Ωの不幸は蜜の味

grotta

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Ωの不幸は蜜の味(1)

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俺――川西望かわにしのぞむは昔から不幸な恋ばかりしてきた。

俺はオメガだけど、アルファとつがいになることが出来ない。うなじ全体に大きな火傷を負って、皮膚のフェロモン受容器官が壊死してるから噛まれてもつがいになれないのだ。


初めてセックスしたのは大学生の頃――相手はアルファの幼馴染だった。
俺には仲がいいベータ女子とアルファ男子がいた。小学生からの付き合いで、付かず離れずなんだかんだ大学まで三人でよく遊んでいた。

ベータ女子が同じアルファ男子にずっと恋してたのは神に誓って知らなかった。
ある日ベータ女子が都合が悪くて来られなかった日、アルファ男子の部屋で酒を飲んだ。
そこで俺がヒートを起こしてしまい、酔った勢いで一夜を共にした。
ただの友達だと思っていたのに、ずっと好きだったと言われ抱かれているうちに俺もそうだったかもと錯覚しそうになった。
少なくとも事後に二人の間で言葉にできない繋がりのようなものが生まれたのは間違いなかった。

付き合おうと言われたわけではなかったが、そういう流れになるだろうと俺は思い込んでいた。

しかしそれは違った。

後日ベータ女子に呼び出され、彼女とアルファ男子が実は2年前から付き合っていたと聞かされ「彼氏を寝取ったクズオメガ」となじられた。

そもそも付き合ってるとか初耳だったし、アルファ男子に騙されたみたいでショックだった。
――ただの性欲処理かよ。面倒なことに巻き込みやがって……。

しかし俺と寝たせいでアルファ男子の気が変わり、彼女と別れることになったという。

何を今更。そんなの知るかよ。

一応ベータ女子には改めて謝った。だけど彼女の怒りはおさまらなかった。
――でも幼馴染なのに俺に内緒で付き合ってる方が悪いだろ?

話は平行線で、もう何を言っても無駄だと思った俺は口汚い罵り声を浴びながらその場を去ろうとした。すると、背中を向けた俺に彼女が何かをぶつけた。
それは首の後ろを中心に俺の皮膚を焼いた。 
酸性の液体だった。

幸い命に別状はなかったが、オメガとしてのうなじの機能は永久に失われた。
 
その後そのアルファ男子とはしばらく付き合っていた。だけど、俺のうなじを見るたびに罪悪感で萎えてしまって彼はセックスできなくなっていた。
お互い気まずくなり、自然と別れることになった。今は元気でやってるといいけど。
 




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