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第九章
58・裏での繋がり
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(木蘭の能力か?それにしても)
すさまじい、なんてものじゃない。
縹がこちらを見て『お前か?』みたいな顔をしているが、朧は慌てて違う、という目で返す。
互いに水の能力はある。
龍の一族は簡単に水に溺れたりはしない。
だが、それにも限界がある。
朧は必死に嵐の中を進んで木蘭に抱き着いた。
『やめなさい、木蘭』
そう言うと、ふっと力が抜け、嵐は風がおさまると部屋中を水浸しにしていた。
あっけにとられたりんはずぶぬれで、「うーん、凄いな」と他人事のようにキイロを見上げた。
一番あっけにとられていたのはキイロ本人で、呆然と立っていた。
警官らが次々に起き上って、どうやら命を失ったものはいないようだと朧はほっとして、キイロを抱きしめていた手を緩めた。
「朧様、わたし」
「大丈夫。なにも悪い事はおこっていない。君のおかげで助かったんだよ」
本当だろうか、とキイロは思った。
あまりのことにがたがた体が震えたが、縹が言った。
「君がやらなければこっちがやってただけの話だ。それになんというか、あれだけの事をやって全員生きているのは中々凄い」
縹はそう言って、キイロにウィンクした。
「優しいんだな」
「そんな、」
しかし、体の震えはおさまっていた。
ずぶ濡れのキイロの着物の袖を、くいくいとりんが引っ張った。
「われがわるい」
「え?」
「はやく逃げればよかった。あの程度、へっちゃらだと思った。心配かけてすまぬ」
ぺこりと頭を下げるりんに、キイロはそっと抱きしめた。
「あなたが無事で良かった」
するとりんは、キイロに甘えるようにぎゅっとしがみついた。
殆どの警官は気を失っていたが、縹がリーダー格の男だけ、叩き起こした。
「おい!目を覚ませ!」
ばちばちと乱暴に叩くと、男は目を覚ました。
驚く男に朧が言った。
「お前らは潤朱からの差し金だな?」
「―――――……」
「言わなくても判っている。伝えろ、次は家を巻き込むぞ、と。思ならそれで理解する」
「我々は」
「無関係とは言わせない。関わった時点で同罪だ。橡局長とつるんでここまでやるとは」
「ま、待て!なんだその話は!どうして橡局長が出てくる!」
「とぼけるな。お前たちはグルなんだろう」
「待て、本当に知らない!俺たちは潤朱様の命令でここに薄氷の君がいるから、どんな手段を使っても奪って来いと」
「じゃあなぜりん様を誘拐しようとした」
「たまたまだ!薄氷の紋章が入った車から出て来たから、関わりのある子供なら人質になると思っただけだ!」
焦って喋る男に、朧と縹は顔を見合わせた。
「驚いたな。本当に無関係なのか?」
「あ、当たり前だろう!なぜ橡局長が出てくるんだ!」
「潤朱家なら関わりもあるだろう」
「ふ、ふざけるな!我々がそこまで関りあるなど」
「まあいい。話を詳しく聞けば良い事だ」
「朧様!」
「ああ、舛花、丁度良かった。まずこれを確保して、その後潤朱に連絡を頼む」
「はっ、こいつらを全員確保しろ!」
「はっ」
舛花の命令で部下たちが一気に警官らを拘束し始めた。
「なあ朧、本当だと思うか?」
「ま、あいつがそこまで知らない、というのはあるかもしれない。ただ、確かに橡局長と思が繋がっているのは少々、強引な気もしていたが」
さて、と縹は言った。
「これじゃお前の入院もできないな。屋敷に帰るか?」
「そうさせて貰おうかな」
はは、と苦笑した朧は肩の痛みを思い出した。
「痛、」
「朧様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
すると、りんが言った。
「ちょっとかがめ」
りんの命令に朧は従い、膝をついた。
するとりんは「だまっておれよ」と朧の肩に手を入れた。
「りんちゃん!」
「黙っておれ、と言ったじゃろう。いまのわれなら、多分できる」
すさまじい、なんてものじゃない。
縹がこちらを見て『お前か?』みたいな顔をしているが、朧は慌てて違う、という目で返す。
互いに水の能力はある。
龍の一族は簡単に水に溺れたりはしない。
だが、それにも限界がある。
朧は必死に嵐の中を進んで木蘭に抱き着いた。
『やめなさい、木蘭』
そう言うと、ふっと力が抜け、嵐は風がおさまると部屋中を水浸しにしていた。
あっけにとられたりんはずぶぬれで、「うーん、凄いな」と他人事のようにキイロを見上げた。
一番あっけにとられていたのはキイロ本人で、呆然と立っていた。
警官らが次々に起き上って、どうやら命を失ったものはいないようだと朧はほっとして、キイロを抱きしめていた手を緩めた。
「朧様、わたし」
「大丈夫。なにも悪い事はおこっていない。君のおかげで助かったんだよ」
本当だろうか、とキイロは思った。
あまりのことにがたがた体が震えたが、縹が言った。
「君がやらなければこっちがやってただけの話だ。それになんというか、あれだけの事をやって全員生きているのは中々凄い」
縹はそう言って、キイロにウィンクした。
「優しいんだな」
「そんな、」
しかし、体の震えはおさまっていた。
ずぶ濡れのキイロの着物の袖を、くいくいとりんが引っ張った。
「われがわるい」
「え?」
「はやく逃げればよかった。あの程度、へっちゃらだと思った。心配かけてすまぬ」
ぺこりと頭を下げるりんに、キイロはそっと抱きしめた。
「あなたが無事で良かった」
するとりんは、キイロに甘えるようにぎゅっとしがみついた。
殆どの警官は気を失っていたが、縹がリーダー格の男だけ、叩き起こした。
「おい!目を覚ませ!」
ばちばちと乱暴に叩くと、男は目を覚ました。
驚く男に朧が言った。
「お前らは潤朱からの差し金だな?」
「―――――……」
「言わなくても判っている。伝えろ、次は家を巻き込むぞ、と。思ならそれで理解する」
「我々は」
「無関係とは言わせない。関わった時点で同罪だ。橡局長とつるんでここまでやるとは」
「ま、待て!なんだその話は!どうして橡局長が出てくる!」
「とぼけるな。お前たちはグルなんだろう」
「待て、本当に知らない!俺たちは潤朱様の命令でここに薄氷の君がいるから、どんな手段を使っても奪って来いと」
「じゃあなぜりん様を誘拐しようとした」
「たまたまだ!薄氷の紋章が入った車から出て来たから、関わりのある子供なら人質になると思っただけだ!」
焦って喋る男に、朧と縹は顔を見合わせた。
「驚いたな。本当に無関係なのか?」
「あ、当たり前だろう!なぜ橡局長が出てくるんだ!」
「潤朱家なら関わりもあるだろう」
「ふ、ふざけるな!我々がそこまで関りあるなど」
「まあいい。話を詳しく聞けば良い事だ」
「朧様!」
「ああ、舛花、丁度良かった。まずこれを確保して、その後潤朱に連絡を頼む」
「はっ、こいつらを全員確保しろ!」
「はっ」
舛花の命令で部下たちが一気に警官らを拘束し始めた。
「なあ朧、本当だと思うか?」
「ま、あいつがそこまで知らない、というのはあるかもしれない。ただ、確かに橡局長と思が繋がっているのは少々、強引な気もしていたが」
さて、と縹は言った。
「これじゃお前の入院もできないな。屋敷に帰るか?」
「そうさせて貰おうかな」
はは、と苦笑した朧は肩の痛みを思い出した。
「痛、」
「朧様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
すると、りんが言った。
「ちょっとかがめ」
りんの命令に朧は従い、膝をついた。
するとりんは「だまっておれよ」と朧の肩に手を入れた。
「りんちゃん!」
「黙っておれ、と言ったじゃろう。いまのわれなら、多分できる」
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