【完結】セックス依存症の精神科医がスパダリCEOと結ばれるまで

grotta

文字の大きさ
39 / 40

【最終話】花言葉

しおりを挟む
朝目が覚めた僕は東郷の硬い腕に頭を乗せたままぼうっとしていた。すると東郷が言う。

「今日のランチ時間取れそうなんだが一緒にどこか行かないか?」
「え! ごめん、今麗華ちゃん日本に帰っててご飯行く約束しちゃった」
「あ? そうなのか……」

東郷はちょっと残念そうな顔をした。

「雅貴も行く? 多分良いって言うよ」
「あ、いや……俺はやめておく」
「なんで?」
「俺がいたら俺の悪口言いにくいだろ」
「あはは! たしかに~」
「そこは否定しないのか」

あの騒動から二ヶ月。
僕たちは東郷のマンションで一緒に暮らすようになっていた。

麗華は本当にあの後パリに移り住んで、日本の生花の技術を活かしたフラワーデザインをビジネスにしたいと奮闘している。
そして、帰国する度に僕たちは一緒に食事に行くのが楽しみになっていた。

僕は相変わらずクリニックで診察の日々だ。
東郷はもちろん会社の経営責任者として忙しくしている。

こうして一緒に暮らしてみて、本当に僕たちは相性が良かったんだと感じる。
予想した通り、セックスをしようがしまいが、触れ合っていさえすれば体調がずっと良い。セックス依存症だった僕がすっかりそんなことを忘れるくらい快適に生活できていた。
ただ東郷は、もっとしたいと思っているみたいだ。彼にとっては「スポーツジムのようなもの」なので。
でも、東郷のペースに合わせていたら僕の身体が持たない。

あの日六条の家に東郷が迎えに来てくれなかったら、僕はあの家でずっと飼われていたのだろうか。
僕が出ていって六条が大人しく引き下がるのか疑問だったが、東郷と健斗が二人で六条のことを調べてくれたお陰で、何も言ってはこなかった。

父は、東郷と健斗から事情を聞いてうなだれていた。
僕にもきちんと謝ってくれた。
後から聞いたことだが、僕の病気に良いかもしれないという理由で六条の申し出を受けたのだそうだ。父は父なりに、僕のことを考えてくれていたということだった。

僕は自分のことに精一杯で、他の人が向けてくれていた好意に気づいていなかっただけなのかもしれない。
これも最近知ったのだが、藤岡さんによると父は僕のクリニックを開業する前に僕以外のスタッフ全員と面談を行っていた。
息子と一緒に働く人間を見ておきたいからだと話していたそうだ。
藤岡さんは「西園寺さんのお父様って結構過保護なんですね」と言っていた。
そんなことは絶対ないと思うけど、僕は素直に嬉しかった。
あれこれと思いを巡らせていた僕に東郷が問いかけてくる。

「考え事? 悩み事?」
「あ、ううん、なんでもないよ。麗華ちゃんと何食べようかなって。へへ」
「そうか。静音……愛してる」

東郷に口付けされる。
朝から濃厚なキス。

「……ん……」

唇が触れるだけでも脳天を突き抜けていくような快感が走る。
自然と口元に笑みが広がる。

「僕も愛してる……!」

これからはこの人にずっと抱きしめられていていいんだ。
セックスをしてもしなくても。

部屋に飾った銀木犀のやわらかい香りが鼻をくすぐった。
僕は初恋の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。



〈完〉


ーーーーーーーーーー

最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。
大体の流れを考えてから書きましたが、思いの外辛いシーンが多くて長くて……。
でもそれでも最後にちゃんとハッピーエンドにできて良かったです。
少しでもお楽しみいただけていたら嬉しいです。

東郷視点の番外編を一話用意しているのでこの次に更新する予定です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

久しぶりに地元へ帰ったら、昔いじめてきた男に告白された

髙槻 壬黎
BL
【狂愛執着攻め×自己肯定感低め受け】 高校の卒業式後、自分を取り巻く環境から逃げるようにして地元を出た俺──広崎恵。新天地では頼れる人もおらず、毎日の生活は苦しかったけど、それでも俺なりに満ち足りた人生を送っていた。 しかしその五年後。父親からの連絡で故郷へ帰ることになった俺は、かつての同級生──狭山鏡夏の名前を耳にする。常に人から囲まれ人気者だったその男は、俺をいじめてきた張本人だった。 だからもう会うつもりなど、二度となかった。だというのに、何故か狭山は、俺のことをずっと探していたようで──── ※攻めがサイコパス気味です。受けへの愛だけはありますが、倫理観が欠落しているので苦手な方はご注意ください。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

処理中です...