わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第九章

59・呪いの蛇

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 そういっておぼろの肩に手を入れ、ぐにっとなにかを引きずり出した。
 朧の肩から、ずるずると黒い蛇のようなものが出てきて、りんはそれを引き抜くと、ぐるぐると丸めた。

「そ、れは?」
「そちのなかにあった呪いじゃ。しかしこれを消す力はわれにはまだない」

 そういって、捕まえられたリーダー格の男に近づくと、ぐいっと押し付けた。
 途端、男は叫んだ。

「ぎゃあああああ!」

 驚くキイロや朧にりんは「気にするな」と返す。

「あれは元のものに帰る。あれがお前に呪いをかけたのと同じ連中ならなじむ。そうでないなら、逃げる」
「ごぼっ、」

 叫んでいた男の口から、黒い蛇がにょろっと出てきて、するすると逃げていく。

「追いかければ犯人がわかるぞ」

 りんの言葉に朧が叫んだ。

舛花ますはな!」
「追います!」
 いうが早いか、舛花が追いかけて行った。

「成程、本当に知らなかったということか」
「だ、だから、そう」
「ではさっさと帰って思に伝えろ。これ以上邪魔するなと。そう言えば判る」

 男は頷き、やっと気が付いた部下らと慌てて病院から逃げて行った。

「さて、この惨状をどうするか」

 ぽつりはなだが呟くと、キイロは「ごめんなさい!」と頭を必死に下げた。

「よくわかりませんけど、わたしのせいなんですよね?絶対に弁償しますからどうか朧様にご迷惑のかかるような」
「なにを言うんですあなたは」

 朧は呆れて言った。

「あっちが勝手に巻き込んできたんでしょう。あなたが気にする事じゃない」
「でも」
「そうそう、気にしないで。潤朱家からばっちり頂くから。むしろ病院の施設が新しくなって万々歳だ」

 縹に朧が呆れた。

「お前はそんな事を考えていたのか」
「正直改築したかったし」
「ちゃっかりものめ。でも潤朱家ならなんでもないだろうな」

 朧はキイロの肩を抱いた。

「あなたのせいじゃありません。むしろ守ってくださったんですから。りん様、あまり危険なことに参加しないように。彼女は優しいんです」

 珍しく朧がりんを叱ると、りんもばつがわるそうに「わかった」と頷いた。


 病室が壊れてしまったので、朧は予定よりも早かったが、屋敷に帰る事になった。

「帰れるのですね」
「ええ。縹が薬をくれましたし、明日、寄ってくれるそうですから」
「あんなに壊してしまって、大丈夫でしょうか」

 気にするキイロに「心配いりません」と朧は返す。

「元はと言えば潤朱うるしゅ家のせいなので」
「その、潤朱家とは何なんでしょうか」

 キイロが尋ねると、朧は答えた。

「過去、わたしの婚約者だった、と言いふらしているだけです」
「言いふらす?」
「ええ。薄氷家との繋がりを作りたいせいでしょう。わたしが幼いころから潤朱家は娘を利用して、わたしと婚約させたがっていました。勿論、わたしにその気はありませんが」
「でも、あちらは?」

 パーティーでキイロに話しかけてきた、赤い髪の彼女は朧に執着しているようだった。

「彼女はわたしに興味はありませんよ。自分の家で評価されるためにやっているだけです。彼女も憐れではあります。自分の感情より、家のなすべきことを叩きこまれて、ああやって来るんですから」

 でも、と朧は言う。

「さすがに今回はやりすぎだ。よっぽど腹に据えかねたか……」
「彼女は朧様に好意があるのではないのですか?」
「さあ。でも私の気持ちは揺るがないので」

 きっぱりとキイロに朧は告げた。

「何度でも言いますけど、わたしにはあなたしかいないんです。ずっと幼いころからそうでした。だからこの先も、何も変わりません。わたしの妻はあなただけです」

 そういって朧はキイロの肩を抱いた。

「名前を思い出したなら、きっといろんなことを思い出すでしょうし、これまでの呪いの威力も消え始めるはずです。そうしたらあなたに伝えなければならないことが沢山あります」

 朧はキイロの手をぎゅっと握った。

「どうか、ずっとそばに居て下さい」

 朧が呟くと、キイロは小さく頷いた。
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