百鬼淫行

淀川 乱歩

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其の六 産娘岩(うむめ)

其の六 産娘岩(うむめ)の弐

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 ……其の暗い色の岩は、仰向(あおむ)けに腹部が丸く大きく膨らんだ、人間の妊婦の様な大きさと、形の岩だったと云う。
 ……そして、数年に一度、其の岩の股間の色が白く変色すると、縦一本に割れ目が出来、やがて其の割れ目が丸く、大きく開いて、中から人間の赤ん坊が一人、産み落とされたとも。

 ……裸で泣き続ける其の赤ん坊は、不思議な事に、何も飲み食いせず、排泄もせずに生き続けて、裸のままで成長して行ったと云う。
 ……やがて、其の赤ん坊が、自分で這い這いして移動出来る様に為ると、自分を産んだ妊婦岩の上に登り、岩の妊婦の乳房の先端の、固く冷たい岩の乳首を、激しく吸い始めたとも。
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