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腹減り雀

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本編

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「桜華さん。柵が届きましたよ」
「分かりました」

 壊れてしまった分と補修が必要だった分で少し量がありましたが、こちらもあっという間に作業終了です。知らないうちに随分と魔力が増えたようですね。

「これで終了ですね。あれ、カイゼルさん?」

 作業を終えてヨハンさんにお願いしようとしていたら、カイゼルさんが女の子を連れてやってきました。村の子ではなさそうですね。

「誘拐ですか?」
「桜華さん、迷子とかそうは思わないのですか」
「ディンさん。そうは言いますけど、この村の中で迷子は考えづらいです。何せ、良い人が多いですから、見かけた途端に構い倒すと思います」
「それは……そうですね」
「おい。何を納得してる。ちゃんと否定してくれ」

 苦笑しながら怒るカイゼルさんに慌てて謝るでディンさん。ヨハンさんはカイゼルさんに見えない位置で、お腹を抱えて笑っています。なので、カイゼルさんに指で教えておきます。

 後ろを振り返ったカイゼルさんが、ヨハンさんの頭を抱えて拳を押し当て始めました。

「おまえは何を笑ってる。給料減らすぞ」
「いたたた。隊長勘弁してください」
「カイゼルさん。そのままでいいですけど、そちらの人は」
「ああ。町からきた食料品の輸送隊にくっついてきた人の一人で、桜華さんを探していたから連れてきた」
「私ですか?」

 女の子の顔を確認すると、どこかで見たことがあるような気がします。どこでしたっけ。

「……あ。もしかしてマコちゃん?」
「はい。マコです」
「やはり、知り合いか」
「切りたいのに纏わりついてくる、腐りきった縁のある友人の妹ですね」
「それ、友人って言わないのでは」

 どこか脱力しているディンさんに、笑顔を向けます。

「頭の中にお花畑ができている猪馬鹿は、空気を読みませんから。マコちゃん。この人が私の護衛のディンさん。そっちでカイゼル隊長に抱えられているのが護衛風のヨハンさん。こっちにいる獣人のお姉さんがギルドからきた監視役のルーナさんです」
「ちょっと待って。護衛風って何。俺は護衛だよ」
「さぼり癖のある護衛ですね」
「ほう。桜華さん。ちょっと失礼する」
「はい。どうぞ」

 カイゼルさんがヨハンさんを笑顔で引き摺って行きました。

「さて。マコちゃん、中に入って」

 遠くから聞こえてくる誰かの悲鳴を聞こえないことにして、リビングに移動してお茶を淹れて仕切り直しをします。

「マコちゃん。一人で来たの?」
「はい。お兄ちゃんとお姉ちゃんは、迷宮が呼んでいるって言いながらそっちへ」

 片時もじっとしていられない二人だから、納得は行きます。マコちゃんが動くにあたって懸念でもあった歩行にも支障が無いようなので、気にしないでおきましょう。

「問題は住むところですね。部屋がないので、どうしましょうか」
「桜華さん、屋根裏があるのでは」
「屋根裏ですか?」

 悩んでいると、ルーナさんが首を傾げながら質問してきました。思わず視線を上にあげてしまいます。

「この家って屋根裏があるのでしょうか」
「この形状の家ならある筈ですよ」

 ディンさんが教えてくれたので、皆で登り口を探してみます。結果、リビングの端に当たる場所の天井に、格納式の階段が隠れていました。

「ありましたね」
 隠し階段を下ろした状態で動こうとしない桜華を、ディンさんが訝し気に見つめてきます。

「上がらないのですか?」
「ディンさん。この家って、最初は埃の絨毯が敷かれていました」
「……」

 全員で無言のまま階段の先を見つめます。

「睨んでいてもしょうがないですね。掃除しましょう。あ、マコちゃんはディンさんと一緒にグレンさんを呼んできてもらってもいい?」
「グレンさんですか?」
「うん。この村の大工の親方で、今なら村の周りにある柵の処にいると思うの」
「あ、私が案内します」

 ルーナさんが居場所を知っているそうなのでマコちゃんをお願いして、紙にとあるものを書いてから掃除の準備を始めます。

 窓がない屋根裏は暗いので角灯を浮かせて照らしてみると、予想以上に酷い埃の堆積量です。風の精霊に頼んで埃を一か所に纏めてもらって捨てると、後は手で水拭き。水の精霊が主張するように飛んでいるけれど、魔力が残り少ないので謝ることしかできません。

 ある程度進めていると、グレンさんが屋根裏に上がってきました。

「おう。どうした」
「こんにちは。態々すみません」
「丁度手が空いてるから、気にすんな」

 今日来た移住者の住む家を作るのは少し先になるらしく、村の塀を作るのも材料がない。仮作りの柵はもう終わったので、暇すぎて道具の手入ればかりしていたそうです。

「窓が欲しいのと、ここの階段を格納式ではなく作り付けにしてほしくて」
「下の空きが問題だな。使いづらくなると思うぞ」
「こういう階段はどうでしょう」

 先程書いたらせん階段の絵を見せてみると、食い入るように見つめて大きく頷きます。

「問題ない。どこだ」
「こっちの隅に」

 玄関から入ってすぐ右側の隅を指さすと、グレンさんの姿が消えました。慌てて下を覗くと、ディンさんがものすごい勢いで出ていったと教えてくれました。

 大変なことになった気がしますが、気にせず掃除の再開。今度はマコちゃんも手伝ってくれたので、すぐに終わらせることができました。

 屋根裏から降りると、グレンさんが職人と材木を引き連れて戻ってきました。これから作業するというので、作業部屋に移していた木材を加工してベッドと箪笥づくり。後は組み立てるだけという処まで進めると、リビングに運んでおいてスコーン作り。

「マコちゃん、ごめんね。慌ただしくて」
「ううん。楽しいから大丈夫」

 一緒にスコーンを作りながら謝ると、満面の笑みを浮かべてくれました。つられて笑っていると、マコちゃんが急に真剣な表情に。

「あの、お願いがあるんですけど」
「どうしたの?」

 真剣な表情から一転して、不安そうな、泣き出しそうな表情へ。

「お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」
「いいですよ」

 真面目で控えめなだけど優しい性格のマコちゃんなら、妹として大歓迎です。今も、安心して浮かべる笑顔が可愛いです。

「あ、ルーナさん。質問ですが、良いですか」
「にゃ、何でしょうか」
「? 大工さんって、あれが普通でしょうか」

 気になる言葉を流しつつ部屋の隅で作業している大工の皆さんを見ながら質問すると、ルーナさんは首が取れるのではと心配になる勢いで首を横に振ります。

「グレンさん一人で十人分の速さがあると言われています。他の方も二人分以上です」

 この村って、すごい人が多いですね。既に螺旋階段の半分が出来上がっています。
 暫く作業を進めていると、親方がやってきました。

「おう。終わったぞ。確認してくれ」
「分かりました。これ、皆さんで食べていてください」

 焼き上がったスコーンをお皿にのせて差し出して、確認に向かいます。
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