追放されたΩの公子は大公に娶られ溺愛される

grotta

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2章.追放と新たな苦難

16.【閑話】使用人ロッテの独白

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 あたしはロッテ。ベサニル辺境伯のお屋敷の使用人をやってる十六歳。
 今度お隣のリュカシオン公国から公子様がやってくるらしいと耳にしたんだ。どうやらオメガだとわかってこの国に来るようだけど、お気の毒に。きっとこの国がオメガに優しいと思っていらっしゃるんだろうけど、そんなのは嘘っぱち。
 この国は大きいから、地域によっては差別が厳しいところもある。特にこのベサニル領は全然オメガに優しくなんてないんだ。オメガのあたしが言うんだから本当さ。

◇◇◇

 どんなお方かと思ったら、まぁまぁ、なんと綺麗なお人形さんのような公子様かしら! こんなキラキラしたお方は初めて見る。うちの旦那様もハンサムだけれど、このルネ様って方は生きて動いてるのが不思議なくらいだわ。
 あーあ、こんな方にあの部屋を使って頂くなんて信じられないよ。あそこは奥まってて日が当たらないしカビ臭くってしょうがないのに。

 シーツを替えるのは一週間に一度でいいなんて奥様に言われたけど、あたしはルネ様がお可哀想なんで、なるべく小まめに替えるようにして差し上げている。
 ルネ様はなんとかこの屋敷の者と打ち解けようとあれこれ話しかけて下さって、あたしなんかは嬉しかったけどベータの使用人達はオメガの公子様ってことで馬鹿にしてるのもいた。やれやれ、あんたたち、その顔鏡で見たことあるのかい?
 あたしは親切心でルネ様に「旦那様には気をつけろ」ってご忠告して差し上げたんだけれど、それが全く響いてなかったようで……。
 半年くらい経った頃だったかしら。いつも綺麗なベッドのシーツがぐちゃぐちゃになってる日があってどうしたのかと思ったら酷い匂いでさ。アルファのニオイがね……ぷんぷんしていて、あーやっぱりこうなったかとあたしは思ったのさ。
 結局その後しばらくしたらルネ様のお腹が大きくなって来てしまってね。

 これを知った奥様の怒りようといったらもう。一時期もっと綺麗なお部屋にルネ様は移っていたんだけれど、またカビ臭い部屋に逆戻りだ。まあ仕方がないよ。旦那様が露骨にルネ様を可愛がられるもんだからね。
 旦那様は女遊びが元々激しい方で、奥様は諦めてらっしゃるんだと思っていたんだけれどもねぇ。だって旦那様が他所で子どもをつくっちゃったのなんて初めてじゃないんだから。一体何人隠し子がいるのやら?
 だけどね、あたしは見たんだ。ルネ様が暖炉の前で本を読みながら寝ちゃってることがあってね。
 あたしは廊下側のドアからその様子が見えたんで、ブランケットを取りに走ったのさ。なんせ妊婦さんだ、お腹を冷やしちゃいけないからね。
 それで掛けてあげようと部屋に戻ったんだけど、あたしより先に書斎側のドアから出てきた旦那様がルネ様にブランケットを掛けてあげていたのさ。
 びっくりしたよ。あのお方にそんな優しいところがあったなんてね。見たこともないような愛しそうな目でルネ様をご覧になって微笑んでらっしゃった。
 いや、あたしは旦那様のことは苦手ですけどね。でもまあルネ様に甘いところはあたしは嫌いじゃないですよ。

 とにかくルネ様がもう少し良い暮らしができるといいんですけどね。この調子だと、奥様はそう簡単に許してはくれないでしょうね……。
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