百鬼淫行

淀川 乱歩

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其の八 百壱鬼夜行 

其の八 百壱鬼夜行の十七 桜桃梅の壱

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 ……何処かの国の、人里離れた山奥に、誰も知ら無い山里が有りました。
 ……其処は、人間の目には見え無い、異世界の隠れ里で、人間の世界から逃げ出した妖怪達が平和に暮らしていたのです。
 ……妖怪達は、其処で昔ながらの農家に住み、田畑を耕し、山で木の実や茸を集め、川や池で魚を釣って静かに暮らしていました。
 ……其処には四季が有り、冬には雪も降りましたが、不思議な事には、村中に無数に生えていた梅と桃と桜の樹には、一年中絶える事無く、美しい花が咲き続けていたのです。
 ……特に、真冬の満月の夜には、辺り一面の銀世界の中に、満開の梅と桃と桜の花の上に、真綿の様な真っ白な雪が、音も無く降り積もったのでした。

 ……処で、そんな妖怪達の桃源郷に、人間の子供達が妖怪達の家畜として、飼われていたのです。
 ……其の村は、人間の目には見えず、人間達には見付ける事も、村に近付く事も出来無かったのですが、妖怪達が攫(さら)って来た神隠しの子供達だけは、其の妖怪達の村の中に入る事が出来たのでした。
 ……村の家畜にする、人間の子供を攫うのは隠れ蓑(みの)を着て、人間達の目には見え無い鴉天狗達(カラスてんぐ)の仕事で、背後から獲物の子供に抱き付くと、其の子の姿も消えて仕舞ったのです。
 ……そして、同時に其の子は呪術で深い眠りに落ち、また着ていた衣服は全て分解されて消え、其の子は全裸で眠り続けながら、鴉天狗に背後から抱き抱えられて立っていたのでした。
 ……処で、人間の子供達を攫う鴉天狗達は、五羽で一組の兄弟達で、最初に子供の背後から抱き付いたのが長男の、身体の一番大きな鴉天狗だったのです。
 ……すると、残りの四羽の弟達が、全裸で立ったまま眠り続けている其の子供の胴体を、持って来た丈夫な縄で素早く、亀甲縛(きっこうしば)りに縛り上げたのでした。
 ……そして、次に運んで来た、丈夫な二本の太い竹の中央を、縄で縛った物をXの形に開き、其の竹を子供の背中に押し当てると、其の子の両手首と両足首の四カ所を竹に縛り付けて、全裸で磔(はりつけ)にしたのです。
 ……そして、鴉天狗の兄弟達は、其のX字の竹の四隅を、それぞれ四羽の弟達が両手で持ち、背中の黒い翼を一斉に広げると、空中に舞い上がったのでした。
 ……空中を、妖怪達の村に運ばれて行った其の人間の子供は、二本の交差させた竹の下に磔(はりつけ)られて、全裸で空高く飛び続けていたのです。
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