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二章
25-年齢
しおりを挟む「理事長の喜久川 比奈は、凛やわたくしと一緒にその学校で育ったんですのよ、游助様」
どうやら知り合いというのは、昔馴染みの同級生ということだったらしい。
ということは礼子や凛と同い年の理事長ということになる。
大方先代の理事長が親かなにかの世襲なのだろうが、もう少し年配を想像していたため、礼子達の同級生というのは意外だった。
(というか―――礼子達は一体何歳なのだろうか……)
二人共かなり大人の色気を放っているが、それ程老けているようにも見えない。
というより見た目だけなら20代と言われても違和感はない。
「―――なぁ、その学校のパンフレットみたいなのは無いか?」
ここで俺は一つの策を思い付いた。
礼子や凛に直接年齢を聞くような恐ろしい真似はしない。
だが理事長ともなれば、学校のパンフレットに理事長個人の情報も多少なりとも載っているかもしれない。
女性の年齢を調べるという不躾な目的の元、俺は凛にパンフレットの有無を訊ねた。
「ああ、もちろんあるぞ」
そういうと凛が空中に手をかざすと何やらホログラムの画面が浮き出た。
そのまま「ホイ」と凛が手を払うと、画面が俺の前に飛んできた。
(どれどれ―――私立名嬢学園……か。創立1874年、大学設立1949年……随分と歴史ある学校だな。
1985年に中高一貫校設立……と、そんな歴史はどうでもいい。理事長については……と)
俺は空中の画面をサラサラと指で払い、理事長について書かれたページを探す。すると―――
(―――あった。今から5年前に喜久川比奈が理事長就任……就任時の年齢は……23歳!?)
余りにも若すぎる年齢で理事長となった事実を知り、俺は驚愕した。そして何より―――
(礼子達って……28歳なの!?
いや確かに見た目は若いけど、大企業の社長とか、調教場の理事とか、出世が若過ぎるだろ!)
見た目が若々しいだけで、正直アラフォーくらいは覚悟していた俺だったが、まさか本当に20代だとは想像しておらず、二人の顔を呆然と見つめる。
「―――ん? どうした?」
「どうかされましたの? 游助様」
「い―――いや何でもない何でもない!」
二人を不思議がらせてしまったが、まさか二人のことをアラフォーだと思っていたなどと口が裂けても言えず、俺はただ笑ってその場を誤魔化した―――
「―――全く、久々に面倒な奴から連絡が来たと思ったら……まさかSランクの奴隷を編入させろなどといった厄介事を儂に押し付けるとはのう……」
「すまんな比奈。恩に着るよ」
学園に着くと美香は車に残り、俺と礼子、凛の3人は真っ直ぐに理事長室へと招かれた。
目の前で凛が軽いノリで詫びを入れているのが、この学園の理事長―――喜久川比奈だ。
金髪をツインテールに束ね、背丈は生徒と見間違える程に小さい。
その身には着物を羽織り、その姿はさしずめ日本人形といったところだ。
だが幼い見た目の割には随分偉そうな風貌で理事長の席に鎮座しており、その口調も見た目にそぐわない爺言葉ときた。
もっと簡潔にハッキリ言うならば―――
『安直かつ絵に描いたようなロリババア』
「―――ん? 小僧……何か言いたいことでもあるのか?」
「い、いえ……! 何でもありません!」
ロリバ……比奈理事長から睨みを飛ばされ、俺は慌てて姿勢を正す。
「しかもただでさえ面倒な頼みに、この女が関わっているというのが尚更気に食わん」
すると今度は舌打ちをしながら、礼子に向かって気怠げな目線を向けた。
「お久し振りですわ比奈さん。相変わらずお可愛らしい身丈でいらっしゃいますわね」
礼子はニコニコと挨拶をしつつも、何故か妙に棘のある言葉を返す。
「ふん、おぬしも相変わらず口の減らん女じゃな。
しかしまぁ―――今回の件については、いかにも奴隷マニアのお前らが持ち込みそうな厄介事じゃが……
よもや自ら奴隷の所有物になろうとは、おぬしもいよいよ落ちるところまで落ちたのう、礼子」
「わたくしが一体何処に落ちたというのかしら? それどころか天にも昇る気持ちですわ。
貴女も游助様に抱かれる喜びを知れば、すぐにその気持ちが分かりますわ」
「ふん、性交なんぞ排泄と同じじゃ。儂にとってはSだろうがDだろうが皆便所と変わらん。
溜まったもんを吐き出せればそれで結構。
便所を慕うような奴の気持ちなど分かりとうないわ」
気付けば礼子と比奈が、目の前で激しく言い合いを始めてしまった。
「―――なぁ凛さん……礼子と比奈さんって犬猿の仲なのか?」
俺は隣で呆れ顔を浮かべる凛にヒソヒソと耳打ちをする。
「犬猿……という程でもないが……
見ての通り比奈は奴隷への侮蔑意識が強い。
奴隷の調教場を創った私や、昔から多数の奴隷を引き連れていた礼子のような奴隷寵愛派とは反りが合わなくてな」
「なるほど……」
奴隷扱いにも幾分かの違いがあるというのは初耳だ。
調教場での扱いは中々に酷いものだったが、凛のように奴隷を可愛く思う女もいる。
そして自己の性欲を満たすために多数の奴隷を飼い馴らし、快楽玩具としていた礼子も、その本心は奴隷を興奮させたいという、男への執心の裏返しだったことを知った。
男を虐げる世の中となっても、かくも女心は複雑であることに、俺は染み染みと頭をぬかづいた。
「でも―――じゃあ何で比奈さんは凛さんの頼みを受け入れたんだ?」
俺を転入させることをあれ程厄介だと言っておきながら、自分と価値観の合わない人間にそれを頼まれて何故受け入れられるのか。
この喜久川比奈という女の人物像が全く掴めない。
「それはだな……比奈には私に学生時代の借りがあってだな―――」
「ぬぁああ~~~っ!! 凛っ! あまり昔のことをベラベラと喋るでない!」
凛が訳を説明しようとすると、比奈が慌てて凛の口を手で覆い隠した。
この慌てようを見るに、相当恥ずかしい“借り”があるのだろう。
「ふふふっ。比奈ってば、初潮を迎えた時に自分一人じゃ恥ずかしくて、奴隷と交われなかったんですの。
それでわたくしと凛の手解きを受けながら―――」
「おいおぬしも! それ以上喋ったらその小僧とまとめて儂の学園を出禁にするぞ!」
比奈が顔を真っ赤に染め、今にも俺達を追い出しかねない形相で怒鳴り散らす。
正直今の礼子の言葉で大体の想像は付いてしまったのだが―――
初日に学校の出禁を食らってしまっては困るので、俺は何も分からないといった顔で視線を泳がせた。
「―――とにかく! 小僧の転入は許可するが、何か問題を起こそうものなら即退学処分じゃからの!
卒業まで空気のように大人しくしておれ!
もし男だということが知れ、あまつさえ儂の生徒に手出しなどしようものなら……お主らにもそれ相応の責任を取って貰うから覚悟しておれ!」
「は、はい……」
「相分かったよ、比奈」
「はいはい」
俺は比奈のプレッシャーに怯えながら大人しく返事をし、凛と比奈もヤレヤレといった様子で後に続いたが……
かくして俺の学園生活は期待とは程遠い、前途多難な日々が確定的となり、めくるめく妄想に浮かれた俺の気分は完全に消沈したのだった―――
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