神の手は祈りの形をしていない 〜「将来、異能力で犯罪を犯す」と予知されて隔離されたボクら。最弱能力で未来を塗り替える〜

陽々陽

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008_失くした記憶と恋

008_4

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あかり「あれが、トーマの記憶の中心ね」

 落下した先、その底には、大きな赤黒い木があった。
 葉が一枚もない、枯れ木……いや、木だろうか?

ユウ「血管、かな?」

あかり「ああ……確かに」

 大木のように見えたそれは、地面から天に向かって生えた血管だった。
 記憶の中心には人それぞれのシンボリックなものが据えられる。
 異能力に傾倒するトーマが、自分の異能力にちなんだものとなるのは、妥当に思える。

 しかし、近づけば近づくほど、そこに異常が起こっていることが明らかになった。

あかり「なによ、これ……」

 その血管の木には、幹と言わず枝と言わず、いたるところに拳ほどの穴が空いていた。

あかり「……こんな、虫食いになってるなんて……」

 あかりはゾッと背中に冷たいものが走るのを感じた。
 今回だけじゃないのだ。トーマが記憶を失ったのは。
 幼少のころから繰り返し、繰り返し記憶を失ってきているのだ。

あかり「ユウ、今からわたしはこの中……もっと深いところに触れるわ。
 100数えたら手を引っ張って」

ユウ「わかった。100だね」

 あかりはその穴の一つに触れ、自分の額をそっとあてた。

********

あかり「……ユウ?起きて」

 あかりの声で、ユウは目を開けた。
 いつの間にか普通に寝てしまったみたいだ。

ユウ「あ……」

 もう、空は白みかけているのだろう。うっすらと明るくなった中、ユウは自らの顔をのぞき込むあかりと目が合った。
 そして自らの頭があかりの膝に載っていることを思い出す。
 胸が高鳴り、あかりから目が離せないーー

こはく「なんか、分かった?」

ユウ「ぽっさむ!」

 横からこはくの声がして、ユウは奇声を上げてあかりの膝から飛び退いた。

こはく「ごめーん、お邪魔だった?」

 こはくは、にまにま笑っている。

あかり「2人とも、シーって」

 あかりは人差し指を立てた。トーマの方を気にしているが、幸いトーマに起きる気配は無い。

こはく「で、どうだった?」

 あまりボリュームを落とさずに、こはくがもう一度聞いた。

あかり「……アリスが原因なのは、間違いないわ……」

 あかりの声は小さい。ユウはベッドの上を移動して2人に近づいた。

こはく「よし、とっちめよう」

 こはくは少し嬉しそうに拳を作った

あかり「しかも、今回だけじゃないみたい。
 もっとずっと前……多分、子どもの頃から何度も、この記憶の喪失が起こっていた……」

こはく「え。2人、幼なじみだったってこと?」

ユウ「知り合いって感じじゃなかったと思う……よく気にかけてるなあって、思ったけど」

あかり「だから、何度も何度もアリスが自分に関する記憶を消して来たんだと思う。

 記憶がなくなる瞬間の情景が、辛うじて残っているところがあったんだけど……
 いつも、アリスとトーマが2人でいるところだったみたい。
 公園の遊具の中だったり、学校の体育館裏や中庭、丘の木の下とか。

 なんのためか、見当もつかないんだけど……」

こはく「そんなのさあ」

 こはくは顔をしかめた。

こはく「告白に決まってんじゃん。

 あの子さあ、トマぴに告白して玉砕するたびに、記憶消してやり直ししてんのよ。それ。
 ヤバくない?」

あかり「……」

 たしかに、そうかもしれない。記憶の喪失は、定期的に発生している。

あかり「……もしそうなら……ちゃんと失恋、させてあげなきゃ」

********

 朝の課題まで、あと一時間ほどだったので、各自部屋に戻って身体を休めることになった。
 ユウが廊下を歩いていると、ノクスが語りかけた。

ノクス(おい……

 あの、あかりには気をつけろよ)

ユウ(?どうして?)

ノクス(お前はのほほんと見てたけどな、あの能力……マジでヤベえぞ。
 眠っている相手なら、深層心理をいじり放題だ。

 どのくらいの精度か分からねえけど、本人に一切気づかれないまま、洗脳したりとかもできると思う)

ユウ(……あかりは、そんなことしないよ)

ノクス(人がどうとかじゃねえよ。やべえ能力だって言ってんだ)

ユウ(……)

ノクス(あとな、お前……忘れてないよな?)

ユウ(え?)

ノクス(ここにいるのは、軒並み将来の犯罪者だぞ。
 状況次第でどうにかなるヤツらだって、そう思っとけよ)

ユウ(……そんなこと、言うなよ)

ノクス(……あ?)

ユウ(そんなこと……言うな!もう二度と!)

 ユウはいらだち紛れに乱暴に部屋のドアを開けた。
 そしてそのままベッドに飛び込む。

ノクス(……ッチ……)

 ノクスの舌打ちにも、ユウは聞こえていないふりをした。

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