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五章
83-再会
しおりを挟む「ほ、本当に乙葉……なのか?」
俺のあだ名を知り、俺の幼馴染の名を自ら名乗った時点でそれが本当であることは間違いない。
だが、生まれ変わった未来で乙葉と再会し、あの男嫌いな乙葉と、こんな形で話すなんて、未だ信じられない。
俺が半信半疑で乙葉の顔をまじまじと見ていると、乙葉は徐に人差し指を頬に添え――――
「私の実家が南川町1丁目で、游助が2丁目。
家は不気味な熊の滑り台がある南川町公園の裏。
私と同じ南川小、南川中、南川高に通ってた。
小学校はソフトボール少年クラブ。中学はソフトテニス部で万年団体戦補欠。高校は帰宅部で、あだ名はエロ川ベースケ……」
「も、もういい! 分かった! 分かったから!」
昔の知り合いしか知る筈のない、しかも恥ずかしい過去まで語り始め、俺は慌ててストップをかけた。
ここまで俺のことを知っているとなれば、最早疑いの余地はない。
「本当に……乙葉なんだな」
懐かしい―――と言っていいかはよく分からない、でも当時とよく似た乙葉の姿に、俺は感慨深くその顔を見つめた。すると―――
「そうよ……游助。
本当に、本当にっ……游助っ……!」
乙葉の笑顔から、唐突に涙が溢れ落ちた。
俺の顔に手を添えながら、身体を小さく震わせている。
「乙葉……? ど、どうしたんだ急に―――」
「だって……だって……!
こんな風にまた来世で游助に会えるなんて……!
何で勝手に死んじゃったのよ……游助のバカッ!」
乙葉は泣きながら、俺の身体に強く抱き付いた。
(そうか……俺は自分が死んだ後のことなんて何も考えてなかったけど……皆は生きてたんだもんな)
俺は今初めて、自分が死んだ後に遺された人達がいることに気付かされた。
俺のことをあんなに嫌っていた乙葉ですら、俺と再会出来たことに喜び、大粒の涙を流している。
遺された家族は一体どんな気持ちだったのだろうかと、俺は胸を傷めた。
だが俺はここでもう一つ、重大なことに気付いてしまった。
「あれ……てことは俺が死んだ後も乙音は生きてた訳だから……
ひょっとして、乙葉の中身は……婆さ―――」
そう言いかけたところで―――
『パァン!』
「だっ誰が婆さんよ!」
「ぶへぇっ!」
俺の頬に怒った乙葉による強烈なビンタが炸裂した。
「だっだってそうじゃないか……!
普通に生きてりゃ年老いて死ぬ訳で……」
そう言葉を続けると、乙葉の顔が妙に暗く沈んでいった。
そして次の瞬間、思いもよらぬ言葉が乙葉の口から飛び出した。
「―――私、自殺したの」
「えっ―――」
俺は一瞬にして顔を凍り付かせる。
「乙葉が……自殺?
嘘、だろ? な、なんでだよ……なんで、乙葉が自殺なんて……
―――ま、まさか、俺が死んだのがショックで!?」
乙葉のような気の強い女が自殺するなどとは、にわかに信じられない。
まさか俺が死んだせいで乙葉が自殺したとなっては、余りにも申し訳が立たなさすぎる。
(というか、こいつそんなに俺のことが好きだったのか……?)
重すぎる程の乙葉の愛に、俺はやや引き気味の表情を浮かべると―――
「違うわ。確かに游助が死んだ後、ショックで取り乱したけど……でも自殺の理由はそれじゃない。
まぁ、全くの無関係って訳でもないかもしれないけど」
「ど、どういうことだ?」
俺は想像が杞憂となったことに肩をすかされる。
だがそれならば、他の理由とは一体―――
「私が自殺したのは……私が27歳の時―――游助が死んでから、丁度10年が過ぎた頃よ」
疑問を浮かべる俺に対し、乙葉は遠くを見つめながら、粛々と語り始めた。
「理由は……私が犯した過ちと、背負った罪の重さに、耐えきれなくなったから……」
「『罪』……?」
俺が死んだ後、10年の間に一体乙葉はどんな人生を歩んだのか。
重々しい空気に、俺はゴクリと唾を飲む。
「あの日―――覚えてる? 游助が死んだ日のこと」
「あ、ああ……あの日は日直で、帰るのが遅くなって……
それで慌ててチャリを漕いでた俺は、突然視界の片隅にトラックが見えて―――
そこから先の記憶はないから、あれで死んだんだと思う」
トラックに轢かれる瞬間の記憶はないが、その直前までのことは、今も鮮明に覚えている。
「そう……あの日游助は、脇道から一時停止せずに出てきたトラックに轢かれて死んだ。
私はあの日、游助に日直の仕事を頼んで家に帰った。
でも、急いでる感じだった游助のことが気になって、ひょっとしたら何か大事な用事があったのかもと思って、游助の家で帰りを待ってたの……
でも……!
游助はっ……帰って……来なかった……!」
乙葉は涙を溢しながら、その日あった出来事を語った。
(まさかあの後乙葉が家で俺を待っていたなんて……)
その事実乙葉の涙に、俺は申し訳なくいたたまれない気持ちとなった。そして―――
「―――ん? 家で、待ってた……?」
(ちょっと待て。俺はオナホールが届くからと、急いで帰ろうとしていたんだぞ……
そこに……乙葉が……?)
俺は不意に嫌な予感がし、頬に汗が垂れる。
「待っても待っても游助は帰って来なくて……そしたら、宅配便が来たの。
家の前にいる私を家族だと勘違いした配達員が、私に荷物を渡してきて。
これがあるから游助は急いでたんだと思った私は、不在票を入れられるのも可哀想だし、荷物を代わりに受け取ったの」
あれを、乙葉が代わりに受け取った……だと?
マズい。
マズいぞこれは。
俺は頭から嫌な汗がどんどん噴き出してくる。
「ほ、ほんの出来心だったのよ……
游助が帰ってきたらそのまま渡すつもりだったんだけど……
あんまり帰りが遅いし、あんなに急いで、一体何を頼んだんだろうって気になっちゃって……
それで……中を開けたら……」
「あっ……ああぁぁあぁぁああっ」
心の何処かに引っ掛かっていた。
俺が死んだ後、アレはどうなったのかと。
だが死んだ後のことだし、気にしないように過ごしてきた。
それがまさか―――
「え、エッチな絵が描かれた箱が出てきて……」
「ぁぁぁあああぁあーーーーーっ!」
乙葉に見られていたとは……思わなんだ―――
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