましょう」

 俺はスカーレンを抱き寄せて、キスをした。
信頼関係があるので、今回は舌を入れよう。
ド、ドキドキするぜ……!

「あ……そ、そんな……アキスト……積極的……」

 スカーレンがディープキスを受け入れてくれた!
ありがとう、ありがとう、スカーレン……!
しばらくキスした後で、俺は彼女の真紅の着物を脱がす。
あ……真面目な愛情モードから急にエロモードになってしまう!
何度も想像したスカーレンの着物姿・着崩しバージョン!!
……いいねえ! おっぱい!
スカーレンのおっぱい……!!
俺は彼女の白色のブラジャーを脱がし、おっぱいを揉み、そして顔を埋めた。
顔を埋めながら、おっぱいを揉み続けたぞ。

「ア、アキスト……! 本当に……胸が好きなんですね……」

 ……や、やばい。
身体目当てだと思われそうなぐらい、おっぱいに執着し過ぎているか?
純粋な愛情のつもりなんだけど、エロが先行してしまう……。

「お、おっぱいだけじやないさ! スカーレンのことを好きだからね、本当に!」

 俺はしゃがみ込み、スカーレンの局部を舐めようとする。
前回と同様に、彼女の着物の中に頭を入れたのだ。
着物はので簡単に頭を入れることができる。
両手で白色のパンツを脱がし、アソコに顔を近づける。
スカーレンのアソコ、股、そしてフトモモ……エッチだ。
俺は彼女の秘部を舐める。
スカーレンは立ったままだ。

「ま、また……!? またそのパターンですか、アキスト……!」

 前回と同じ感じになってしまったか……。
童貞なのでバリエーションの少なさは勘弁して欲しい。
けど、この前クンニされて、スカーレンは気持ち良さそうだった。

「あっ! また! アキスト……! あぁんっ! そ、そこは……!! そこは本当に気持ち良いんですぅ……」

 前回、スカーレンが感じるポイントはだいたい把握した。
その位置を思い出して、必死に舐めているぞ。
とにかく、この位置を舐め続けよう。

「……アキスト、アキスト……すごい良いですぅ……!」

 スカーレンの声が大きくなる! 
身体がフラフラしてきたぞ!?

「あ……あぁっ! も、もう……立っていられません……」

 脚が……ガクガクしているぞ!
スカーレンがどんどん気持ち良くなっているに違いない!

「あんっ……! アキスト……! 私のベッドが……ありますよ」

 そうだ……ここはスカーレンの部屋。
前回の河原とは違う。
 俺はスカーレンをベッドに押し倒した。
そして、すぐに布の服を脱いで裸になった。
スカーレンに触られてすらいないけど完全に勃起の状態だ……。
魔界に来る前にオナニーしたけど、フル勃起だよ……!
30代に突入した俺だけど、精力はまだまだあるんだぜっ!!

「挿れるよ、スカーレン……」

 髪も着物も乱れた仰向けのスカーレンが綺麗だ……!
俺を……受け入れている!!

「はい……どうぞ、アキスト……」

 は、入った……!
俺のフル勃起チンコをスカーレンのアソコに挿入したぞ!
な、なんて気持ち良さ……!
これが……セックス!
スカーレンの温もりが伝わって来るぞ!
 俺は懸命に腰を振る。
初めてだ……よく分からないけど、今までしていた妄想を頼りに腰を振った。

「あ……き、気持ち良い……」

 俺の腰振りにスカーレンが反応する。

「スカーレンッ! スカーレン……!!」

 俺はスカーレンを突いた!
彼女は完全に俺を受け入れたのだ……!!

「あぁっ! スカーレン! 気持ち良いよ! スカーレン!!」

 もはや着物を着ているのか着ていないのか分からない状態のスカーレンがエロ過ぎる。

「出るっ! 出ちゃうっ!! スカーレン……!!」

「ア……ア……アキストッ!!」

「スカーレン! す、好きだ……!! で……出る……!」

 俺は射精した……!!
スカーレンの中に!!
き、気持ち良かった……!
射精した俺は、スカーレンの上に覆いかぶさる。
お、俺……イクの、早かったよね……!?
早過ぎか……?
スカーレンは不満だったかもしれない……。

「……アキスト。あなたの覚悟、受け取りました」

 耳元でスカーレンの声がする。
う、嬉しい……。
大丈夫だったようだ。

「はぁっ……はぁっ……。ありがとう……スカーレン……」

 あ、あれ?
息が切れているぞ。
ふだん使わない脚の筋肉を使ったようだ……。

「私も……アキストに感謝しています。私を認めてくれたあなたに……」

 スカーレンが泣きそうだ。
なんか……本当につらかったんだろうな。
誰も認めてくれなくて。
まぁ、俺もあまり認められてはこなかったよな……。
とくにグリトラル王国は本当にひどい。

「俺も……スカーレンが認めてくれて嬉しいよ。もう向こうでは、勇者としては認めてもらえなくなっちゃってさ」

「……私の中では、あなたは勇者ですよ。周りがなんと言おうとも、聖剣を手に突き進むんですから。次は和解に向けて」

「ああ……もちろん。俺はこの戦いを止める。スカーレンと一緒にね」

「はい。魔族と人間が一緒に生きる道を行きましょう」

 俺には勇者の力がある。
勇者の聖剣があるんだ。
まだ……やれる!!
スカーレンと2人で。
 ……あ! いや、ケーミーもいるよ!
スカーレンとの愛に溺れてしまって、忘れていたわけじゃないよ!
って、やばい……ケーミーを地上に置いてけぼりにしてしまっているな!


---


 初めてのセックスに疲れてしまったのか、俺はベッドの上で少し眠ってしまった。
彼女と一緒に生きていく……そんな覚悟を決めたセックスをしたんだ。

「……アキスト! 起きてください!」

 隣からスカーレンの声がする。
スカーレンに起こされるなんて、なんという嬉しい状況……。
けど、やたらと声が大きいぞ?
彼女が焦っていることが分かる。

「スカーレン!? ……どうしたの?」

 な……なんだなんだ!?
目を開けてみると、彼女は深刻そうな表情をしていた。

「私も眠っていたのですが、城内が騒がしくて目覚めてしまいました! 城の様子がおかしいんです!」

 ……ん?
城内が騒がしい!?
耳を澄ましてみると、確かに騒がしい!
爆発音や叫び声がするぞ……!?

「……確かに! な、何が起こっているんだ!? ……戦闘か!?」

「分かりません! ……行きましょう!」

 俺は布の服を着て、勇者の聖剣を右手に握りしめた。
鎧は地上に置いてきてしまった。
防御力が低いけど……致し方ない。
 スカーレンは真紅の着物をしっかりと直して刀を持つ。
一緒に部屋を出たぞ。
廊下には戦っている人達が大勢いた!

「ど、どういうことだ!? 魔族と……人間の兵士が戦っている!? えっ!?」

「そんな!? なぜ人間が侵入しているのでしょう!? あ……! アキスト! 魔法陣かもしれません!!」

「魔法陣!? ……そうか! ボルハルトの魔法陣か!」

 おそらくこの人間達は……グリトラル王国とスワン王国の兵士達だ。
地上の最果てから侵入して来ているのだとしたら、いくらなんでも早過ぎる。
侵入手段はボルハルトの魔法陣だ……!
 俺とスカーレンはボルハルトの部屋に向かって走った。
魔族であり四天王であるスカーレンが狙われるが、瞬間移動で巧みに攻撃をかわし、目的地まで走り抜けた。
あと、みんな俺のことを勇者って気づいていないぞ!
鎧を装備してないからか?
俺って華がないからな……。

「あ……! 魔法陣が光っている!?」

 ボルハルトの部屋に到着すると、魔法陣が光り輝いていた。
誰も魔法陣の上にはいないのに……!!

「アキスト……! これは……魔法陣が解放されていますね!?」

 か、解放……!?
スワン王国の城と魔王城は出入り自由の状態ってことか!?
ボルハルトが解放したのだろうか?
この部屋には見当たらないので、向こうにいるのか……?
それとも、すでに魔王城の中に?
スカーレンが何かに気づいて低姿勢で構える。

「に、人間……!?」

 突然、魔法陣から兵士達が出てきた!
人間の兵士だ!
10……いや20人!?
どんどん出てくる!
す、すごい人数だぞ!?
やはり……スワン王国とグリトラル王国の総攻撃ってことか!?
 現れた兵士達がこちらに気づく!

「前方に魔族だ!」
「あの魔族……四天王じゃないか!?」
「突撃しろ……!!」

 スカーレンを狙っているぞ!?
やはり俺のことは気づいていないようだな!?
鎧を装備していないから威厳がないのか……。
こ、このっ……!!
そんなに俺は影が薄いか!?

「す、すごい殺意ですね!? これが……人間の脅威!」

 そう言いながらスカーレンが消える。
瞬間移動で部屋の奥の方に移動したぞ。
魔法陣の向こう側である。
人間の兵士達は気づいていない。
あ……俺らに続いて、部屋の中に魔族の兵士がたくさんやって来た。
男の魔族達だ!
あいかわらず筋骨隆々きんこつりゅうりゅうだな……。
人間の兵士達と戦う者もいれば、魔法陣の上に立ち、そのまま消えてく者もいた。

「あっ! アキスト! 我々の兵士も地上に!」

 スカーレンが叫ぶ。
ああ……!! どんどん地上に魔族が転移していく!
人間側が数で圧倒しているが、戦闘力的には魔族の方が明らかに高い。
地上に魔族がどんどん行ってしまったら……危険過ぎる!

「まずいな……!!」

 これは……魔族と人間の全面戦争が始まってしまう!
……ど、どうする!?

「アキスト……だって!? 今、アキストと言ったか!?」
「元勇者のアキストがいるぞ!!」
「なぜ魔王城に!? 一体どうやって……!?」

 人間の兵士達が叫んでいる!
バ、バレてしまった……!!
やはり……グリトラル王国とスワン王国の兵士っぽいぞ!?
あ! 見たことある顔の人もいるぞ!
やはり彼らの戦力では、モンスターはともかくとして、魔族の兵士を相手にしたら部が悪いでしょ?
こんな無謀な作戦を立てるなんて、どうするつもりなんだ……!?
あ……そうか、カリバデスがいるんだな?
向こうに帰ったとき、彼女は牢屋行きにされたと聞いた。 
この作戦を実行するために牢屋から出したんだな!
そもそも彼女は魔王討伐に成功したわけだしね。
じゃあ俺は……カリバデスを何とかしないと!
ど、どこにいる……!?

「元勇者の捕獲よりも魔王軍全滅を優先しろ!」
「カリバデス様に続けー! 魔族を根絶やしにするぞ!!」
「魔族と魔界の資源を地上に……!!」

 なんか怖いことを言っているぞ!?
狙いは……魔王軍の全滅!?
まさかこんな大胆な作戦を考えているとは!
そうだよね……魔法陣でスワン王国と魔王城が繋がっているんだから、思いつく作戦だよね。
な、なんで気がつかなかったんだ、俺!
サリーヌ達も気づいていなかったか……。
まぁ、魔王が殺されて大変だったのだろう。
 って、この兵士たち……俺のことは無視か!
そしてカリバデスは魔王城に来ているようだ!
しかも呼び方が、カリバデス……様!?
人間達の会話を聞いたスカーレンが焦る。

「カ、カリバデス……! 魔王様を殺した……あの人間の女性ですね!? ……私はサリーヌのところに行きます!! おそらく彼女はサリーヌの首を狙っているはず!」

 今の魔王軍のトップはサリーヌだからってことか……?
人間の兵士達はもう、狂気に満ちている。
もうこの熱気というか勢いが怖い!
 そして、魔族側は地上に攻め込んでしまっているぞ……!!
ここまでの戦いが繰り広げられてしまうなんて!
和解に向けた交渉は……無理か!?

「わかった! 俺も一緒に行く……!」

 カリバデスさえ抑えれば、まだ何とかなるかもしれない!
あ! あと厄介そうなのは、聖属性の攻撃を使えるボルハルトだけど……。
彼はどこにいるんだろう?
魔王城に来ていて、人間の兵士達と一緒に戦っていたら厄介だぞ。
 というわけで、俺とスカーレンは部屋を出てサリーヌのところに向かった。
スカーレンは人間の兵士達に狙われているが、彼女にとって彼らの攻撃を避けるのは容易なことである。

「カリバデス……前回、彼女の背後を取っても先に攻撃されましたからね……。彼女は強敵です。サリーヌはどこにいるのか……」

 横を走るスカーレンが心配そうにしている。
そう……カリバデスは本当に強敵なのだ。
俺は彼女を制圧できるのだろうか?

「うん……接近戦だけではなく、あの聖属性の攻撃も広範囲だしね。そうだ……ちょっと待って、彼女たちの魔力を感知してみる。もう1人の四天王……ミアリもいると思うから、大きな魔力が3つ集まっているところを探せば場所が分かると思う」

 和解を諦めてはいけないぞ……俺!
人間側で脅威なのはカリバデス……彼女だけだ。
魔王軍を壊滅させる実力をもっている。
彼女を制圧し、サリーヌと話し合えば……あるいは……。
そんなことを考えていたが、この正面衝突……生々しい魔族と人間の殺し合いを目の当たりにして自信がなくなってきた。
こんなにも大人数での正面衝突……まさに戦争だ。
こんな大戦争を止めることは……容易ではない!
 そんな気持ちを胸に、スカーレンと一緒にカリバデスのところに向かった。
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