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27-謝罪
しおりを挟む「ただいま~」
「お、お邪魔します……」
玄関扉を開けると、ルイザはやや緊張した様子で俺の後に続いた。
これから性的快楽への有用性の有無について、実体験に基づいて実証するのだ。
いくら科学的論法を用いたとはいえ、要するにエロいことをするためにここに来ているわけだから、処女の高根にとっては緊張して当然だ。
「おかえりなさ~い!」
すると向こうから中山さんが小走りで出迎えてくれた。
今日は来客がおり、しかもその相手が自分にとって熱狂的ファンの有名人ということもあり、中山さんはきっちり私服をめかし込んでいる。
「ほ、本当にルイルイ……ルイルイだぁっ!
わ、私っ……ずっとルイル―――た、高根ルイザさんのファンでっ! な、中山美玖といいます!」
「ど、どうも……高根ルイザよ」
中山さんが興奮した様子で高根の手を取ると、高根も目を逸しがちに自己紹介をする。
すると中山さんの目がパァッと開かれ、心から嬉しそうな笑顔を浮かべた。
やはりぶっきらぼうな高根といえど、いざ自分のファンを目の当たりにすると、邪険にはできないようだ。それどころか―――
「け、結構、可愛いじゃない……」
なにやら悔しそうに褒め言葉を呟いた。
俺の彼女が自分にも勝る美少女だと知り、多少の嫉妬心や敗北感でも抱いたのだろうか。
心なしか高根の目線がチラチラと、中山さんの爆乳に向けられている気もする。
「あ、あのっ……! 実はご飯も用意してあるんだけどっ……も、もし嫌じゃなかったら、た、高根さんも召し上がっていただけませんかっ?」
「そ、そう……じ、じゃあお言葉に甘えましょうかしら……」
低姿勢ながらも一所懸命高根をもてなそうとする気持ちに、高根はもはや当初の予定になかった食事まで受け入れてしまう。
そんな高根の手を嬉しそうに引きながら、中山さんはウキウキとリビングへ招き入れた。
「お口に合うか分かりませんけど、ど、どうぞ召し上がってください」
三人で食卓につくと、そこには豪勢な料理が並んでいた。どうやら憧れの高根を招待するにあたり、随分と腕を振るったようだ。
「いただきまーす」
「い、いただきます」
いつもの俺ならば中山さんの料理を、ここぞとばかりに称賛しただろう。
だが今日はあえて平然と振る舞い、料理に箸をつける。
すると高根も驚いた顔を隠せぬまま、両手を合わせた。
「―――お、美味しい……」
高根は目を見開いて、料理の味を褒めた。
「よ、よかったぁ~」
高根の良い反応に、中山さんは心底安堵したようだ。
二人の様子に俺も自然と顔が綻ぶ。気付けば俺と高根は夢中で料理を口に運んでいた―――
「―――へえ、美玖は文学部なんだ。
小説はどういったものを読むの?」
「東野春樹さんの『秘密の森』とか、伊坂遼太郎さんの『魔王がゆく』とか……
あ、あとは宮部かなえさんの『ソロモンの告白』も好きだよっ。ルイルイは?」
「その小説なら私も好きだわ。その人の作品は『この世の鎖』も、独特な世界観と先の読めないミステリーにとても惹き込まれたわ」
「それ私も持ってる! あれとっても面白いよね!」
気付けば二人は、互いに意気投合し盛り上がっていた。
高根は中山さんがルイルイという愛称で呼ぶことも了承し、自身も美玖という下の名前で呼んでいる。
二人共同い年の女子と趣味が共通したことで、とても楽しそうだ。
やれやれ。先程は怒りに任せて変な方向に持っていこうとしてしまったが、この様子ならそんなことをせずとも、別れろなんて言われる心配もなさそうだ。
予想外に二人が仲良くなったことに、俺は心の底から安堵した。
「―――ごめんなさい」
ふと―――高根がなにやらバツの悪そうな顔を浮かべると、唐突に俺達に向かって謝罪の言葉を述べた。
「え、ど、どうしたの?」
何の心当たりもない中山さんは、急に謝られたことに困惑する。
「私あなたのこと、ふしだらな女だと勝手に思い込んでた。
あなたと話したこともないのに、あなたがこんなに素敵な女性だなんてことも知らずに、色目を使って時生をたぶらかしているなんて―――とても失礼なことを言ってしまったわ。ごめんなさい」
なんと、あの高根ルイザが頭を下げているではないか。
中山さんにとっては寝耳に水だろうが、あの高飛車女があえて失言を打ち明け、そのことを謝罪するなんて、信じられない光景だ。
俺は高根の真摯な態度に感心する。
こういった素直な一面も持っているんだな。これならこれからも友人として、三人で仲良くやっていけそうだ。
「ううん。謝らなくていいよ、ルイルイ」
中山さんも笑顔で高根を許した。
これで一件落着。そう安心したところ―――
「だって―――本当のことだもん」
「「……え?」」
俺と高根の声がシンクロする。そして中山さんから出た予想外の言葉に、俺達は呆然となる。
「満保君はすっごく頭も良いし、とっても魅力的な男の子だもん。
本当は満保君と遠距離恋愛でもいいからお付き合いしたかったけど、私みたいに平凡な女には、遠くにいる満保君の気持ちを留める自信なんてなかった。だから―――
せめて最後に、満保君に抱かれたくて、私から満保君を誘ったの」
中山さんはまるで消え入りそうなほど、寂しげな微笑みを浮かべた。
「み、美玖、そんな嘘付かないで。
今日あなたと話して、あなたがそんなことするような女じゃないってことは、重々伝わったわっ。
も、もし怒ったのなら、もう一度謝るわ」
「そ、そうだよ中山さんっ。中山さんは俺と最後の思い出を残そうとしていただけで、そんな中山さんを俺が、は、離れられないようにしてしまったんだ。
だ、だから誑かしたのは俺だよっ」
あまりにも悲しい自己卑下に、俺と高根は揃って中山さんを庇う。だがそんな俺達に向かって、中山さんは首を横に振った。
「ううん違うの。私が変態だから、あんなエッチなオモチャを満保君に見せ付けてまで、満保君がエッチしてくれるように仕向けたの」
「そ、それは俺が中山さんの部屋を勝手に漁ったからで―――」
卒業式の日。
俺が初めて中山さんの家に訪れた時のことを思い出す。
あの時確かに、俺が中山さんの本棚を勝手に漁り、あの写真とバイブを発見してしまったのだ。もし俺が不躾な行動を取らなければ、結果は変わっていただろう。だが―――
「―――好きな人が部屋に来るのにっ、普通そんな目に付くようなところに、恥ずかしい物なんか置くわけないよっっ!!」
中山さんの叫び声が、部屋に響いた。
俺、そして高根は、あまりにも鬼気迫る訴えに、言葉もなく押し黙った。
「普通だったら……部屋にエッチなものがあったら、ちゃんと見つからない場所に隠すよ……」
中山さんは今にも泣き出しそうな程、くしゃくしゃに笑った。
「満保君がアレを見付けたとき、私……見付かって驚いたような顔してたでしょ?
でも本当は違うんだ。本当はあの日、満保君を家に招いてからずっと……
満保君がアレを見付けてくれなかったらどうしようって―――思ってたのっ!
だから満保君がちゃんと見付けてくれて、私っ……ホッとしたのっ!」
中山さんは肩を震わせながら、両手を握り締めていた。
まさか―――あの写真とバイブが、俺に見付けてもらうために置かれていたなんて……
真実を知った衝撃とともに、あの日のやり取りが鮮明に蘇ってくる。
あの日―――中山さんの方から、俺に全てを貰って欲しいと言われた。
「もし満保君が私のことなんか眼中になくても、これを見せたら、エ、エッチな気持ちになってくれるかなって思って」
あの日―――中山さんの方から、俺の裸を見たいと言われた。
「もちろん自分から直接見せるなんておかしなことはできないし、突然エッチしてくださいなんてお願いしたら、引かれちゃうかもって思って……」
あの日―――中山さんの方から、俺の体に触れられた。
「でも何もしなかったら、満保君とエッチできずにお別れになっちゃうかもって思ったから、どうにかしてエッチの流れに持っていきたくて」
あの日―――
「満保君が私のバイブを見付けてくれて、私が満保君の写真を見ながらオナニーしてるって聞いても嫌じゃないって言ってくれて……
これで満保君にセックスしたいってお願いしても、きっと断られないって……思ったんだ」
中山さんの方から、セックスしようと言われたのだった。
「ごめんね満保君……ずっと本当のことが言えなくて。
もし全部最初から満保君とエッチしたくて仕組んだことっていうのがバレたら、軽蔑されて、満保君が離れちゃうかもと思って、言えなかったんだ……」
下を向いて落ち込む中山さんの姿を見て、俺は―――
『ギュッ』
強く、強く抱きしめた。
「軽蔑なんて……するわけないだろ。
俺は中山さんがエッチな女の子で、最高にラッキーだと思ったんだ。
俺だって、中山さんとセックスがしたくて堪らなかったんだ。
あれが中山さんの仕組んだことだと知っても、興奮しかしないよ」
そう言いながら俺は、中山さんの手を俺のチンポへと招く。
「ほんとだ……すっごく硬くなってる。嬉しいっ」
中山さんは嬉しそうに、俺のチンポを撫で回した。
そんな俺達のやり取りを見ていた高根が―――
「く、狂ってる……狂ってるわよ、あなた達」
わなわなとその身を震わせる。
そして騒然とした表情で、俺達に向けて軽蔑の視線を送っていた―――
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