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五章
76-雑用
しおりを挟むその後林間学校の行事は着々と進み、午後のハイキングと夜のバーベキューを終え、残るはキャンプファイヤーを控えるのみとなった。
教師が中心となってキャンプファイヤーの準備をしている傍らで、生徒達は各々自由な時間を過ごしている。
そんな中俺は一人―――
「はぁっ……はぁっ……」
(し、死ぬ……溜まり過ぎて死ぬ……)
暴発寸前までに高まった性欲を抱え、皆が遊ぶ広場の隅っこで悶えていた。
先程のハイキングでは皆の談笑も美しい自然の景観も、全く入ってこなかった。
山頂で皆が記念撮影をしていても、俺の頭には『ヤりたい』という感情だけがひしめき、写真を撮るために身体を寄せる女子の身体に股間は否応なく滾る。
もし今日がスカート姿ならば、俺が男であることが一目でバレていただろう。
幸いにも今日はジャージを着ているため、反り上がる股間は腰ゴムで無理矢理押さえ付けている。
その代わり俺の股間を擦る腰ゴムの刺激に、今にも射精してしまいそうな状態だ。
夕飯のバーベキューも、最早何を食べたのかすら記憶にない。
ちなみに今俺の隣には、すこし離れたところで乙音も膝を抱えながら一人座り込んでいた。
班決めの時は言い争った3人ともお昼には打ち解け、ハイキング中も普通に会話を交わしていたが、相変わらずいつもの元気な様子は見られない。
俺とも普通に話してはいるものの、自分から喋ろうとする素振りは見せない。
実羽達の態度がおかしかったのは、圓に叱られたのが理由と判明したが、それとは関係のない乙音が未だに皆、そして俺と距離を置いている理由が分からない。
とはいえ今は乙音のことを心配している余裕など俺にはない。
寧ろ女のことなど気にしようものなら、友人である乙音にすら欲情してしまいそうだ。
(と、とりあえず……茂みで抜こう……)
収まりそうもない衝動を少しでも鎮めるべく、腰を引きながらゆっくり立ち上がろうとしたその時―――
「二人共~、ちょっと良いかな~?」
向こうから圓が手を振りながらこちらに近付いてきた。
二人というのは俺と、その隣に座る乙音のことだろうか。
乙音も自分が呼ばれていると気付いたようで、俺と共に圓の方へ視線を向ける。
「な、何でしょーか……圓先生」
髪を後頭部で束ね、軍手を付けた姿で目の前に立つ圓。
その姿は普段の大人っぽい色気とは異なり、アクティブかつ瑞々しい若さに溢れている。
これまた性欲を刺激される風貌だが、まさか軍手を付けた状態で俺の求めに応えるつもりではないだろう。
しかも今回は乙音とセットで用事があるようだ。
俺をこんな状態にしておいて、一体何を求められるのかと、やや構えながら要件を訊ねた。
「実はさっきのバーベキューで薪を使い切っちゃったみたいなの。
このままキャンプファイヤーを始めるには火種が足りないから、申し訳ないのだけど二人であっちの倉庫から薪を取ってきて貰えないかな?」
「ええっ!? 薪!?」
この状況でよもや雑用を頼まれるなど思いもよらず、返答の声が上擦る。
(もう勘弁してくれよ……)
思わず不満が漏れそうになる中……
『スッ―――』
乙音は無言で立ち上がり、指定された倉庫へと歩みを向けた。
その様子に圓はニコリと微笑むと、
「それじゃあよろしくね~」
実に軽いノリで俺達に手を振ってキャンプファイヤーの準備へと戻って行った。
「ま、マジかよ……」
取り残された俺は反抗の余地なく、渋々と乙音の後に続いた。
「―――なぁ乙音、体調悪そうだけど大丈夫なのか?」
「別に。じっとしてるより気が紛れるし」
早足で進む乙音の背中に問い掛けるが、冷たく返されてしまった。
気が紛れると答えた辺り、やはり調子は良くないみたいだが……
「―――あれだったら、俺が一人で持ってくるけど……」
乙音が心配なのもあるが、密室で女子と二人きりになるのは今の状況的にかなりヤバい。
なんとか必死に性欲を堪えているものの、普段女として意識していない乙音にすら欲情し、パンツの中で暴発しかねない。
そうなれば薪を運ぶどころではなくなってしまう。だが―――
「良いって言ってるでしょ。ほら、着いたわよ」
結局俺の気遣いも虚しく、俺達は目的の小屋へと辿り着いてしまった。
距離はそれ程無かったが、振り返ると生徒達の声が僅かに聞こえるばかり。
辺りは夜風に吹かれる木々の音と、虫の鳴き声だけが木霊している。
そして日の沈んだ夜に、古びた木製の小屋がポツンと立っている様相が、肌に触れる風をより冷たく感じさせる。
「こんな中で薪を探すのとか、無理じゃないか?」
目を凝らして扉の開いた小屋の中を覗き込むが、まるで何も見えやしない。
こんな所に生徒だけを向かわせるとは、実に危なっかしい。
俺が圓への不満を募らせる中―――
『パッ』
乙音は何も言わずにホロを開くと、何やら画面を操作する。
すると手首のバンドが明るい光を放ち、暗い小屋の中を照らし出した。
「な、成程……バンドにそんな機能が……」
新たに知ったバンドの機能に驚く俺を他所に、乙音はスタスタと中へ進んでいく。
俺もその後に続き中へと入ると、目の前には錆びた鉄の棚が壁に沿って配置され、その上に大量の薪が積まれていた。
「よいっしょ……と」
『カララッ』
乙音は手際良く薪を1つずに手に取って抱える。
俺もこんな所には長居したくないため、乙音に倣って薪を脇に挟んでいく。
『カラッ……カラッ』
バンドの灯りだけが照らす暗闇の中、薪の打つ音だけが物静かに響く。
暗い小屋で女子と二人きり。
仄かな灯りが映し出す乙音の横顔。
チラリと見やった視線に気付きもせず、ただ無言で薪を拾い上げる乙音の姿に、俺の鼓動はドキドキと高鳴る。
(薪を持って行ったら、一目散にシコろう……)
そう思いながら薪を集めていると―――
「これだけあれば充分じゃない?」
沢山の薪を抱え込んだ乙音が、小屋の外へと顎で促す。
「あ、ああそうだな。それじゃあ戻るか……」
俺は両手にズシリと乗る薪の量にやや汗を垂らしながら、乙音の言葉に賛同する。
そして皆の所に戻ろうと歩みを向けたその瞬間―――
『ガラララッ』
「えっ―――」
突然、目の前の扉が鈍い音を立てながら閉まり始めた。そして―――
『ガチャッ』
金属が掛かる鈍い音と共に、外の景色が完全に閉ざされてしまった―――
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