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第一章【レイシア編】
決闘
しおりを挟む『それじゃあこの辺でやるか』
どうやらジェラルドは道の真ん中で決闘を行うつもりらしい。
行き交う人々は突然の騒動に何事かと集まり始めた。
「どけどけ住人共!」
「ジェラルドさんの決闘だ! 怪我したくなけりゃ近付くんじゃねーぞ!」
ジェラルドの取り巻き達が住人達を押し退けて円を作る。
その中心でジェラルドとシンが向かい合う。
ジェラルドは今回の決闘を周囲にみせつけるつもりのようだ。
「なんだなんだ? 一体何が始まるんだ?」
「あのジェラルドが決闘をやるんだとよ」
「相手はあの若いのか? 可哀想に……あの新人いびりで有名なジェラルドに目を付けられちまったか」
騒動を見守る住人達がシンに対し同情の目を向ける。
ジェラルドの素行の悪さは昔から有名だった。
「いいか? これは正式な決闘だ。両者共に剣で戦い、一方が降参するか戦闘不能となれば決着だ。仮に相手を殺しても罪には問われない。
ただし飛び道具やトラップ、スキル以外の攻撃魔法でダメージを与える事、道具や回復魔法を使って回復する事、第三者が加勢する事を禁止する。
それらを行った時点でその者は敗北を認めたものとする。証人はここで決闘を見守る全ての人間だ。
よろしいですかジェラルドさん」
「ああ問題ない」
ジェラルドの取り巻きの一人が二人の間に立って取り仕切り、ルールの確認を行う。
「そういう訳だ。せいぜい頑張れよボウズ!」
仕切り役はジェラルドの了承を得ると、シンに確認も取らずに煽り文句を述べ、後ろに下がった。
「それじゃあーー始め!」
仕切り役の合図と共に、二人の決闘が始まった。
ジェラルドはゆっくりとミスリルソードを引き抜く。
その顔は自信に満ちている。
「どうしたボウズ、かかってこいよ」
対するシンはロングソードの柄に手を添えたまま、剣を抜こうとしない。
その様子にジェラルドは肩に剣を当てながら首を傾げる。
「どうしたぁ? 怖じ気付いて手も動かないのか?
なら俺から行くぜ!?」
ジェラルドは両手で剣を構えると、勢い良くシンに迫った。
顔をニヤニヤと歪ませたジェラルドがシンの目前まで迫る。
その刹那だったーー
『シュッ』
シンが物凄い速さでロングソードを鞘から引き抜く。
「ーーなっ!?」
シンの突発的な動きにジェラルドは驚き目を見開く。
「フッ!」
シンは短く息を吐き、既に間合いに入っているジェラルド目掛けて剣を全力で振り下ろした。
『ガキィィィンッ!』
辺りに激しい金属音が鳴り響く。
シンの素早い動きを見て、ジェラルドは間一髪の所でそれを防いでいた。
「いっ、一体何が起こったんだ……?」
「何が起きたのか全く見えなかったぞ……」
「気付いたらあの若いのがジェラルドを剣で抑え付けている……」
それまでやいやいと騒いでいた取り巻きや住人達は、一瞬の出来事に鎮まり返った。
「ぐ、ぐぐ……な、なんだこの力は!?」
ジェラルドはシンの剣を必死に防いでいるが、徐々に押され始めている。
シンの見た目からは想像もつかない力が、そのノーマルソードに込められていた。
「どうした。このままだとご自慢のミスリルソードがお前の顔を切り裂くぞ」
対するシンは涼しげな顔で剣をジェラルドに押し付けている。
「ぐっ……バックステップ!」
ジェラルドはスキルを使って拘束状態から後方に逃れた。
その額は流れる汗に滲んでいる。
「お、おい……ジェラルドさんが後ろに下がったぞ」
「ひょっとしてあのガキ、剣も相当強いんじゃ……」
完全に押されているジェラルドの顔に、取り巻き達が焦りの表情を浮かべる。
「た、大した腕力だな。どうやら俺はボウズの力を多少見誤っていたようだな」
ジェラルドは額の汗を拭いながら、必死に余裕を保とうとしている。
そんなジェラルドに対し、シンは攻め込む事なく静かに見つめていた。
「ーーだが剣士の腕前は腕力だけじゃねえぜ!?」
ジェラルドが勢い良く地面を蹴る。
「五月雨突きっ!」
ジェラルドが素早い突きの連撃を繰り出した。
「おおっ! 出たぜジェラルドさんの得意スキル『五月雨突き』!」
『キンキンキンキンッ』
ジェラルドの激しい猛攻に対し、シンは剣で全てガードする。
「おらおらどうした! ただ防御してるだけか!?
俺の剣技はまだまだこんなもんじゃないぜ! ブレイクプロテクション!」
『ガキィン!』
攻撃を弾くシンに対し、ジェラルドはスキルによる更なる追撃を繰り出す。
「ーーッ!」
ジェラルドのスキルによりシンの剣は大きく弾かれ、シンに隙が出来る。
「おおっ!」
「ジェラルドさんやっちまえ!」
大きく空いたシンの懐に入り込み、ジェラルドの剣が襲いかかる。
「食らえ! レイジングスラッーー」
ジェラルドが決め技を放とうとした瞬間ーー
『ドコォッ!』
「ーーぐはっ!?」
ジェラルドの腹にシンの蹴りが炸裂した。
『ミシッベキベキッ』
ジェラルドの骨が鈍い音を立てる。
「フンッ!」
「ぐわぁっ!」
ジェラルドは口から血を吐き出し、そのままシンの足によって蹴り飛ばされた。
「あ、あのタイミングで蹴りを繰り出したのか……!?」
「一体どんなスキルを使ったんだ!?」
吹き飛ばされたジェラルドを見て、見物人達は騒然となっている。
「ただの"蹴り"だ……」
シンは短く言い放つと剣を投げ捨て、ゆっくりとジェラルドの元へと近付いていった。
「ひっ……ヒイィィィ!」
ジェラルドは口から血を垂らしながら、近付いてくるシンから逃げ惑う。
『ドゴォッ!』
「グハァッ! ……やっ、やめーー」
『バキィッ!』
「ゴパァッ!」
シンはジェラルドに降参する隙も与えずに蹴りを繰り出す。
『ドガッバキッグシャッ』
(そろそろかな……)
「……ャー……」
シンがジェラルドを蹴りながら何かを呟く。
「お、おい……このままだとジェラルドさん死んじまうんじゃ……」
余りに一方的な勝負に、取り巻き達がジェラルドの身を案じ始めた。
(く、苦しいっ……痛ぇ……! こ、こいつはバケモンだ……!
こっ殺される……!)
ジェラルドは反撃の術なく、容赦なく蹴り上げるシンに恐れおののいていた。
そしてその時だった。
『ドクン……ドクン……』
(な、なんだ!? 急に胸が熱くなってきた……!)
ジェラルドが謎の感覚に胸を押さえる。
『ドガッ!』
そこに再びシンの蹴りが入れられる。
「グバアッッ!! や、やめでぐれ! 降参ずる! 俺の負げだ!」
ジェラルドが座り込みなりながら必死に降参を宣言する。
それを見て、シンはようやく足を止めた。
『ザワザワ……』
「……おい見ろよあれ……」
「……うわぁ……」
周囲が妙に騒がしい事に気付き、ジェラルドが血だらけになった顔で周囲を見渡す。
すると下半身に妙な違和感があることにジェラルドが気付いた。
見るとそこには硬く勃起した股間がズボンを高々と盛り上げていた。
「なっ……どうして股間がぁ!?」
身体中の激痛にも関わらず勃起している事に、ジェラルドはたまらず股間を押さえ付ける。
「ジェ、ジェラルドさんにそんな趣味があったなんて……」
「痛め付けられて興奮するとか……へ、変態すぎるぜ……」
取り巻き達も蔑んだ目でジェラルドを見下ろす。
「ちっ違う! これは違ぁあう!」
本人には勃起する理由など全く心当たりが無く必死に弁明するも、股間の盛り上がりは明らかで、ジェラルドの言い訳は誰の耳にも届かなかった。
「なんだ。蹴られるのがそんなに嬉しいのならもっと蹴ってやるよ」
『ドガッ!』
「グギャッ! やっやめて……」
『ボゴォッ!』
「ドブゥッ!」
シンは痛がるジェラルドに追加で蹴りをお見舞いする。
その間もジェラルドの股間は益々高く反り立っていく。
勿論ジェラルドには公衆の面前で蹴られて興奮するような趣味など無い。
これはシンのチャームスキルによるものだった。
チャームにより無理矢理興奮させられたジェラルドは、自分の意思に反して股間が勝手に勃起してしまう状態になっていたのだ。
その様子に見物人達はまるで汚物を見るような視線を送る。
『メキィッ!』
「グバァッ! ゆ、許してくれええぇぇぇーーーー!」
ジェラルドの悲痛な叫びが街中に木霊したーー
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