【R18】時間を保存しコピー出来るアプリを手に入れて人生バラ色

広東封建

文字の大きさ
26 / 65

26-告白

しおりを挟む

 次の日も、その次の日も―――俺は高根に誘われるがまま、喫茶店に足を運んだ。
 正直気難しい高根に話を合わせるのは骨が折れる。この3日間で、何度タイムリープを繰り返したか分からない。
 やれ高根が尊敬する偉人だとか、誰々が書いたなんとかいう小説だとか、俺の知識を色々試されては、過去に戻ってひたすら勉強した。
 ここまで話を合わせる必要もないように思うが、中山さんが高根の大ファンであり、友達になりたがっていると知れば、下手に好感度を下げるわけにもいかない。

 どこかで軽蔑でもされようものなら、明日からはもう来なくていいと言われてしまう恐れもある。
 そう言われればそれまでだが、俺自身ここまで高根の話に付き合った挙げ句、今更この美女との関係が断たれるのも、どこか口惜しい。

 とはいえ―――3日目ともなると、高根の態度もかなり軟化した。
 最初は高根が振る話題に俺が応える形だったが、時折俺の趣味や好みを訊ねられるシーンも増えてきた。
 ただ俺の趣味なんて、中山さんとひたすらエロいことをするか、チートを使って体を鍛える以外特にないのだが。
 一応エロの部分は省いて、筋トレくらいしか趣味がないことを伝えると―――

「私はそういうストイックな人好きよ」

 軟化どころか、とうとう好きというワードまで飛び出した。
 ストイックとはかけ離れているようにも思うが……
 どうやら高根の中の俺は、ひたすら学問と肉体強化に生きる人間という風に見えているようだ。
 その実、彼女とセックス三昧の生活を送っているだけなのだが。

 いずれにせよ、唐突に出た好意の言葉に俺の心臓は痛いほど飛び跳ねた。

 マジかよ。今好きって、え、あの高根ルイザが!?
 いやいや待て待て、あくまでストイックな人間が好きというだけで、俺という個人が好きとは一言も言っていないぞ。
 焦るな俺。高根ルイザともあろう女が、軽々と俺みたいな奴を好きになるわけがない。冷静になるんだ。

「ねえ時生。あなた―――私と付き合いなさい」

「え、つ、付き合うって……今こうしてお茶に付き合ってるけど……」

 そうそう。こういう勘違いワードを被せられても、冷静な俺はちゃんと別の意味だって分かってる。
 この後は一体なにに付き合えって言うんだ?

「そうじゃなくて―――私の恋人になりなさい、時生」

 間違いない。高根は今、確定的な言葉を口にした。
 しかも「なりたい」という願望ではなく、「なりなさい」という命令系。
 本気で言っているのか?
 あの高根ルイザが、俺を恋人にしようとしているだって?

 にわかに信じがたいが、ニコリと微笑むルイザの目は真剣だ。
 どうやら本気らしい。

「私はね、優秀な人間は同じく優秀な人間と、人生を共に歩むべきだと思っているの。
 あなたが私と共に歩むことを許可するわ。一緒に知見を深め合いましょう」

 俺を優秀だと認めながら、付き合うことを許可するとは、高飛車もここまで極まったかといった感じだが。
 とはいえ昔から天才子役として名を馳せ、そこいらの女など比較にもならない程の美貌を持つ高根ルイザと付き合えるとなれば、喜び極まりないことだろう。だが―――

「き、急に言われても困るな。
 俺達まだ知り合って3日しか経ってないじゃないか。まだお互いのこともよく知らないし―――」

「私のことは3日間で充分知ったでしょう?
 それに時生の知識量が私までとはいかなくても、充分豊富であることは私も分かったわ。
 それ以上のことは、これから知っていけばいいことよ」

 俺の知識なんて、高根の趣味に合わせて急遽こしらえたものだ。その程度で一体俺のなにが分かったというのか。
 俺のことなら、よく知ってくれている女の子が他にいる。

「申し訳ないけど……ルイザと恋人にはなれない。
 俺、他に彼女がいるから」

「あら、初耳ね。まあ時生なら他に女がいても不思議じゃないわ。
 どんな相手なの。同じ大学生?」

「ああ。藍山学院大学に通っている1年生で、俺とは同じ高校に通っていたんだ。
 昔からルイザの熱狂的なファンらしくて、ルイザの話をしたらぜひ会いたいって言ってたよ」

 ここに来てようやく中山さんのことを紹介できた。
 告白を断った後というのはいささかタイミングが悪いが、こうなってしまった以上話すしかない。
 本当ならもっと仲良くなった後で家に誘いたいと思っていたが……

「よかったら今度―――」
「別れなさい、そんな女」

「―――は?」

  今、なんて言った?
 
「別れなさいって言ってるの。そんな底辺女なんて、不釣り合いだわ」

 固まる俺に対し、高根は淡々と言葉を続ける。

 意味が、分からない。
 底辺?
 不釣り合い?
 中山さんは俺なんかと違って努力家で、一所懸命で、自分の力で、昔の俺が入ったところなんかよりずっと良い大学に進んだんだ。
 不釣り合いだとしたら、本当なら俺の方だ。
 なのに、なぜ中山さんを貶すんだ?

 高根の発した言葉の意味が分からず、俺は頭が真っ白になるほど呆然としてしまった。

「どうせそんな底辺女、優秀な時生を自分のものにしようと……粗方下品な体でも使って誘惑してきたんでしょ?
 そんなものに惑わされちゃダメよ。
 性に溺れるなんて、理性のない野蛮人のやることなんだから。
 もし時生がふしだらな女にかまけて時間を無駄にしているのなら、今すぐやめなさい」

 その言葉に、俺の頭が熱くなる。
 確かに高根の言うとおり、俺達は野蛮人のごとく性に溺れている。
 だが―――それでも俺達は、共に深く愛し合う日々にこの上ない幸せを感じている。
 俺達がどう愛し合おうが、他人にとやかく言われる筋合いはない。
 それに、高根ルイザのファンである中山さんのことを、ここまで……ここまで悪く言って、更には別れろだって……?

 勝手が―――過ぎるだろっ!

 中山さんを貶され、言いようのない怒りが込み上げる。
 だが頭の中は妙な冷静さを保ちながら、高根への反論を導き出していた。

「へえ―――じゃあルイザは……セックスしたことないんだ」

 俺は軽く笑みを浮かべながら、高根に向かって問いかける。

「あるわけないでしょ、汚らしいっ。
 性交なんて子供を作る以外意味はないわ。
 そんな行為に溺れるなんて獣よっ。理性ある人間がすべきことじゃないわ」

 すると高根はさも当然といったように答えた。だが頬はほんのり赤みを帯びているように見える。
 すかさず俺は言葉を畳み掛ける。

「なるほど……つまりルイザはセックスを経験していないのに、快楽を求めるセックスは無意味だと結論付けたわけだね」

「そんなの、経験するまでもなく分かるでしょ。理性のある人間は肉体的欲望にかまけたりしないわ。
 それに肉体的快楽なんて、一番野蛮で、怠惰で、非生産的な欲望であることは否定しようもない事実よ」

 高根はきっぱりと断言した。
 まるで自分が絶対的に正しい主張をしていると、信じて疑わない様子だ。

「ところで、ルイザが興味を持ってる量子力学についてだけど―――」

 ここで俺は唐突に物理の話を持ち出す。
 いきなり話題を変えられ、高根は怪訝な顔を浮かべた。

「理論的にその状態を予測されてはいるものの、いまだ観測に至っていない量子スピン液体について、ルイザは理論さえ完成されれば、実験によってその状態を観測する必要はないと思う?」

「そんなわけないでしょ。理論上予測されることと、実際に観測に至るのとでは大きな違いよ。現に光子だって観測結果を測定することによって、初めて量子的な観察者効果が確認されるわけで―――」

「じゃあ、自分が実際にその効果を確認していないにも関わらず、考察だけであたかもそれが真実であるかのように結論付け、実証や実験を蔑ろにする科学者のことを、君はどう思う?」

「そんな人間は科学者の風上にも置けないわね。理論物理学はそれだけで数値解析やシミュレーション、理論の構築という点で重要な研究分野だけど、それらの理論を物理的に実証する実験物理学も、物理学の発展においては必要不可欠よ」

「じゃあ―――快楽を得るためのセックスを経験しないまま、人間に性的快楽は不要だと結論付ける君のことを、君自身はどう受け止めるんだい?」

「そっ、それは……」

 俺は高根が関心を持つ分野から例えることで、高根の浅はかな結論を突いた。

「そ、そんなの暴論よっ。科学の研究とセックスを同一に考えるなんて、飛躍にもほどがあるわ!」

「そうかな。例えばとある研究結果では、セックスにより前立腺がんのリスクが低下するという報告があるし、セックスにより中高年の記憶力が向上するといった研究結果もある。
 これらの研究はあくまでどこに焦点を当てて研究するかによって結果も変わってくるから、セックスのすべてが人間に有益だとは一概にいえない。
 ただ少なくとも、セックスに幸福を感じる人間はたくさんいる。なおかつ薬物やギャンブルのように危険な行為として禁止されておらず、了承し合った成人同士ならば一般的に認められている。更には有益な研究結果まである。
 そんなセックスに対して、一度の経験もせずに自分にとって無価値だと決め付けるのは、あまりにも実証性に欠ける論理だと思うけど」

「うぅっ……」

 ここにきて遂に、あの高根ルイザが口を閉ざした。
 普通に考えれば俺の言っていることはまさしく暴論だ。
 それらしい言葉を並べて、快楽に溺れる自分を正当化しているにすぎない。
 だが高根はその思考があまりにもロジカルすぎるゆえ、自分の関心事から理論を組み立てられると、その考えに縛られてしまうのだ。

「じ、じゃあ……時生は快楽の有用性について実証できるっていうわけ?」

「そうだね。少なくとも無価値ではないってことは、証明できるかな」

 さあ、どう出る。高根ルイザ―――
 俺は網を仕掛け、じわりじわりと高根に詰め寄る。そして―――

「―――わかったわ。そこまで言うなら、一度だけ……それを証明する機会を与えてあげるわ。
 もしそれで私が肉体的快楽に価値を感じなければ、時生はその彼女と別れて、私と学問の道に専念しなさい」

 かかった―――

「分かったよ。それじゃあこの後俺のうちに来てくれる?
 彼女もいるから、そこで結論を付けよう」

「わかっ、たわ」

 高根は顔を赤らめながら、やや躊躇いがちに了承した。
 その言葉を受け、俺は心の中でニヤリと笑いながらガラケーを取り出す。そして中山さん宛にメールを打った。

「今日ルイザを家に連れて帰るよ。
 そこで中山さんの言ったとおり、セックスを毛嫌いしてるルイザに、今夜快楽の素晴らしさを二人で理解らせてやろう」

 すぐさま携帯の着信音が鳴り、そこには画面いっぱいに埋め尽くされたハートマークと共に、「分かったよ♪」と了解の返事が記されていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...