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9.生還と再会
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目が覚めた。
俺は死んだはずなのでここは天国だろうか。
それにしては全身が痛かった。
「生きてる…」
声は出せた。
口の他は指先以外全身動かなかったが、これだけ痛いならきっと生きてるんだろう。
左の瞼が腫れていて目が開かないので片目しか見えない。
固定されていて首を回すことも出来ないのであまり良く周りが見えないが、淡いブルーの壁に白い天井の部屋だ。
おそらく病院だろう。
死にたかった。
なんで生きてるんだ?誰だよ見つけたの。
こんなに痛いのに生きていたくない。
あんな目にあったのにもう呼吸もしたくなかった。
涙が滲んできた。
それを自分で拭うことすらできないのになんで生きてるんだ。
しばらくして室内に人が入ってきた気配がした。
しかし音のする方を向くことができず誰なのかわからない。
「目が覚めましたね、よかった…神崎先輩」
先輩というからには後輩の1人だろう。
高校か、大学か、会社の人間か…?
聞き覚えのない声なのであまり親しい人間ではない。
「誰…?」
「すみません。見えませんよね」
背が高く肩幅の広い男が俺を覗き込んできた。
ミルクティー色の髪に優しそうな目をした美男子だ。
いかにもαというオーラを感じる。
知らない…誰だ…?
見知らぬ人物に先輩呼ばわりされて薄気味悪くなる。
「どなたですか?」
男は俺の言葉にちょっと悲しげな顔をした。
でもまたすぐに笑顔を見せた。
ころころ表情の変わる男だな。
「文月です。文月礼央。大学のサークルで一緒でした」
記憶を辿る。俺は大学時代映画研究会に所属していた。
サークルと言ってもたまに映画を見るくらいでこれといった活動もしていないゆるいサークルだった。
そして、その中にそんな名前の奴がいたような気もする。
だけどこんな美男子のαなら覚えていそうなものだが記憶があやふやだ。
「当時は眼鏡で髪の毛ももっとモサモサしてたのでわからないかもしれないです。学部も違いましたし」
「あれ…」
そう言われれば、眼鏡を掛けた長身の後輩がいたような気がしてきた。
「あ、思い出した。医学部のガリ勉くんだ!」
「そうです」
文月は俺の言い方に苦笑した。
「ごめん…失礼な言い方だった」
「良いんです、覚えていてくれて嬉しいです」
しかも結構懐かれてたような?そんな相手を忘れているなんて我ながら薄情だな。
でも当時文月のことをαだと思ったことはなかったけどな。
大体なんでこいつがここに現れたんだろう。
「それより、ここはどこ?なんで俺はここにいるのかな」
「ここは俺の伯父の病院です。先輩のことは大迫さんが見つけました」
「え!大迫が?イテテ…」
思わず身体に力が入って、あちこちに激痛が走った。
「あ、肩脱臼してるから力入れないでくださいね。肋骨もヒビが入っていますし」
「そうか…」
どうりで肩も肋も痛いはずだ。
それよりなんで文月が大迫を知ってるんだ?
何がどうなってる…?
「色々説明したいんですけど、先輩は今休むのが先なのでちょっとお薬で眠っていただきますね」
「え、薬………?あ…やだ。薬はいや…」
ここに運ばれる前の記憶が頭をよぎって薬という言葉に過剰に反応してしまう。
とにかく薬はもう嫌だ。
「大丈夫です。変な薬ではないですよ。鎮静剤です」
「やだ…やめて!文月、いや、いやだ!」
身体は動かせないので、目で訴えるしかなかった。
しかしそれも無駄に終わった。
「すみません、ごめんね先輩…」
文月の背後に控えていた医師らしき人物に注射を打たれて俺はすぐに意識を手放した。
俺は死んだはずなのでここは天国だろうか。
それにしては全身が痛かった。
「生きてる…」
声は出せた。
口の他は指先以外全身動かなかったが、これだけ痛いならきっと生きてるんだろう。
左の瞼が腫れていて目が開かないので片目しか見えない。
固定されていて首を回すことも出来ないのであまり良く周りが見えないが、淡いブルーの壁に白い天井の部屋だ。
おそらく病院だろう。
死にたかった。
なんで生きてるんだ?誰だよ見つけたの。
こんなに痛いのに生きていたくない。
あんな目にあったのにもう呼吸もしたくなかった。
涙が滲んできた。
それを自分で拭うことすらできないのになんで生きてるんだ。
しばらくして室内に人が入ってきた気配がした。
しかし音のする方を向くことができず誰なのかわからない。
「目が覚めましたね、よかった…神崎先輩」
先輩というからには後輩の1人だろう。
高校か、大学か、会社の人間か…?
聞き覚えのない声なのであまり親しい人間ではない。
「誰…?」
「すみません。見えませんよね」
背が高く肩幅の広い男が俺を覗き込んできた。
ミルクティー色の髪に優しそうな目をした美男子だ。
いかにもαというオーラを感じる。
知らない…誰だ…?
見知らぬ人物に先輩呼ばわりされて薄気味悪くなる。
「どなたですか?」
男は俺の言葉にちょっと悲しげな顔をした。
でもまたすぐに笑顔を見せた。
ころころ表情の変わる男だな。
「文月です。文月礼央。大学のサークルで一緒でした」
記憶を辿る。俺は大学時代映画研究会に所属していた。
サークルと言ってもたまに映画を見るくらいでこれといった活動もしていないゆるいサークルだった。
そして、その中にそんな名前の奴がいたような気もする。
だけどこんな美男子のαなら覚えていそうなものだが記憶があやふやだ。
「当時は眼鏡で髪の毛ももっとモサモサしてたのでわからないかもしれないです。学部も違いましたし」
「あれ…」
そう言われれば、眼鏡を掛けた長身の後輩がいたような気がしてきた。
「あ、思い出した。医学部のガリ勉くんだ!」
「そうです」
文月は俺の言い方に苦笑した。
「ごめん…失礼な言い方だった」
「良いんです、覚えていてくれて嬉しいです」
しかも結構懐かれてたような?そんな相手を忘れているなんて我ながら薄情だな。
でも当時文月のことをαだと思ったことはなかったけどな。
大体なんでこいつがここに現れたんだろう。
「それより、ここはどこ?なんで俺はここにいるのかな」
「ここは俺の伯父の病院です。先輩のことは大迫さんが見つけました」
「え!大迫が?イテテ…」
思わず身体に力が入って、あちこちに激痛が走った。
「あ、肩脱臼してるから力入れないでくださいね。肋骨もヒビが入っていますし」
「そうか…」
どうりで肩も肋も痛いはずだ。
それよりなんで文月が大迫を知ってるんだ?
何がどうなってる…?
「色々説明したいんですけど、先輩は今休むのが先なのでちょっとお薬で眠っていただきますね」
「え、薬………?あ…やだ。薬はいや…」
ここに運ばれる前の記憶が頭をよぎって薬という言葉に過剰に反応してしまう。
とにかく薬はもう嫌だ。
「大丈夫です。変な薬ではないですよ。鎮静剤です」
「やだ…やめて!文月、いや、いやだ!」
身体は動かせないので、目で訴えるしかなかった。
しかしそれも無駄に終わった。
「すみません、ごめんね先輩…」
文月の背後に控えていた医師らしき人物に注射を打たれて俺はすぐに意識を手放した。
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