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7.目が覚めたら美味い朝食で黙らされる俺

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「んー……」

翌朝俺は目を覚ました。見慣れぬ寝具に、昨夜のことを朧げながら思い出す。

「うっ。ケツ……なんか変な感じ。腰……痛い……」  

あー……ホテルかなここ?

なんとか体を起こす。隣には誰も居ない。なんなん?俺、ヤるだけヤられて置き去りにされたーーー?

しかしその時、かすかに物音がするのが聞こえた。
ん?他の部屋から……?
ていうかよく見たらホテルみたいなお洒落な部屋だけど、置いてあるものが……もしかしてここ、個人の部屋か。
俺は部屋を出た。フローリングの廊下。やはり個人宅らしい。
課長のマンションかな?

音のする方へ歩いて行き、ドアを開けた。するとふわっと香ばしい匂いがした。
物音はキッチンで料理している音だ。
アイランドキッチンを前に黒いエプロン姿でフライパンを揺すっている色男は当然課長だった。

「おはよう、よく眠れたかな?」

「……おはようございます……」

「朝食、クロックムッシュなんだけど食べれる?奏太って好き嫌いあった?」

さり気なく下の名前呼びされてるし……

「いえ、なんでも食います」

つーかなんとかムッシュってなんだ……?

「よかった。じゃあそこ座ってて」

ダイニングテーブルを指されたので言う通りにする。

「失礼します。……いてて」

椅子に座ったら腰とケツが痛い。

「あ、大丈夫?昨日あんまり良さそうだから無理させちゃって悪いな」

「…………っす」

あああああああ死にたいいいいいいいやっぱ夢じゃないですよねえええええ

俺は両手で顔を覆った。

「本当に大丈夫か?」

「全然余裕っす」

課長は焼き終えたなんとかムッシュを皿に盛り付けて持ってきた。
俺の生活には無縁なベビーリーフ。嗅いだことのない匂いのドレッシング。
綺麗にカットされたフルーツとヨーグルト。
そしてなんとかムッシュ。パンにハムが挟んであって上に乗ったチーズがカリカリに焼けてる。とりあえずめちゃくちゃいい匂いする。

「課長、料理得意なんですね」

「え?こんなの料理のうちに入らないだろ」

ほんっと嫌なヤツだなぁこのクソイケメンはよぉーー。

「それと、会社以外では暁斗って呼んでくれよ。彼氏なんだから」

はいスマイルいただきました、俺が女なら即落ちなやつ!

「あの、その件ですが……」

「ほら、冷めちゃうから食べなよ」

「あ、はい。いただきます」

なんか今わざと話そらされた?気のせいだよな。

「うっっっま!!!なんすかこれ。俺初めて食べました」

「口に合ったみたいで安心したよ。奏太いつもは朝何食べてるんだ?」

課長はフォークとナイフを上品に使いながら食べている。いい部屋にデカいキッチンにいい男。
なんでこれで俺なんかを口説いてくんだろうな。

「え?ああ、コンビニのパンとかすね」

「そうか。ごはん派だって言われて食べてもらえなかったらどうしようかと思った」

「いえ、こんな豪華な朝飯食うことないんで感動してます」

「ふふ、褒め上手だね。可愛い」

はあ?!おい、俺アホかよ。点数稼いじゃったよ。

「あ、あの。昨日のことなんですけど」

「ん?」

「やっぱり俺、課長の……」

「暁斗」

「暁斗さんの彼氏っていうのはちょっと無理っつーか、ふさわしくないんで辞退させてください!」

「ふーん。……何がだめだった?」

課長はコーヒーを飲みながらゆったり構えている。

「え、何がって……」

彼氏としては多分だめなとこゼロだろうね?

「いえ、暁斗さんがだめとかじゃなくて、いい男すぎて俺が釣り合ってないってことです」

よし、これだ。悪いのは俺なんです作戦!

「へぇ。謙虚なんだ?奏太、君は自分が思ってるより魅力的だよ。それに俺たち身体の相性も良かっただろ?」

「やーーーあーーーーそれは、あのーーー」

昨日のことはもう思い出したくないからやめてくれ!

「俺が彼氏って言ったよね?奏太はそんな簡単に嘘つくの?俺をもてあそぶなんて酷いね?」

「へっ?も、もてあそぶなんてそんな……」

「傷つくなぁ。そうやっていろんな男つまみ食いしてポイ捨てしてるんだ」

課長は恨みがましい目で俺を見た。

「ち、違いますよ!俺は真面目な男です!」

「じゃあ、言ったことは守るべきなんじゃない?」

「それもそうですね……?」

え?いや、え??

「大丈夫、許してあげる。俺は恋人には甘いから」

はぁ~~~??許す?

「さて、今日暇なら買い物でも行こう」

結局俺は流されるままになぜか休日に課長の買い物に付き合う羽目になったのだった。


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