わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

文字の大きさ
26 / 64
第四章

26・自分のルーツ

しおりを挟む
 驚くキイロに、おぼろは続けた。

「今更ですから、ぶしつけながら申しますと、あなたのお父様のレベルで現状の職につけているのは、末端とはいえ『我々の一族であった』からの待遇に他なりません」
「でも、父にはそんな能力はありませんでしたし」

 すると朧はふっと笑った。

「当然でしょう。なぜなら、あなたの父は、我々と何の関係もない。あなたのお母様こそが、我々の一族の関係でした」
「―――――え?」
「あなたは自分の名前を失っている。だから、そんなにも力が弱い。とはいえ、そこまで名前を縛られてなお、能力が出せるのは、素晴らしい事だと思うのですが」
「名前?を失っている?」
「そうです。あなたの名前は、今の名前と全く関係がありません。蘇芳家はあなたのお父様の名字、しかし本来の母方の名前は違うはず」
「そうなんですか?」

 そういえば、キイロは母の名前を知らない。

(え?待って?)

 いくらなんでも、母親の名前を知らないなんてありえない。
 でも思い出すのは、にっくき義理の母の名前ばかりで、実の母の、名前も、顔も、なにもかも思い出せなかった。

「あなたの名前を変える事で、我々の目からあなたを隠し、そしてあなたの記憶も奪った。あなたを探すのは、けっこう苦労しましたよ」
「私の名前が変わっただけで、そんなにも?」
「ではお尋ねします。あなたの『今の』お名前は?」
蘇芳すおう、キイロ、です」
「では、蘇芳とはどなたの名字ですか?」
「どなたの、って……それは、父の」
「いえ、違うんです。蘇芳家とは何のゆかりもないんです」
「―――――え?」

 ますますキイロは混乱した。

「蘇芳家は、実は南の一族の末裔でもあるのです。ただ、あなたのお父様は名前の割に、あまりに蘇芳家としてはおかしいので調べさせて貰いました。あなたの義理の母は、以前、蘇芳家の人間に無理やり『養子』としてもぐりこんでいた。自分の息子を含め、です。蘇芳家のある遠縁の老婆に取り入って、無理に自分を養子にさせ取り入り。やがてあなたのお父様に目をつけ、再婚。そして蘇芳の名前へ変わった」
「ということは、蘇芳は義母の名前なんですか?」
「ええ。あなたのお父様は、そちらのほうが名前の力が強い事を知って、あなたのお母様の立場と、蘇芳家の妻、という肩書も同時に使っていまの場所まで出世しました。実力はそこまでではありませんがね」
「そんなこと、知らなかった」
「それはそうでしょう。あなたはまだ子供だったんですから」

 知らない間に自分の名前がいくつも変わり、しかもよく覚えてすらいないという事実にキイロは驚く。

「だったら……わたしは、自分のルーツとなる名前ではなかった、という事ですか?」
「ええ」

 朧は頷く。

「わたしがあなたと初めて会った時、あなたは別の名前で呼ばれていましたよ」
「別の名前?」
「あなたの本当の名前です。いまの、そんな馬鹿げた呼び名ではなく」
「バカげた……」

 キイロは自分の髪をゆっくり撫でた。
 黄色い髪をしていたから、お前の名前はキイロなのだと言われて、それを本気にしていた。

「わたしの、本当の名前は違うんですね」
「ええ。でもその名前を、いま告げる訳にはいきません」
「なぜですか?」
「―――――そのうち、自分で思い出すでしょう。そしてそのほうが、あなたに負担もかからないし、能力も全てもとに戻るはず」
「能力……」
「あなたには素晴らしい能力がある。でも、それも諸刃の剣となってしまう。あなたがこれまで、ろくな目にあわなかったのはそのせいです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

『ひまりのスローライフ便り 〜異世界でもふもふに囲まれて〜』

チャチャ
ファンタジー
孤児院育ちの23歳女子・葛西ひまりは、ある日、不思議な本に導かれて異世界へ。 そこでは、アレルギー体質がウソのように治り、もふもふたちとふれあえる夢の生活が待っていた! 畑と料理、ちょっと不思議な魔法とあったかい人々——のんびりスローな新しい毎日が、今始まる。

そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~

みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。

【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました

きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

処理中です...