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五章
88-衝撃の事実
しおりを挟む「―――あ……れ、私……」
乙葉は裸体に掛けられたジャージをずり下ろしながら、ムクリと起き上がった。
俺に激しく責められたことで乙葉は意識を失い、暫くの間眠らせていた。
「おはよう……乙葉。
つってもまだ夜だけど」
俺はパンツを履いた姿で、乙葉に声を掛ける。
俺達が小屋に閉じ込められてから、2時間程が経過していた。
恐らくキャンプファイヤーはとっくに終え、皆風呂や部屋で自由時間を満喫している頃だろう。
「游助……ハッ!
お、オチンチン! どうしてオチンチン抜いちゃったの!?
もっと……もっとエッチなことしてよぉ……游助ぇ!
―――あ……れ?」
乙葉は俺に迫ろうとするも、先程の責めで腰砕けとなり、立ち上がることが出来ないでいる。
そんな乙葉にゆっくりと近付き、俺は細い方にそっと手を添えた。
「乙葉……覚えてるか?
教室で俺と将来の夢について語り合ったこと」
俺は教室での出来事を思い出しながら、乙葉に向かって優しく問いかけた。
「あっ……あの時は、その……
わ、私も乙葉だったことを思い出してなかったから……
今は私の将来なんてどうでも良いの。
ううん、私の将来は游助に捧げるって決めっ―――」
「―――乙葉」
俺は真剣な目で乙葉を見つめ、言葉を遮った。
「あの時……たとえ俺が男だったとしても、乙音は変わらず俺の友達で居てくれるって言ってくれて―――俺は凄く嬉しかったんだ。
それに……乙音が総理大臣になって、奴隷扱いされている俺達が自由に生きられる社会にするって言ってくれて……
その時俺は、乙音の夢を本気で応援したいって思ったんだ。
だから俺の友達の―――乙音の夢を、願いを、想いを捨てるなんて……そんな悲しいこと言わないでくれよ」
俺は友達として語り合った乙音の顔を思い出しながら、乙葉へ切に訴えかけた。すると―――
「総理……大臣……」
不意に乙葉は、ハッと顔色を変えた。
まるで大事な何かを思い出したように。
「総理……大臣……笛水……美沙代。
笛水―――ハッ! そうだ!
美沙ちゃん!
未来では、笛水AIとして……美沙ちゃんの意思が……まだ……
―――大変っ!」
乙葉は突然思い立ったように、その場に勢いよく立ち上がった。そして―――
「美沙ちゃんを……止めなきゃ!!」
何やら意味不明な言葉を、大きな声で叫んだ。
「美沙……ちゃん?」
俺はなにがなんだか分からず、聞き覚えのない名前に疑問を浮かべる。
「もうっ游助ったら!
社会の授業ちゃんと聞いてなかったの!?
笛水美沙代!」
「笛水……美沙代―――あっ」
そういえば授業で朧気ながら聞いたような覚えがある。
正直授業の殆どは茜とセックスばかりしていたため、内容は殆ど覚えていないが。
だが俺達奴隷が付けている首輪は笛水AIと呼ばれる人工知能が、俺達の情報を管理しているということは昔から知っていた。
そして、その笛水AIが笛水美沙代という、昔の総理大臣の脳を元に作られたものであることも。だが―――
「笛水美沙代って……俺が前世で死んだ後、今の世の中では100年以上前に総理大臣になった人だろ?
その人が一体どうしたって言うんだ?」
幾らこの時代を管理するAIがその女性を元に作られたものだとしても、本人は生きているはずもない。
一体過去の人間の何を止めるというのか。
「も~……ほんっとに游助は勉強不足ね!
今の総理大臣は一体誰?」
「今の……総理大臣?」
現総理大臣の名前なんて、どの時代だろうが知っていて当たり前の一般常識だ。だが―――
「あれ……誰だっけ」
日本が民主主義から別の政治体制の国家に変わったなどという話は聞いたことがないし、乙音が総理大臣になる夢を語っていた時点で誰かが総理大臣を務めていなければおかしい。
だが俺の頭に今の総理大臣の名前は誰一人浮かんで来なかった。
というより女性党が政権を取り、笛水美沙代が総理大臣となってからの知識が全くない。いや寧ろこれは知識がないというより―――
「まさか……他に誰も……なっていない?
いやでも、そんな……100年以上なんて、あ、あり得る訳が……」
そんなもの、最早民主主義とは呼べない。
それ以前に、生身の人間がそれ程に長い年月を生きている訳がない。
もしそれが可能だとすれば、それはもう生身の人間ではない。
(生身の、人間―――ハッ!)
俺が未来のとんでもない実態に気付くと、乙葉はコクリと頷いた。
「そのまさか。
総理大臣は今もずっと美沙ちゃん―――笛水美沙代のままよ」
「で、でも本人が生きている訳がない……
ということはつまり、笛水AIが……総理大臣!?」
そんなことが果たして許されるのか。
人間でない、AIが長年総理大臣に選任され続けるなんてことが。
そして―――先程からその笛水美沙代を、まるで友人のように『美沙ちゃん』と呼ぶ乙葉は一体どういう関係なのか。
すると乙葉は俺の疑問に答えるように、静かに語り始めた―――
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・辞めたくても辞められない→止めたくても止められない
ご感想ありがとうございます。
ネタバレを含まない程度に櫻川圓という人物についてご説明致します。
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何物にも属さず、独立した一人の女の立場としてその思考を築き上げた礼子とは異なり、読者様の期待とは違うものだったかもしれません。
ですが、圓という人物が持つ妖艶な雰囲気や、男を惑わし、男を誑かすだけの美貌と振る舞い、そして游助を快楽の道に引きずり込もうとする淫乱さは圓本人の才能であり、それを見込んで今回の任務に任命されました。
ですので、今後も圓の言動や行動に関しては、圓自身の欲望に従ってのものであるとお考えの上、お読み頂ければ幸いです。