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ドイツ第三帝国 ペーター 進軍開始
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翌未明。ペーターはエンジンが唸る二号戦車の車内にいた。常人にはこの自動車とは全く違う強い揺れと、弾けるようなエンジン音は不愉快以外の何者でも無いかもしれないがペーターにとっては全く別物であった。
命を預けるに足る相棒…。訓練期間を入れると乗り物として一番長い期間乗っている存在だ。一人でこの状態を満喫しているとハッチが開けられる音がする。
「誰かと思えば車長じゃ無いですか?こんな時間に二号のエンジン音がしてきてみれば…。緊張でもしてるんです?」
「なんだヘルマンか。俺でも緊張ぐらいするさ。初めての師団長としての行軍だ。」
「それにしては随分懐かしい癖が出ているもんだ。」
ペーターとヘルマンは訓練所から付き合いのある友であった。過酷な中での訓練を共に耐え抜いてきた戦友であった。そんな背景がある故にヘルマンは、ペーターが不安や、緊張を紛らわせるためにエンジンを掛けた戦車の中に籠もるという癖を知っていた。
訓練を終え軍に配属された後は規則もあり、戦車を自由にできなくなった。それからぱったり、その癖はなりを潜めていたのだ。
「自由にしても怒る人がいないからな。なっていったって師団長だ。それにこの基地にはいまロンメル将軍もいない。実質俺がトップだろう?」
「それもそうだ。」
ヘルマンは小言は言わない。やるときはやる。しかしそう有ることが絶対で無いときは実に自由な男であった。
ヘルマンも二号の車内に入り、自分の定位置、操縦桿を握った。
「少し走らせてみても良いか?」
ヘルマンの提案にペーターは良い笑顔で肯定した。
一台の戦車が平原を走る。前照灯だけが煌々と前方を照らす。そのまま暫く走る。
「よし、前照灯を切れ。エンジンの回転数を落としてゆっくり進め。」
「了解」
二人は戦車を走らせ、今日自分たちが攻撃する敵陣地の偵察に来ていた。未だに日が出ていない、偵察するには良い時間帯であった。
「町の中に陣地をもうけているな…。これは戦車を使いにくいな。どうするペーター。」
「周りは農地ばかりだが、戦車が走り抜けるには十分な堅さがある。それにナジカニジャは今見ている町の後ろにもうひときは大きな町がある。そっちをも見てから判断したい。」
「分かった。」
地面に伏せて偵察していた二人は再度二号に乗り込み走らせた。
「後ろにはしっかり野砲が配置されていやがるな…。これは…。」
「ヘルマンの思う通りだと思う。下手に町中に入ってしまっては後方からの砲撃で大きな被害をだすことは間違いない。」
「町ごと破壊して足止めする気ってことか。容赦ないな…。」
「よし、いったん基地に戻るぞ。その後空軍に偵察機の出動をダメ元で要請してみよう。」
「それが良い。どうしても町の外側は見えても、中は見えないからな。夜明けまでには基地に戻るぞ!」
基地に着くと、管理官の一人がロンメル将軍からの贈り物だと言って一つの紙袋を持ってきた。早速開けてみるとそこにはこれからの攻略目標のナジカニジャ・ケストヘイ・ペーチュ・シオーフォクのにおける敵軍の大凡の野砲の配置やトーチカの位置が記されていた。
一つの手間が省けたペーターは早速部隊長に招集を掛け、ブリーフィングを始めることにした。
そして、8時頃。ペーター達は基地を発ち、ナジカニジャに向けて進軍を開始した。
命を預けるに足る相棒…。訓練期間を入れると乗り物として一番長い期間乗っている存在だ。一人でこの状態を満喫しているとハッチが開けられる音がする。
「誰かと思えば車長じゃ無いですか?こんな時間に二号のエンジン音がしてきてみれば…。緊張でもしてるんです?」
「なんだヘルマンか。俺でも緊張ぐらいするさ。初めての師団長としての行軍だ。」
「それにしては随分懐かしい癖が出ているもんだ。」
ペーターとヘルマンは訓練所から付き合いのある友であった。過酷な中での訓練を共に耐え抜いてきた戦友であった。そんな背景がある故にヘルマンは、ペーターが不安や、緊張を紛らわせるためにエンジンを掛けた戦車の中に籠もるという癖を知っていた。
訓練を終え軍に配属された後は規則もあり、戦車を自由にできなくなった。それからぱったり、その癖はなりを潜めていたのだ。
「自由にしても怒る人がいないからな。なっていったって師団長だ。それにこの基地にはいまロンメル将軍もいない。実質俺がトップだろう?」
「それもそうだ。」
ヘルマンは小言は言わない。やるときはやる。しかしそう有ることが絶対で無いときは実に自由な男であった。
ヘルマンも二号の車内に入り、自分の定位置、操縦桿を握った。
「少し走らせてみても良いか?」
ヘルマンの提案にペーターは良い笑顔で肯定した。
一台の戦車が平原を走る。前照灯だけが煌々と前方を照らす。そのまま暫く走る。
「よし、前照灯を切れ。エンジンの回転数を落としてゆっくり進め。」
「了解」
二人は戦車を走らせ、今日自分たちが攻撃する敵陣地の偵察に来ていた。未だに日が出ていない、偵察するには良い時間帯であった。
「町の中に陣地をもうけているな…。これは戦車を使いにくいな。どうするペーター。」
「周りは農地ばかりだが、戦車が走り抜けるには十分な堅さがある。それにナジカニジャは今見ている町の後ろにもうひときは大きな町がある。そっちをも見てから判断したい。」
「分かった。」
地面に伏せて偵察していた二人は再度二号に乗り込み走らせた。
「後ろにはしっかり野砲が配置されていやがるな…。これは…。」
「ヘルマンの思う通りだと思う。下手に町中に入ってしまっては後方からの砲撃で大きな被害をだすことは間違いない。」
「町ごと破壊して足止めする気ってことか。容赦ないな…。」
「よし、いったん基地に戻るぞ。その後空軍に偵察機の出動をダメ元で要請してみよう。」
「それが良い。どうしても町の外側は見えても、中は見えないからな。夜明けまでには基地に戻るぞ!」
基地に着くと、管理官の一人がロンメル将軍からの贈り物だと言って一つの紙袋を持ってきた。早速開けてみるとそこにはこれからの攻略目標のナジカニジャ・ケストヘイ・ペーチュ・シオーフォクのにおける敵軍の大凡の野砲の配置やトーチカの位置が記されていた。
一つの手間が省けたペーターは早速部隊長に招集を掛け、ブリーフィングを始めることにした。
そして、8時頃。ペーター達は基地を発ち、ナジカニジャに向けて進軍を開始した。
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