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第九章
57・キイロの能力
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驚いて朧を見つめた。
朧は嬉しそうに微笑んだ。
「そうですね。じゃありん様のために我が家でもソーダが提供できるのか、青白に聞いてみましょう」
なにごともおこらなかったかのように朧がそう言って、キイロは自分の勘違いかな?とすら思った。
困惑していると、ドアがノックされた。
「おい朧、入って良いか。嫁さんとよろしくやるなら家に帰れよ」
「ひどいな。そうしたいけどまだ帰れないだろ」
軽口を叩く朧に、縹がドアを開けた。
「やっぱり。まだ薬飲んでないだろ」
呆れて言う縹に朧は「悪い」と苦笑した。
「家に奥さんを返す必要があるだろ?迎えをよこすように伝えてあるからな」
「悪いな。なにもかも」
「気にするな。それよりゆっくり休んで貰え。明日か明後日には、帰っていいんだが」
そんなふうに病室で話していた時だった。
車の音がして、早速迎えがきたのかと思っていた。
「割と早かったのか?」
「そうみたいだな」
そうして話していると、車の音は次々に激しくなり、人が入って来る音がする。
何事だと思っていると、朧の病室に慌てて朧の部下が入って来た。
「失礼します!なぜか警察の」
そこまで言った所で「どけ!」と部下は突き飛ばされた。
「いい格好だ。さっさとこっちに来てもらおうか」
横柄な態度の警官に、縹は露骨に表情をゆがめた。
「何の用だ。誰の許可でこの病院に入って来た」
「お前ごときに答える筋合いはない」
ふんと進んで来る横柄な警官に朧は笑った。
「とうとう警官の『フリ』までしている連中を使って来たのか」
すると横柄な警官はびくっと肩を揺らす。
「お前はいいように使われているだけだぞ。命が惜しいならさっさと逃げろ。縹、どうも手段を選んでいこなくなったぞ」
「ああ、そういう事。だったらこっちも遠慮なしで良いってことか」
ゆったりと縹が手をかざした。
「警官でないなら遠慮はないな」
そういって縹が手を軽く振ると、いきなり目の前の連中が肩を押さえた。
「な、なんだ?」
「出て行け」
縹の命令に、かっとなった警官は銃を構えた。
すると、縹は「愚か者め」と呆れた。
あっというまに銃と、銃を持つ警官の顔の周りに水風船のような塊が出来て、動きを止めた。
警官はもがいていたが、おぼれるように必死に逃れようとするが、のたうちまわるだけだ。
「おい、わかりやすく見せてやってるうちに帰れよ」
縹が言うと、背後に居た警官らが次々に銃を構え、縹を狙ったが、次々に倒れ込み始めた。
「お前たち、ぐずぐずなにをやって……!」
背後から出て来た男は、部下が床に落ちていることに驚きを隠せない。
「なんだ……?一体なにをした!そうか、毒ガスか!」
縹は呆れた。
「だったらこっちもやられるだろ。早くしないと全員陸でおぼれ死ぬぞ。これをみたらお前に命令した連中が、ただの無駄死にさせにきたってわかんないのか?」
「ええい、うるさい、こっちは、人質がいるんだ!」
そういって引きずって連れて来たのは、りんだった。
首根っこを掴まれ、持ち上げられていた。
「りんちゃん!」
「おう、おまえか」
捕まっている、というより抵抗せずにそのままといった風貌なのだが、キイロは目の前の事に驚いて叫んだ。
「なにをやっているんですか!子供に!」
「お前、そんなに怒らんでも……」
りんはそう言ったが、りんの様子でキイロは激高してしまった。
怒りに手が震えて一言静かに「許しません」と呟いた。
その瞬間だった。
ごうっという轟音が響いた。
まるで台風のような勢いのある風が病室に入り込んだかと思うと、ぐるぐると回り、雨風がばちばちと全員を巻き込む。
「うわっ!」
「なんだこれは!」
最初はそう叫んでいた連中も、やがてあまりの雨の勢いに口がきけなくなる。
台風の中のようだと思った朧たちだが、あっというまに海の中と思う程の、水の渦に巻かれた。
朧は嬉しそうに微笑んだ。
「そうですね。じゃありん様のために我が家でもソーダが提供できるのか、青白に聞いてみましょう」
なにごともおこらなかったかのように朧がそう言って、キイロは自分の勘違いかな?とすら思った。
困惑していると、ドアがノックされた。
「おい朧、入って良いか。嫁さんとよろしくやるなら家に帰れよ」
「ひどいな。そうしたいけどまだ帰れないだろ」
軽口を叩く朧に、縹がドアを開けた。
「やっぱり。まだ薬飲んでないだろ」
呆れて言う縹に朧は「悪い」と苦笑した。
「家に奥さんを返す必要があるだろ?迎えをよこすように伝えてあるからな」
「悪いな。なにもかも」
「気にするな。それよりゆっくり休んで貰え。明日か明後日には、帰っていいんだが」
そんなふうに病室で話していた時だった。
車の音がして、早速迎えがきたのかと思っていた。
「割と早かったのか?」
「そうみたいだな」
そうして話していると、車の音は次々に激しくなり、人が入って来る音がする。
何事だと思っていると、朧の病室に慌てて朧の部下が入って来た。
「失礼します!なぜか警察の」
そこまで言った所で「どけ!」と部下は突き飛ばされた。
「いい格好だ。さっさとこっちに来てもらおうか」
横柄な態度の警官に、縹は露骨に表情をゆがめた。
「何の用だ。誰の許可でこの病院に入って来た」
「お前ごときに答える筋合いはない」
ふんと進んで来る横柄な警官に朧は笑った。
「とうとう警官の『フリ』までしている連中を使って来たのか」
すると横柄な警官はびくっと肩を揺らす。
「お前はいいように使われているだけだぞ。命が惜しいならさっさと逃げろ。縹、どうも手段を選んでいこなくなったぞ」
「ああ、そういう事。だったらこっちも遠慮なしで良いってことか」
ゆったりと縹が手をかざした。
「警官でないなら遠慮はないな」
そういって縹が手を軽く振ると、いきなり目の前の連中が肩を押さえた。
「な、なんだ?」
「出て行け」
縹の命令に、かっとなった警官は銃を構えた。
すると、縹は「愚か者め」と呆れた。
あっというまに銃と、銃を持つ警官の顔の周りに水風船のような塊が出来て、動きを止めた。
警官はもがいていたが、おぼれるように必死に逃れようとするが、のたうちまわるだけだ。
「おい、わかりやすく見せてやってるうちに帰れよ」
縹が言うと、背後に居た警官らが次々に銃を構え、縹を狙ったが、次々に倒れ込み始めた。
「お前たち、ぐずぐずなにをやって……!」
背後から出て来た男は、部下が床に落ちていることに驚きを隠せない。
「なんだ……?一体なにをした!そうか、毒ガスか!」
縹は呆れた。
「だったらこっちもやられるだろ。早くしないと全員陸でおぼれ死ぬぞ。これをみたらお前に命令した連中が、ただの無駄死にさせにきたってわかんないのか?」
「ええい、うるさい、こっちは、人質がいるんだ!」
そういって引きずって連れて来たのは、りんだった。
首根っこを掴まれ、持ち上げられていた。
「りんちゃん!」
「おう、おまえか」
捕まっている、というより抵抗せずにそのままといった風貌なのだが、キイロは目の前の事に驚いて叫んだ。
「なにをやっているんですか!子供に!」
「お前、そんなに怒らんでも……」
りんはそう言ったが、りんの様子でキイロは激高してしまった。
怒りに手が震えて一言静かに「許しません」と呟いた。
その瞬間だった。
ごうっという轟音が響いた。
まるで台風のような勢いのある風が病室に入り込んだかと思うと、ぐるぐると回り、雨風がばちばちと全員を巻き込む。
「うわっ!」
「なんだこれは!」
最初はそう叫んでいた連中も、やがてあまりの雨の勢いに口がきけなくなる。
台風の中のようだと思った朧たちだが、あっというまに海の中と思う程の、水の渦に巻かれた。
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