追放されたΩの公子は大公に娶られ溺愛される

grotta

文字の大きさ
3 / 59
1章.狂った一族

1.オメガと判定された公子

しおりを挟む
 僕はリュカシオン公国の公子ルネ・バラデュール。父ジェルマン二世の三男だ。
 この日僕と異母弟のヘクターは十八歳の誕生日を目前に控え、ある検査の結果を知らされることになっていた。本来であれば僕と弟が医師から直接聞く筈なのだけど、何故か父と継母と二人の兄、それに宰相らまでがその場に同席していた。

 まず医師は弟と両親に向かって言った。
「ヘクター様の性別はアルファでございます。両殿下におかれましてはご子息の此度の判定結果、誠におめでとうございます」
 すると周りからは安堵の声と共に拍手が起こった。僕も拍手する。
 そして次に医師は僕に向き直って言った。それも、とても言いにくそうに。
「ルネ様の性別は……ええ、大変申し上げにくいのですが……その、誠に残念ながらオメガで御座いました」
 この発言に室内がどよめいた。僕も目を見開いて硬直してしまった。心臓が早鐘を打つ。
(え? 僕が……オメガ? 良くてアルファ、悪くてもベータだと思っていたのに。どうしよう……)

 この世界には男女の他にアルファ、ベータ、オメガの三種類の性別がある。これは第二の性と呼ばれている。
 アルファ性の者は知力体力共に優れ、リーダーシップを発揮する特徴がある。逆にオメガはそういった能力には劣り、生殖機能が発達していて男性でも妊娠可能だ。
 ここリュカシオン公国では特にアルファの権力が強く、要職に就いている者のほとんどがアルファ性だ。君主一族であるバラデュール家の者たち、特に男子にはアルファ性であることが当然のように強く求められている。
(ああ、この後何と言われるか……)
 僕がしばし呆然としていたら、公妃――つまり僕の継母が叫び声を上げて立ち上がった。
「オメガですって!?」
 その声に一同が注目する。
「このバラデュール家の男子にオメガ性だなんて不吉だわ。おぞましいわ!」
 僕は継母の言葉に黙って俯いてつま先を見た。こういう時は言い返さない方が良い。継母の金切声は続く。
「殿下、オメガ性の者には公位継承権はありませんわね?」
 父は困惑しつつ頷いた。
「ああ……そうなるな」
「これでわたくしの可愛い坊やの公位継承順位は三番目に繰り上げですわね。ああ、良かった。薄汚いオメガ女の子共はやっぱりオメガだったのねぇ! オホホ!」
 すると太った弟が顎の肉を揺らし唾を飛ばしながら言う。
「母上、たった二日誕生日が遅いだけで僕の継承順位の方が下なのがずっと納得いきませんでしたが、今日はとても気分が良いです!」
「そうよね、わかるわ可愛い私の坊や。それに引き換えルネ、お前ときたら。こんな状況でも表情一つ変えないなんてふてぶてしいこと! さぁ、あんなオメガの顔なんて見たくも無いわ。行きましょうヘクター」
「はい、母上!」  

 現在の公妃には連れ子が一人いて、それが今アルファ判定を受けたヘクター。ただし彼は連れ子と言っても父が当時愛人だった現公妃に産ませた子だから血の繋がりはある。彼の誕生日が僕の二日後だったから僕の公位継承順位が三位で、彼が四位だった。
 継母は僕が表情一つ変えないと怒っていたが、僕だって本当は内心すごく動揺している。だけど、表情に出にくいだけなのだ。

 彼女たちが部屋を出ていきそっとため息を付くと、長兄が僕の肩を叩いた。
「気落ちすることはないさ。オメガであってもお前は俺たちの弟であることに変わりはない」
「お兄様……ありがとうございます」
 僕は兄弟の中でも長男のアランが一番好きだった。優しくて頭が良く、剣術の得意な自慢の兄だ。端正な顔立ちで国民の人気も高く父の後を継いで立派な君主となるだろう。
 一方僕は勉強は好きだけど剣術はイマイチで、兄に相手をして貰って頑張っているけどなかなか上達しない。それでも兄は根気強く僕に指導してくれるのだ。
 僕を慰める兄を見て父も僕に声を掛けた。
「お前は母親によく似ているからこうなるかもしれないとは思っていた。残念ではあるが仕方あるまい。今後のことはまたゆっくり話し合うとしよう」
「はい、ありがとうございます……お父様」
(父をがっかりさせてしまったな。でも、父にまで怒鳴られなくてよかった)
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。

水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。 国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。 彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。 世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。 しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。 孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。 これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。 帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。 偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

処理中です...