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16.◆予定外の再会
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柊一との連絡が途絶えて、また以前の日常に戻りつつあった。別に恋人同士だったわけでもない。ただ、週末に一緒に映画を見たりドラマの続きを見る相手がいなくだっただけの話だ。
そうやって何ともないふりをしながら、京介はどこかでまだ彼からの連絡を待っていた。
そんなある日、夏帆から珍しく電話が来た。職場が同じなのであまり電話で話すことはない。急ぎの用でなければ、翌日顔を合わせたとき直接話せば済むからだ。
「どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、すぐに来て! お願い、柊一くんに怪我させちゃったの――」
呼ばれて夏帆のマンションに駆けつけると、ソファに座った柊一に夏帆が傷の手当てを行っているところだった。
「二人とも、どうなってるんだ?」
「あれ、京介さん……?」
京介が来ることを聞いていなかったようで、柊一はこちらを見て目を丸くした。
「私が呼んだの。手当が終わったらお兄ちゃんに家まで送ってもらってね」
「そんな大げさな……ただのかすり傷だし――」
怪我してるって、顔じゃないか。京介はガーゼを当てられた彼の頬を見てぎょっとした。
「大丈夫なのか? おい、夏帆お前一体柊一くんに何をさせたんだよ?」
「それが……」
柊一は夏帆と最近付き合ってすぐに別れた相手が実は既婚者だったと知り、一言謝罪させようとその男のところへ行ったそうだ。その場には元彼と、奥さんとは別の女がいた。夏帆と別れた後も男は反省することなく、別の女と浮気を続けていたのだ。それに腹を立てた柊一と男が口論になり、彼が既婚者だと知らなかったその女まで激昂して騒ぎになった。
最後になんとか謝罪の言葉をもらって帰ろうとしたとき、男が怒りに任せてグラスを壁に投げつけた。その破片が運悪く、柊一の頬をかすめたのだ。
「かすり傷で済んだからよかったものの――殴られてたらどうするんだ?」
「ごめんなさい。話せばわかると思ったんです……。夏帆ちゃんを危険な目に遭わせてしまって本当にすみませんでした」
「ちょっと! 頭を上げて。柊一くんは悪くないでしょ」
京介に怒られたと思った柊一がうなだれる。夏帆はそんな柊一の肩を叩いた。その様子が仲の良いカップルみたいに見えた。
「大体夏帆もなんでこういうことを俺じゃなくて柊一くんに言うんだよ?」
「ごめんなさい。私が悪かったの」
柊一をかばうような夏帆の様子を見て京介はなんとなく察するものがあった。
(夏帆は俺より真っ先にこういうことを相談するくらい柊一を信頼してるってことか……)
二人を放っておくといつまでも「俺が悪い」「私が悪かった」と夫婦漫才みたいなことを続けていそうな気配だ。京介は「明日も仕事だろう」と柊一を連れ出し自宅に送り届けた。
二人きりになると、柊一は前回のことを謝ってきた。
「この間は慌てて帰ってすみませんでした。俺、酔ってて――」
「いいんだよ、気にしないで」
すると意外なことに彼がこう言った。
「今度の週末、お邪魔していいですか? シャツを置いてきちゃったし……あのドラマも……」
「もちろん。続きを一緒に見よう」
(そうだ、これでいい。俺たちは共通の趣味を持つ友人になればいい)
彼は普通の女性との恋愛がうまく行かずに悩んでいた。かといって男相手では肉体と精神の折り合いがつかない。
しかし夏帆ならどうだ?
彼女は女にしては背も高くて男勝りな性格をしている。柊一には夏帆のような女性が合っているんだろう。夏帆の方も柊一のことは好みじゃないなんて言いながら、今夜の様子を見るにそんなことはないと思う。彼女も自分にとってどういう相手が相応しいのかわかっていないだけなのだ。
夏帆のことを大事に思う気持ちは自分も柊一も変わらない。
柊一のような男になら夏帆を安心して任せられる。きっと二人が結婚すれば、幸せになれるだろう。
(俺は二人の兄になる――それでいいじゃないか)
そうやって何ともないふりをしながら、京介はどこかでまだ彼からの連絡を待っていた。
そんなある日、夏帆から珍しく電話が来た。職場が同じなのであまり電話で話すことはない。急ぎの用でなければ、翌日顔を合わせたとき直接話せば済むからだ。
「どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、すぐに来て! お願い、柊一くんに怪我させちゃったの――」
呼ばれて夏帆のマンションに駆けつけると、ソファに座った柊一に夏帆が傷の手当てを行っているところだった。
「二人とも、どうなってるんだ?」
「あれ、京介さん……?」
京介が来ることを聞いていなかったようで、柊一はこちらを見て目を丸くした。
「私が呼んだの。手当が終わったらお兄ちゃんに家まで送ってもらってね」
「そんな大げさな……ただのかすり傷だし――」
怪我してるって、顔じゃないか。京介はガーゼを当てられた彼の頬を見てぎょっとした。
「大丈夫なのか? おい、夏帆お前一体柊一くんに何をさせたんだよ?」
「それが……」
柊一は夏帆と最近付き合ってすぐに別れた相手が実は既婚者だったと知り、一言謝罪させようとその男のところへ行ったそうだ。その場には元彼と、奥さんとは別の女がいた。夏帆と別れた後も男は反省することなく、別の女と浮気を続けていたのだ。それに腹を立てた柊一と男が口論になり、彼が既婚者だと知らなかったその女まで激昂して騒ぎになった。
最後になんとか謝罪の言葉をもらって帰ろうとしたとき、男が怒りに任せてグラスを壁に投げつけた。その破片が運悪く、柊一の頬をかすめたのだ。
「かすり傷で済んだからよかったものの――殴られてたらどうするんだ?」
「ごめんなさい。話せばわかると思ったんです……。夏帆ちゃんを危険な目に遭わせてしまって本当にすみませんでした」
「ちょっと! 頭を上げて。柊一くんは悪くないでしょ」
京介に怒られたと思った柊一がうなだれる。夏帆はそんな柊一の肩を叩いた。その様子が仲の良いカップルみたいに見えた。
「大体夏帆もなんでこういうことを俺じゃなくて柊一くんに言うんだよ?」
「ごめんなさい。私が悪かったの」
柊一をかばうような夏帆の様子を見て京介はなんとなく察するものがあった。
(夏帆は俺より真っ先にこういうことを相談するくらい柊一を信頼してるってことか……)
二人を放っておくといつまでも「俺が悪い」「私が悪かった」と夫婦漫才みたいなことを続けていそうな気配だ。京介は「明日も仕事だろう」と柊一を連れ出し自宅に送り届けた。
二人きりになると、柊一は前回のことを謝ってきた。
「この間は慌てて帰ってすみませんでした。俺、酔ってて――」
「いいんだよ、気にしないで」
すると意外なことに彼がこう言った。
「今度の週末、お邪魔していいですか? シャツを置いてきちゃったし……あのドラマも……」
「もちろん。続きを一緒に見よう」
(そうだ、これでいい。俺たちは共通の趣味を持つ友人になればいい)
彼は普通の女性との恋愛がうまく行かずに悩んでいた。かといって男相手では肉体と精神の折り合いがつかない。
しかし夏帆ならどうだ?
彼女は女にしては背も高くて男勝りな性格をしている。柊一には夏帆のような女性が合っているんだろう。夏帆の方も柊一のことは好みじゃないなんて言いながら、今夜の様子を見るにそんなことはないと思う。彼女も自分にとってどういう相手が相応しいのかわかっていないだけなのだ。
夏帆のことを大事に思う気持ちは自分も柊一も変わらない。
柊一のような男になら夏帆を安心して任せられる。きっと二人が結婚すれば、幸せになれるだろう。
(俺は二人の兄になる――それでいいじゃないか)
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