嫌われ者の美人Ωが不妊発覚で婚約破棄され運命の番に嫁ぐまで

grotta

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4.悪者は誰?

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「神崎ちょっと」

俺は急に課長に呼び出された。
他の社員には聞かせられない話のようで、空いてる会議室へ連れて行かれる。
何かやらかしたんだろうか。
俺はちょっと緊張しながら尋ねた。

「なんでしょうか」

「おい、お前でもこんなミスすることがあるんだな。◯◯商事への発注、桁が2つも間違っていたぞ」

「え!?」

俺は課長に示された書類を奪うようにして確認した。
本当に桁違いに少ない数で発注されていた。

「幸い先方でおかしいと気づいてくれて、事務の女の子が確認の電話を入れてくれたんだ。これ間違ってたら全体の納期すらやばかったぞ。お前も桐谷のことでいろいろあって滅入ってると思うけど仕事はちゃんとやってくれないと困るからな」

年配の課長にバシっと肩を叩かれた。
このままこの発注が通ってたらと思うと背筋がぞっとする。
それと同時に、絶対ありえないこともわかっていた。なぜなら提出前に何度も確認したからだ。
上條の仕業か……。

俺は多少の嫌がらせなら黙っているつもりだった。しかしもう我慢ならない。
そのままの足で事務担当の集まっているエリアに向かう。

「上條さんちょっといい?」

「……」

彼女は返事もせずこちらを睨んできた。
どういうつもりだ?

「聞こえてるのか?ちょっと話したいことがあるんだ」

「ええ~、主任怖い顔してどうしたんですかぁ?話ならここでお聞きしますね」

俺は辺りを見回した。他にも社員がたくさんいる。
さすがに皆の前で叱責するほど鬼じゃない。

「いいから、ちょっと」

すると彼女は急にトーンを上げて大声で言った。

「え?!2人きりでって怖いんですけどぉ!ここで言えない話ってなんですかぁ!?」

皆が振り返った。
ばかな…。自分で自分の首を締める気か。それならもう知らないぞ。

「じゃあいい、ここで言うよ。この間の◯◯商事への発注数わざと桁を変えて提出したな?」

注目していた周囲の職員たちがざわめく。
上條は面食らった顔をしていた。

「あ…え…なんですかそれ…?」

とぼける気か。

「ここのところずっと俺の仕事の邪魔をして、わざとミスばかりしているだろう。今までは黙っていたが、相手先に迷惑がかかるような悪戯は黙認できない。いい加減子供じみた嫌がらせはやめるように」

上條は怒りと羞恥で口をパクパクさせていた。
ふん、自業自得だ。
俺はそれだけ言えば満足なのでデスクに戻ろうとして背を向けた。

すると背後からすすり泣く声が聞こえた。

「ぐすっ…酷い…私そんなことしてないのに勝手に決めつけて…グスっ」

俺はうんざりした気持ちで振り向いた。

「わかりやすい泣き真似はよせ」

「なんでそんなこと言うんですかぁ?私、そんなことしてませんっぐすっ。証拠でもあるんですか?」

証拠だ?そんな物はない。
俺が既に全て正しいデータに直してしまっているから。

「証拠なんて無いがこんなことをするのは君くらいだろう」

「証拠、無いんですね?」

上條は顔を両手で覆っていたが、その隙間から目を覗かせてニッと笑った。
ほんの一瞬だったが俺はそれを確かに見た。

そして彼女は叫んだ。

「酷い!!証拠もないのにミスを部下のせいにするなんて!」

また大声をあげた上條に周りも困惑している。
しかしついに上條の味方をする者が現れた。

「そうですよ神崎主任。どういう事情かわかりませんが、決めつけはよくないです」

「なんだと?」

「そうだそうだ!上條さんいつも一生懸命仕事してますよ。主任、あの件でピリピリしてるからって部下に八つ当たりはやめてくださいよ」

はぁ?

「ミスくらい大目に見てやって下さいよ!」

周りを見渡したら、皆一様に俺を睨みつけていた。
なんだこれ…?
俺が悪者になってるのか……?

「美人だからって調子にのるなよ。不妊のくせに」

どこからかわからないがボソッと呟く声が耳に入った。
今不妊がどうのって関係ないだろう。
ここの人間たちは皆低レベルすぎて話にならない。
俺は拳を握りしめて深く息を吐いた。

「わかった。とにかく今後は気をつけてくれ」

背中を向けて今度こそ自分の席に向かう。
その背中にも責めるような視線を感じ、更には直接文句を言う声も聞こえた。

「ヒステリー?怖っ」

「不妊様ってやつ?」

「上條さん大丈夫?」

一旦自分の席には着いたが、このまま仕事を再開できる気分ではなかったので俺はまた席を立った。

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