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第二章 教会生活
21 罪と罰と嘘つきと
しおりを挟む「貴女の処分を、お母様は納得されていないようですね」
面談用の小部屋で総司祭様に切り出された私は、がっくりと肩を落とした。
呼び出されたのは、運動後の昼寝を終えたあとだった。
総司祭様は憂いのこもった目をこちらに向けた。
「一族からこの名を消せば、母親の精霊の加護の、その加護は消えるのではないのですか」
「それが、――頑なに拒否されてしまいました。貴女は一時の感情に動かされているだけで、すぐに実家に戻る選択を取るはずだ、と。その際に再び加護の加護を与えようとしても、一度契約を取りやめた後とあっては、その手続きには膨大な魔力がかかります。願いが叶えられるかどうかも分からない。不利益しかないと。
貴女は今、名を失った状態ですが、それでも恩恵を与えることができる――貴女のお母様の能力は、こちらの想像を越えていました」
そうですね。再契約なんて、契約不履行後に営業かけるようなもんですもんね。窓口役の小娘にすら激切れしていた前世の事例を思い出すと、更に立場の違う精霊はマウンテン! な可能性があるのね。はあ。
「私の意志は変わりません。
提示された罰を受け入れ、平民として生活いたします」
何回も何回も、私言いましたよね?
『家族とは縁を切ります。平民になります。さよならします』
そう言いましたよね。
なのになんで、また何度も何度も、『それでいいか、誓うか?』って言われなきゃいけないの?
その不満が顔に出ていたらしい。総司祭様は小さく溜息をつくと、慈悲深い深緑色の目で、私の目を覗き込む。
「その現状がどうあれ、貴女は罪を犯し、その罰を受けるために教会に来たのです」
正論でました。
そうです、私虐待の保護施設じゃなくて、罪を償うための収容施設にやってきたのでした。
ざーんねーん。
優しかった総司祭様は、更に顔を曇らせて私に続ける。
「ユーフェミアさん、貴女は青の眠りを使用したのですね」
「いえ……はい、隠し事はできないのでしたわね。
確かに服用いたしました」
もう分かっていることだから、言い逃れはできない。
しかもちゃっかり総司祭様ったら、嘘が分かるように精霊を開け放っております。なんかふわふわキラキラしてて、聖堂でみたのと同じなんだよね。試しに私が総司祭様の質問に否と答えた時、ピカピカ光ったし。嘘だよってお知らせしたんだよね、それで総司祭様の顔曇ったし。
青の眠りは、高確率で人を死に至らしめる。
希少で対抗策の術式を知る魔法使いも少ない。
「いくら自分の罪を自覚したとは言え、自殺は神のお許しにならない罪の一つです。
貴女は罪を重ねたのです。その自覚がお有りですか」
失望の色が浮かぶその目を認めて、私は顔をそむけたくなった。
向かい合うのは私と総司祭様の二人だけ。
だけれど、その向こうには数人の聖職者。男、女、女、男。
誰が耳をすましているんでしょ?
目だけを反らして、その瞬間にめまいが襲いかかる。
世界が揺れる、歪む、よじれる。
そしてその隙間を縫うように、あの時の、誰かの笑い声とハイド様の失望の眼差しが現れた。
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