百鬼淫行

淀川 乱歩

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其の八 百壱鬼夜行 

其の八 百壱鬼夜行の四 淫蚊

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 ……昔、眠っている子供の血を吸う淫蚊と云う妖怪がいたと云う。
 ……妖怪淫蚊とは、深夜に寝床で眠っている子供の鼠蹊部(そけいぶ)に噛み付いて血を吸う、人間の全裸の幼児の姿の妖怪だった。
 ……淫蚊は眠っている子供を仰向(あおむ)けにし、寝巻きの裾(すそ)を左右に開いて子供の幼い下半身を露出させると、其の子の両足も大きく開かせた。
 ……そして、其の子の両足の間に俯(うつぶ)せに寝て、下腹部の片方の足の付け根に幼児の小さな口で噛み付いたのだ。
 ……内股に妖怪に噛み付かれて、血を吸われている男の子や女の子の幼い性器に、幼児妖怪の柔らかな頬が押し付けられ、更に淫蚊は吸血している子供の性器を幼児の指で愛撫して、子供に性的快感を与えながら血を吸っていたのだった。

 ……そして、血を吸われている其の子供が、幼い性的絶頂(オルガズム)に喘(あえ)ぐ時、淫蚊の姿は消えていたのだ。 ……淫蚊は流産した水子に妖怪が取り憑いたものとも、水子が妖怪化したものとも云われているが、本当の事は誰も知ら無かった。
 ……つまり、淫蚊は眠っている子供に淫夢を見せ、更に自慰(オナニー)を教え込む、布団童子(ねやわらし)とも呼ばれる夢魔の妖怪だったのだ。
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